6 通常の方法

まずは、定理 2 の通常の証明を簡単に紹介する。

方程式 (2) に、原点で段差を持つ階段関数の初期値

  $\displaystyle
U_0(x) = \left\{\begin{array}{ll}
U_L & (\mbox{$x<0$\ のとき})\\
U_R & (\mbox{$x>0$\ のとき})
\end{array}\right.$ (24)
を与えた問題を Riemann 問題 と呼ぶ。これは、

\begin{displaymath}
U_{sol} (t,x) = V(x/t)
\end{displaymath}

の自己相似形の、区分的に滑らかな解を持ち、 $U_L,U_R\in\Sigma(w_0,z_0)$ に対し、 を満たすことが知られている。この最後のものから、 $U_{sol}(t,x)\in\Sigma(w_0,z_0)$ であることもわかる。

さらに、方程式 (2) は発散形で、 不連続線上では Rankine-Hugoniot 条件を満たすので、CFL 条件

\begin{displaymath}
\frac{\Delta x}{\Delta t} = \mu > \Lambda(w_0,z_0)
\end{displaymath}

を満たす $\Delta x$, $\Delta t$ に対し、

\begin{eqnarray*}0
&=&
\int_0^{\Delta t}\int_{-\Delta x}^{\Delta x}
\{(U_{...
...ol}(\Delta t,x)dx
-(U_L+U_R)\Delta x + \{F(U_R)-F(U_L)\}\Delta t\end{eqnarray*}

が成り立つ。この最後の式から、

\begin{displaymath}
\frac{1}{2\Delta x}\int_{-\Delta x}^{\Delta x} U_{sol}(\Delt...
...ac{1}{2}(U_L+U_R) -\frac{\Delta t}{2\Delta x}\{F(U_R)-F(U_L)\}
\end{displaymath}

すなわち、
  $\displaystyle
\frac{1}{2\Delta x}\int_{-\Delta x}^{\Delta x} U_{sol}(\Delta t,x)dx
=
LF(U_L,U_R, \Delta x/\Delta t)$ (25)
がわかる。つまり $U_{sol}$$t=\Delta t$ 上の $[-\Delta x,\Delta x]$ での積分平均が $LF(U_L,U_R)$ となる。


命題 4

$\psi(x)$$[a,b]$ 上の、区間 $I$ に値を取る実数値関数で、 $f(y)$ が区間 $I$ 上で下に凸ならば、

\begin{displaymath}
f\left(\frac{1}{b-a}\,\int_a^b \psi(x)dx\right)
\leq \frac{1}{b-a}\,\int_a^b f(\psi(x))dx
\end{displaymath}

$f(y)$ が区間 $I$ 上で上に凸ならば、

\begin{displaymath}
f\left(\frac{1}{b-a}\,\int_a^b \psi(x)dx\right)
\geq \frac{1}{b-a}\,\int_a^b f(\psi(x))dx
\end{displaymath}

この命題 4Jensen の不等式 と呼ばれる。 積分を Riemann 和に分けて、 それに凸に対する不等式を適用すれば容易に得られる。

今、 $\bar{U}=LF(U_L,U_R)$ とすると、 (25) と命題 1、 命題 4、 および $U_{sol}(t,x)\in\Sigma(w_0,z_0)$ により、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{%
f_1(\bar{\rho})
=
f_1\left(\frac{1}{2\Delta x}\,\...
...}\,\int_{-\Delta x}^{\Delta x}m_{sol}(\Delta t,x)\,dx
=
\bar{m}\end{eqnarray*}

が成り立ち、よって $f_1(\bar{\rho})\leq\bar{m}\leq f_2(\bar{\rho})$ と なるので、命題 1 より ${}^t(\bar{\rho},\bar{m})\in\Sigma(w_0,z_0)$ が 言えることになる。 これが、定理 2 の通常の証明の流れである。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-02-28