3 解の構造
2 節の命題 1 により、
(3) の解を求めるには 個の線形独立な解を求めればよいことがわかったが、
それはいわゆる特性方程式によって求めることができる。
次方程式
|
(10) |
を、(3) の 特性方程式 と呼ぶ。
これは一般には 個の複素数解を持つが、
条件 (4) によりそれらはいずれも 0 ではない。
(10) を 倍すると、
となる。
これはすなわち が (3) の
解の一つであることを意味している1。
よって、特性方程式 (10) の解
がすべて違っていれば、
が一次独立であることは、例えばファンデルモンドの行列式によってわかるから、
(3) の一般解は、
と表されることになる。
問題は特性方程式 (10) が重解を持つ場合であるが、
この場合は次が成り立つ。
命題 2
が (10) の 重解の場合 ()、
の 個の一次独立な数列がすべて (3) の解となる。
証明
が (10) の 重解であれば、
(10) の左辺は
を因数に持つので、
(10) の左辺を で微分した式に
を
代入すれば 0 となる。
よって、
が成り立つ。
この式を 倍すると
|
(11) |
となるが、これに、
(10) に
を代入して 倍したものを加えると、
となるが、これをさらに 倍すれば
となる。
これは
が (3) の解であることを
意味する。
の場合は、(11) の左辺の を で置き換えた式
は、(10) の左辺を 1 回微分して 倍した式であるから、
を因数に持つ。
よって、やはりこの式を微分したものに
を
代入すれば 0 となる。
これを 倍して、
とし、
これに (11) の 倍と、
(10) に を代入して 倍したものを加えると、
より
となるので、これを 倍すれば、
となる。
これは、
が (3) の解であることを
意味する。
以下、これを繰り返せばよい。
これにより、(10) が重解を持つ場合も含めて (3) の解の構造がわかったことになる。
基本的には、 のように等比数列だと考えて得られるのが
特性方程式 (10) なので、
(3) の解がその形の解によってほぼ表現される、
というところが (3) の解の構造の本質となる。
例えば、4 項漸化式
の場合、 とすると
となるので、 で割ると
という 3 次方程式が得られるが、これが特性方程式である。これは、
と因数分解されるので、
と求まる。よって、
, , という一次独立な解があるので、一般解は、
と表される。, , を与えれば、
それにより , , が決定され、一つの解が決まることになる。
同様に、
の場合は、特性方程式は
であり、これは
と因数分解され、 は重解になるので、
この場合の一次独立な解は命題 2 により
, , となり、よって、一般解は
となる。
フィボナッチ数列
の場合は、特性方程式は
|
(12) |
であり、この解は
となる。よって、
と表される。(1) の , となる解を求めると、
の連立方程式を解いて、
となり、これにより (2) が得られる。
つまり、 は、2 次方程式 (12) の解として
出てくるのであって、それを満たす が
を満たすことで がフィボナッチ数列の解となるという
構造から (2) のような式が出てくるわけである。
このように、線形同次漸化式の解は、
基本的には (ほぼ) 等比数列の一次結合という構造になっている。
竹野茂治@新潟工科大学
2009年8月5日