4 とりあえず N 回やる場合

次は、3. の、あたってもはずれても とりあえず $N$ 回までやり続ける場合を考える。

毎回のくじは独立であるから、この場合の期待値は明らかに

\begin{displaymath}
E_3=NE_0\end{displaymath} (11)

であるが、ここでは別の計算方法を紹介する。

$N$ 回のうち、$k$ 回があたり、$(N-k)$ 回がはずれとなる組み合わせは ${}_{N}\!C_{k}$ 通りあり、 それぞれが $p^kq^{N-k}$ の確率で起こり、 そしてこのとき $\{kA-(N-k)B\}$ 円もらえるので、 これを $k$ に関して $0$ から $N$ まで加えると、

\begin{displaymath}
E_3=\sum_{k=0}^N{}_{N}\!C_{k}p^kq^{N-k}\{kA-(N-k)B\}\end{displaymath} (12)

となる。このような和を計算するのに必要となる計算式を紹介する。

一つは二項展開定理:

\begin{displaymath}
(1+x)^N=\sum_{k=0}^N{}_{N}\!C_{k}x^k\end{displaymath} (13)

であり、もうひとつはこの (13) を $x$ で微分して
\begin{displaymath}
N(1+x)^{N-1}=\sum_{k=0}^N{}_{N}\!C_{k}kx^{k-1}
\end{displaymath}

さらに $x$ 倍して得られる次の式である:
\begin{displaymath}
Nx(1+x)^{N-1}=\sum_{k=0}^N{}_{N}\!C_{k}kx^k\end{displaymath} (14)

(12) を、これらが使える形に変形する。
\begin{eqnarray*}E_3
&=&
q^N\sum_{k=0}^N{}_{N}\!C_{k}\left(\frac{p}{q}\right)^...
...ght)^k
-Nq^NB\sum_{k=0}^N{}_{N}\!C_{k}\left(\frac{p}{q}\right)^k\end{eqnarray*}


となるので、(13), (14) より、
\begin{eqnarray*}E_3
&=&
q^N(A+B)N\frac{p}{q}\left(1+\frac{p}{q}\right)^{N-1}
...
...left(1+\frac{p}{q}\right)^N
 &=&
Np(p+q)^{N-1}(A+B)-NB(p+q)^N\end{eqnarray*}


となるが、$p+q=1$ なので、
\begin{displaymath}
E_3=Np(A+B)-NB=NpA-N(1-p)B=N(pA-qB)=NE_0
\end{displaymath}

となり、(11) に一致する。

竹野茂治@新潟工科大学
2007年4月28日