8 タンジェント超関数のフーリエ級数

ではいよいよ $\mathrm{pTan}x$ の周期超関数としてのフーリエ級数を計算する。 (20) より、
\begin{eqnarray*}\lefteqn{a_n(\mathrm{pTan}x)
=
\left\langle  \mathrm{pTan}x,...
...&
(-1)^n\frac{2}{\pi}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}(1-\cos 2nt)\cot t dt\end{eqnarray*}


となるので、結局 $a_n(\mathrm{pTan}x)=0$ となる。一方、
\begin{displaymath}
b_n(\mathrm{pTan}x)
=
\left\langle  \mathrm{pTan}x, \fr...
...ght\rangle _{\pi}
=
\frac{2}{\pi}\int_0^\pi\sin 2nx\tan x dx\end{displaymath} (21)

となるが、これらはまさに $\tan x$ の形式的なフーリエ係数に他ならない。

$a_n=0$$\tan x$ が奇関数であるから、 $b_n$ については $\tan x$ の特異性と $\sin 2nx$ の零点が たまたま一致するために普通に積分できるわけである。

よって、あとは (21) を計算して、 それが $2(-1)^{n-1}$ に等しいことを示せば $\mathrm{pTan}x$ の フーリエ級数が (1) の右辺に等しいことになる。

\begin{eqnarray*}\lefteqn{b_n(\mathrm{pTan}x)
=
\frac{2}{\pi}\int_0^\pi\sin 2...
...-1)^{n+1}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}
\frac{\sin 2nt}{\sin t}\cos t dt\end{eqnarray*}


ここで、
\begin{eqnarray*}\lefteqn{
\frac{\sin 2nt}{\sin t}
=
\frac{e^{2int}-e^{-2in...
...-1)it}}
 &=&
2\cos (2n-1)t + 2\cos (2n-3)t + \cdots + 2\cos t\end{eqnarray*}


となるので、
\begin{eqnarray*}\lefteqn{
\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\frac{\sin 2nt}{\sin t}\cos t ...
...)\cos t dt}
 &=&
\int_{-\pi/2}^{\pi/2}2\cos^2 t dt
=
\pi\end{eqnarray*}


よって、確かに $b_n(\mathrm{pTan}x) = 2(-1)^{n-1}$ となる。

つまり、(1) は、左辺を $\mathrm{pTan}x$ と見れば、 超関数の範囲では収束して等号が成り立つことが言えることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2015年6月1日