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定理 8 (div-curl 補題)

を有界開集合、

を有界関数列とし、

,

とする。
このとき、
が、

のあるコンパクト集合に含まれるならば、
となる部分列

が存在する。
詳細は [13] 参照のこと。なお、
は
任意の
に対して
となる
全体からなる Fréchet 空間。
定義 9

級関数

が
 |
(8) |
を満たすとき、

を方程式

の
エントロピー対と呼び、

を
エントロピー、

を
エントロピー流速密度という。
もし、
が
の滑らかな解であるときは
となるので、エントロピー対は新たな保存量を与えるものであることがわかる。
注 10
なお、単独でなく連立の保存則方程式 (1) の場合は
エントロピー対
は線形の微分方程式系
 |
(9) |
で定義され、これは方程式が
本、未知関数 2 個の過剰な方程式系
であるのでエントロピー対の存在は一般には自明ではない。
粘性近似解
に対しては
となる。ここから
のコンパクト性を示す。
命題 11

の任意の有界開集合

に対して

は

で相対コンパクト。
この命題の証明には次の 2 つの埋め込み定理を使う。
定理 12

が有界開集合,
とするとき
ならば

はソボレフ空間

に埋め込まれ、そこで
相対コンパクト (ただし

は任意の

)。
定理 13 (Murat の補題)

の有界な開集合

および

なる任意の

に対し
詳細は [13,21] 参照のこと。
(命題 11 の証明)
,
とする。
は一様有界なので
も有界で、
命題 1 より
なので、任意の
に対して
となる。よって
は
で有界、
と見ることができ、定理 12 により
である
に対し
は
の
あるコンパクト集合に含まれる。
また
は、Schwarz の不等式により任意の
に対し
となり、
は一様有界、
は有界で
より
なので
であり、よって命題 1 より
となるので
も
で相対コンパクトとなる。
よって
は
で
相対コンパクトであることがわかる。
一方、
,
は一様有界なので、
,
に対して
となるので、
は
で有界であることになる。
よって Murat の補題 (定理 13)により
は
で
相対コンパクトであることになる。
今、2 つのエントロピー対
,
を考える。
これらは連続だから、Young 測度の定理 5 により
のある部分列
に対して
となる。
一方、命題 11 により
はいずれもある
のコンパクト集合に含まれるので、
div-curl 補題により
のある部分列
に対して
となる。以上により
 |
(10) |
が得られる。この式 (10) は
とも書かれ、Tartar 方程式 と呼ばれる。
方程式
が線形である場合 (
)
この Tartar 方程式は自明なものとなるが、
非線形の場合には必ずしもそうではなく、
この方程式から
であることを導くことができる。
これを次節で述べる。
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Shigeharu TAKENO
2001年 12月 17日