3.2 極座標に付随する基本ベクトル

次に、極座標 (1) に対するひとつの命題を示す。 ここで、 $\mbox{\boldmath$r$}=(x,y,z)$ は、$(x,y,z)$ のベクトル関数ともみれるし、 (1) による $(r,\phi,\theta)$ のベクトル関数とも見れるが、 それらを同じ $\mbox{\boldmath$r$}$ で書くこととする。 また、行列演算においては $\mbox{\boldmath$r$}$, $\nabla$ は いずれも行ベクトルと考え、 また行ベクトル $\mbox{\boldmath$b$}$ を列ベクトルにしたもの、 すなわち $\mbox{\boldmath$b$}$ の転置 ${}^T\!{\mbox{\boldmath$b$}}$ を、 大文字を使って $\mbox{\boldmath$B$}$ のように書くことにする。


命題 2

  1. $\mbox{\boldmath$r$}$, $\mbox{\boldmath$r$}_\phi$, $\mbox{\boldmath$r$}_\theta$ のスカラー倍である 以下の 3 つのベクトル
    \begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$e$}_1=\frac{1}{r}\mbox{\boldmath$r$},\hspac...
...
\mbox{\boldmath$e$}_3=\frac{1}{r}\mbox{\boldmath$r$}_\theta
\end{displaymath}

    は、互いに垂直な単位ベクトルである (極座標に付随する基本ベクトル)。
  2. $3\times 3$ 行列
    \begin{displaymath}
A=\left[\mbox{\boldmath$E$}_1\ \mbox{\boldmath$E$}_2\ \mbox{\boldmath$E$}_3\right]
\end{displaymath}

    は直交行列、すなわち以下が成り立つ。
    \begin{displaymath}
A^{-1}
={}^T\!{A}
= \left[\begin{array}{c}\mbox{\boldmath...
...box{\boldmath$e$}_2\\ \mbox{\boldmath$e$}_3\end{array}\right]
\end{displaymath}


証明

2. は 1. から 一般的に言える性質 (詳しくは線形代数の教科書、例えば [2] 参照) なので、1. のみを言えばよい。

\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$e$}_1=\frac{1}{r}\mbox{\boldmath$r$}
=(\cos\phi\cos\theta,\sin\phi\cos\theta,\sin\theta)
\end{displaymath} (15)

であるから、これを $\phi$ で微分すれば
\begin{displaymath}
\frac{1}{r}\mbox{\boldmath$r$}_\phi=(-\sin\phi\cos\theta,\cos\phi\cos\theta,0)
\end{displaymath}

となるので、よって
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$e$}_2=\frac{1}{r\cos\theta}\mbox{\boldmath$r$}_\phi =(-\sin\phi,\cos\phi,0)
\end{displaymath} (16)

となる。また、(15) を $\theta$ で微分すれば
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$e$}_3=\frac{1}{r}\mbox{\boldmath$r$}_\theta
=(-\cos\phi\sin\theta,-\sin\phi\sin\theta,\cos\theta)
\end{displaymath} (17)

となるので、内積、長さを計算すれば容易に
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$e$}_1\bullet\mbox{\boldmath$e$}_2
=\mbox{\...
...}_2\right\vert=\left\vert\mbox{\boldmath$e$}_3\right\vert
=1
\end{displaymath}

が得られる。


竹野茂治@新潟工科大学
2009年2月2日