4 その他の方法

次は、巾乗と三角関数の積の積分を、 4 節の 2. の方針、 すなわち微分によって求める方法を考える。 $\alpha = 1$ のみ紹介する。

  $\displaystyle
f_2(x;n,\beta) = \frac{x^n}{n!}\sin\left(x-\frac{n\pi}{2}+\beta\...
...ce{1zw}
f_3(x;n,\beta) = \frac{x^n}{n!}\cos\left(x-\frac{n\pi}{2}+\beta\right)$ (21)
とすると、

\begin{eqnarray*}f_2'(x;k,\beta)
&=&
\frac{x^{k-1}}{(k-1)!}\sin\left(x-\frac{...
...eta)
&= &
(\sin(x+\beta))' \ =\ \cos(x+\beta) = f_3(x;0,\beta)\end{eqnarray*}

より、

$\displaystyle f_3(x;n,\beta) = \sum_{k=0}^n f_2'(x;k,\beta)
$

となり、よって、
  $\displaystyle
\int f_3(x;n,\beta) dx = \sum_{k=0}^n f_2(x;k,\beta) + C$ (22)
となる。これが (19) である。

次は 4 節の 3. の方針、 すなわち複素数を利用する方法も考えておく。 例えば $I_2(x;n,1)$ は、

\begin{eqnarray*}I_2(x;n,1)
&=&
\int x^n\cos x dx
\ =\
\int x^n\mathop{\r...
...ft(\int x^n e^{ix} dx\right)
\\ &=&
\mathop{\rm Re}(I_1(x;n,i))\end{eqnarray*}

と見ることができる (あるいは $I_1(x;n,i) = I_2(x;n,1)+iI_3(x;n,1)$ と見てもよい)。 よって、(7) より、

$\displaystyle \frac{(-i)^n}{n!}I_1(x;n,i)
= \frac{1}{i}\sum_{k=0}^n \frac{(-i)^k}{k!}x^ke^{i x} + C
= \sum_{k=0}^n \frac{(-i)^{k+1}}{k!}x^ke^{i x} + C
$

なので、

$\displaystyle \frac{1}{n!}I_1(x;n,i)
= \sum_{k=0}^n \frac{(-i)^{k+1-n}}{k!}x^ke^{i x} + C
= \sum_{k=0}^n \frac{x^k}{k!}e^{i\pi(n-k-1)/2}e^{i x} + C
$

となり、よってこの実数部分を取れば

\begin{eqnarray*}\frac{1}{n!}I_2(x;n,1)
&=&
\sum_{k=0}^n \frac{x^k}{k!}\cos\le...
...ac{x^k}{k!}\sin\left(
x+\frac{n\pi}{2}-\frac{k\pi}{2}\right) + C\end{eqnarray*}

となるが、 これは (19) の展開の $\beta=n\pi/2$ の場合と 同じものであり、すなわち (17) の最初の式を 意味する。

また、 $I_4(x;n,1,\beta)$ も、複素数を使って、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\frac{1}{n!}I_4(x;n,1,\beta)
\ =\
\int \frac{x^n}{n...
..._{k=0}^n\frac{x^k}{k!}\sin\left(x-\frac{k\pi}{2}+\beta\right) + C\end{eqnarray*}

のようにして、(7) から (19) を得ることができることがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-03-12