7 ベッセルホーン
最後に、いわゆる「ベッセルホーン」について考察する。
これは、
の場合である。
だと、開口端 で となるので現実的ではないし、
大きい に対しては方程式そのものの妥当性も薄れてしまうが、
近似的な状況を考えるにはシンプルで、考えやすいモデルかもしれない。
しばらくは、 として考える。
としてよい。
この場合は、
(21)
とし、, とすると、 より、
となるので、 が満たす方程式は、
(22)
となる。これは、
, とすると、
となり、よって は、いわゆるベッセルの微分方程式
を満たすことになる。その一般解は、特殊関数の 次ベッセル関数 と 次ノイマン関数 を用いて
と書ける (例えば [1] 第 VI 篇 36、[2] 等)。
よって は、
(23)
となる。
(21) より、境界条件 (8) を に書き直すと、
より
となる。これを (23) に代入すると、
前者は
(24)
となり、後者は
となる。ところで、ベッセル関数、ノイマン関数は、
次の公式を満たすことが知られている ([1] 第 VI 篇 38)。
(26)
これにより、
となるので、これにより条件 (25) は、
(27)
と書き換えられる。ここで、
と書くことにすると、, の条件式 (24), (27) の
係数行列の行列式は
となるので、
この行列式が 0 でなければ となって 0 以外の解が求まらないことになるので、
0 でない解が求まるためには
(28)
が必要となる。そしてこれを満たす が存在すれば、その に対し
となるので、解 は
と書けることになる。
これまでのように、(28) を満たす が
無数に存在するかどうか、
そしてそのとき周波数 はどうなるかを考えたいが、
一般の の場合には少し難しいので、
ここでは簡単のため、 が整数 の場合を考えてみる。
ベッセル関数、ノイマン関数は の場合は半ベッセル関数と呼ばれ、
, で表現されることが知られている ([1] 第 VI 篇 39)。
本節では主に の場合を紹介するが、
これは断面の半径が
の円である場合に相当する。
[1] (第 VI 篇 39) によれば、
, (
) は、
と表されるので、, , , は、
(30)
となる。よって は、
となる。条件 (28) は、
より、
となるので、(28) を満たす は、
(31)
となり、無数に存在することがわかる。
そして、(29) より解 は、
となる。これは、三角関数で表現されているが、
例えば (20) のような
単純にその振幅を変更したものではなく位相も変動し、
その位相のずれも に依存する。
よって (32) の に対して「波長」という
呼び方はもはやこの解に対しては適切ではないが、
となるから、 の極大極小の位置は、 の前後で反転はするが、
のその位置とほぼ同じになる。
つまり の波長と同じ「波長」らしきものが にも
存在すると見ることができ、その「波長」は
(31) の に対して
となる。
周波数の方は、(31) の に対して
(33)
となる。これも、 であれば
となるので、
となるから、
その自然倍音列は直開管の自然倍音列の周波数に近くなる。
最後に の場合の話も少し書いておく。
この場合も、(21) の変換によって
ベッセルの方程式 (22) が得られ、
その一般解が (23) と表される
ことまでは同じである。
境界条件の の方は、
この場合は
より なら
自然に となりそうであるが、実はそんなに簡単でもない。
は
で
な
ので であるが、
の方は
なので
となる。
ただ、
なので、
より となり、よってこの場合
となる。 は (26) より、 とすれば、
となるので、
より、
が が満たすべき条件となる。
ならば
には、 以外に
無限個の離散的な零点
(
) が
存在することが知られていて、正確な値を知ることは容易ではないが、
漸近公式なども知られている ([1] 第 VI 篇 36)。
特に、 () の場合は、(30) より、
なので、
となって、完全に直開管と同じ自然倍音列を与えることになる。
なお、これは (33) で () とした
ものにも一致している。
また、この場合の解 は、
となるが、 より、
となり、これも (32) で としたものに一致する。
つまり、あまり現実的ではなさそうな の式は、
が小さい場合の話を、
ある程度ちゃんと近似していることがわかる。
竹野茂治@新潟工科大学
2022-01-11