6 S(k,r)
この節以降で、3 節で述べた方法での計算を行い、
それが 4 節での結果 (3) と一致することを確認する。
ただし、ここから先の話は元の問題からすれば本質的な話ではなく、
純粋に数学的な議論のみである。
また、この方針での計算はかなり大変であるので、
この後いくつかの節に分けて考察する。
3 節で考えたように、 回余計にかって 回で終わる確率は
であるので、期待値 は、
|
(4) |
となる。まずは、この を と の式で表すところから始める。
なお、 のときは明らかに であるから、
以後 として考える。
3 節で見たように、 には、
が成り立つ。
も言えていたが、これはむしろ (5) で
|
(7) |
であるとすれば得られるので、(7) が成り立つとすればよい。
なお、(5) を
この式の を とした式と比較してみればわかるが、
|
(8) |
が成り立つことに注意する。以後、この (6), (7), (8) から を求めていくことにするが、
逆にこれを満たす が一意に決定されることも容易にわかる。
さて、今 (8) で としてみると、
(6) より
となるから、この両辺を で割れば、
となるので、こ
の式にこの式の を にしたものを代入する、
といったことを繰り返すことによって、
となり、よって
|
(9) |
が得られる。同様に、(8) で とすると
となるので、 で割れば
より、
|
(10) |
のようになる。この、(9), (10) より、
|
(11) |
の形であることが想像される。
もし、この (11) を (8) に代入して、
(6), (7), (8) を満たすように矛盾なく を決定できれば、
前に述べたようにそれを満たす は一意であるから、
それで が得られることになる。
(11) を (8) に代入すると、
となる。よって、
に対して、
であればよく、これは、
を意味するので、
となり、
|
(12) |
となることになる。この は次のように決定できる。
(11) に を代入すると (7) より
となるが、ここに (12) を代入して
|
(13) |
が得られるが、
この (13) から次々 を求めることができる。
例えば、(13) に を代入すれば
より となり、 を代入すると、
となるので、
と求まる。以下、計算すると、
のようになるので、
|
(14) |
となることが予想される。
これは実際に、(13) と帰納法を用いれば証明できる。
まで (14) が成り立つとすれば、
(13) により は、
となる。ここで、
|
(15) |
であることを用いれば、
となるので、帰納法により (14) が成り立つことになる。
(15) は、母関数の方法を用いて以下のように証明できる。
二項定理により、
であるが、
なので (15) は に等しいことになる。
一方、テイラー展開を考えると、
となるので
となり、
これで (15) が示されたことになる。
結局、(11), (12), (14) により、
|
(16) |
となる。
これは、 とすると
となり (6) も満たすので、
(6), (7), (8) を矛盾なく満たすことになり、
確かに (16) が成り立つことがわかる。
竹野茂治@新潟工科大学
2008年5月24日