8 最後に
本稿では、[1] を元に、
線形の特性境界値問題 (2), (3), (5) の境界条件 (6) の必要性について考察し、
変数分離法によりそれが を境に分かれるということがわかったが、
数値計算の結果は を境に急激に分かれるというものではなく、
特に境界条件のいらない差分 (31) では、
本来は不適切であるはずの
の場合についても
それほど強い不自然さは見られないといった結果となった。
むしろ数値的には を境にかなり不安定になるようであるが、
これが何を意味しているのかはよくはわからない。
よって、数値計算によって完全に裏付けられたとは言いがたいが、
大まかな傾向として、
境界条件のいらない差分 (31) は
小さい に対しては適切ではなく、
境界条件つきの差分 (32) は
大きい に対しては適切ではない、
ということは、少なくとも見てとれたのではないかと思う。
なお本稿は、慶応大学の高山正宏先生に [1] を紹介していただき、
そして色々と教えて頂いたことを元にして書いたものである。
さらに、高山先生には、本稿の原稿を見て頂いた上で、以下の指摘を頂いた。
- 方程式 (5) は、[1] の章末問題で、
線密度が に比例する場合の糸の振動として紹介されている。
- 5 節で (24), (25) による級数 (22) が (2), (3), (8) の解であると述べているが、
それはあくまで形式解であって、
厳密解になっているかどうかは収束性の議論等が必要であろう。
これらは確かにご指摘の通りである。
高山先生にはこの場を借りて深くお礼申し上げたい。
竹野茂治@新潟工科大学
2009年6月22日