6.3 1 次因数を持つかどうかの判別

最後に、 $\displaystyle f(x)=\sum_{j=0}^n a_jx^j\in\mathbb{Z}[x]$ ($a_n\neq 0$, $a_0\neq 0$) が有理数の範囲で 1 次因数を 持つかどうかの判別について説明する。

有理数の範囲で 1 次因数を持てば、補題 5 により それは整数の範囲でも 1 次因数を持つことになる。 その因数を $bx+c$ とすると、

\begin{displaymath}
f(x) = (bx+c)g(x)
\hspace{1zw}(g(x)\in\mathbb{Z}[x],\ b\in\mathbb{N},\ c\in\mathbb{Z})
\end{displaymath}

となるから、その最高次の係数と最低次の係数を比較すれば、 $b$$a_n$ の約数、$c$ の絶対値は $a_0$ の約数であることがわかる。 よって、その組み合わせは $\vert a_n\vert$ の約数の個数 $N$ と、 $\vert a_0\vert$ の約数の個数 $M$ の 2 倍 ($\pm$ の符号の分) だけあり、 すなわち $2NM$ 通りになる。それらが実際に因数であるかは、 因数定理により $x=-c/b$$f(x)$ に代入して 0 になるかを 確認すればよいので、それで確実に 1 次因数の存在が判別できることになる。

3 次式の場合には、それが有理数の範囲で因数分解できれば、 必ず有理数係数の 1 次因数があることになるので、 3 次式が有理数の範囲で因数分解できるかどうかは 有限回の手続きで容易に確認できることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2018-03-02