11 初速度が正の場合
次は、初速度が 0 ではない場合を考える。
少し勢いをつけて斜面に投げるようなイメージである。
この場合は、元の式 (1)
(5) の
うち、(4) が、
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(71) |
に変わるが、それにより (10) が、
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(72) |
に変わるので、(11) は
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(73) |
となる。この場合は、オイラー方程式 (19) は、
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(74) |
となるので、
とすれば (20) と
同じ方程式
が得られる。この場合、
となるので、
(22) は、
となり、
 |
(75) |
とすれば
となり、よって、
 |
(76) |
となる。これは、前の逆さサイクロイドを
方向に
平行移動したものになっている。
とすると、
となるので、(76) より、
これは曲線を負の方に少し伸ばして
から
速度 0 でスタートして、
の場所で速さが
になったものと同じ
状況になっていることがわかる。
また、この解は
では
ではなく、
有限な傾きになっている (図 9)。
図 9:
,
の条件
|
次に、この解が一つに決まるかを考えてみよう。
すなわち、与えられた
,
,
に対して、
 |
(77) |
となる
,
が一意に存在するか
どうかを調べてみる。実際には、
(77) の
と
で境界条件 (5) を満たすことが
,
の条件なので、
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(78) |
となる
,
が一意に存在するかどうかを考えればよい (図 10)。
図 10:
,
の条件
|
(78) を 2 つのパラメータを用いて
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(79) |
と表し、それを 4 未知数
,
,
,
の 4 本の方程式と考え、逆関数定理を用いて解の存在を示す、
という方針もあるが、
ここでは、別の形で (78) の解を
考えていくことにする。
まず、
は、サイクロイドが
まで達しなければ
いけないので、
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(80) |
である必要がある。
このとき、サイクロイド
(
) と
水平線
,
との交点の
座標を、
小さい方から順に
,
,
),
とすると (図 11)、
図 11:
|
サイクロイドは
で左右に対称なので、
となり、
のときは、
そしてそのときだけ
となる。
そして、満たすべき条件 (78) は、
と
か
のいずれかが
となればよいので、結局任意の
,
,
に対して、
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(81) |
となるような
が存在すること、と同じことになる。
そのような
が取れれば、
は
とすればよい。
よって、(81) を満たす
が
ただ一つ存在することを示せばよいが、
それは
と
の増減を調べればよく、
一意存在のためには以下のことが言えればよい。
「
,
は
に関して減少関数で、
であること、
および
も減少関数であること」
もし、これが示されれば、
の (80) での値の範囲は
で、
その対応は 1 対 1 となる。
一方
は増加関数で
となるので
も増加関数で、
(80) での値の範囲は
で、
やはり 1 対 1 となる。
であるから、よってこれにより (81) を
満たす
がただ一つ存在することがわかる。
と
の増減や
での
値の性質は同じなので、
それについてはとりあえず
の方のみを考える。
はパラメータを用いて、
 |
(82) |
と表される。ここから、
となり、
と
が
1 対 1 に単調 (減少) に対応し、よって
を
パラメータ
で表現できることになる。
(82) より
と表されるので、

より、
 |
(83) |
となる。
の
での傾きは 1 なので、
では
であり、
よって (83) より
では
となることがわかる。
よって
は
で減少する。
また、両端の値が、
となることもわかる。
の増減、端点の値も同様なので、
あとは
の減少性を示せばよい。
もパラメータを用いて、
 |
(84) |
と表せば、(83) より
となる (
)。ここで、
なので、ここから
がわかる。
これで
が減少関数であることもわかり、
よって、以上で (81) を
満たす
がただひとつ存在することが言え、
初速が正の場合の逆さサイクロイド解が
ただ一つ存在することが示されたことになる。
竹野茂治@新潟工科大学
2016年1月8日