3 巾乗と三角関数の積の積分

次は、$x^n$$\sin\alpha x$, $\cos\alpha x$ の積の積分を考える。

これも、大まかな方針は、部分積分を繰り返して、 巾乗の方の次数を一つずつ下げることで、 最終的に三角関数のみの積分に帰着させることである。

一般的な式を求める方法はいくつか考えられるが、 例えば以下のようなものがある。

  1. 2 節の (4) のように、 部分積分により漸化式を作り、そこから求める
  2. 2 節の $f_1(x;n,\alpha)$ のような関数を見つけて、 積の微分により求める
  3. 複素数を利用して、三角関数を複素指数関数で表現することで、 (7) を利用して求める
ただし、 $x^n\sin\alpha x$, $x^n\cos\alpha x$ の部分積分は、 毎回の部分積分で、$\sin$$\cos$ が交互に入れ替わるので、 1. の方針では 2 節ほど簡単ではない。 本節ではまずそれを考えてみる。

  $\displaystyle
I_2(x;n,\alpha) = \int x^n\cos\alpha x dx,
\hspace{1zw}I_3(x;n,\alpha) = \int x^n\sin\alpha x dx$ (11)
とすると、これも当然
  $\displaystyle
I_2(x;n,\alpha) = \frac{1}{\alpha^{n+1}}I_2(\alpha x;n,1),
\hspace{1zw}I_3(x;n,\alpha) = \frac{1}{\alpha^{n+1}}I_3(\alpha x;n,1)$ (12)
となって $\alpha = 1$ の場合に帰着される。 部分積分により、

\begin{eqnarray*}I_2(x;k,1)
&=&
\int x^k(\sin x)' dx
\ =\
x^k\sin x- kI_3(...
...
&=&
\int x^k(-\cos x)' dx
\ =\
-x^k\cos x + kI_2(x;k -1 ,1)\end{eqnarray*}

となるので、
  $\displaystyle
\left\{\begin{array}{ll}
\displaystyle \frac{1}{k!}I_2(x;k,1) +...
...-1)!}I_2(x;k-1,1)
& \displaystyle = -\frac{x^k}{k!}\cos x
\end{array}\right.$ (13)
となり、漸化式に $I_2$$I_3$ が混在するので 2 節 よりはだいぶ厄介になる。 その回避策としては、例えばもう 1 段下げて $k$$k-2$ の関係式にする、 という手がある。

\begin{eqnarray*}I_2(x;k,1)
&=&
x^k\sin x- kI_3(x;k -1 ,1)
\\ &=&
x^k\sin x-...
...,1)\}
\\ &=&
-x^k\cos x + kx^{k-1}\sin x - k(k-1)I_3(x;k -2 ,1)\end{eqnarray*}

となるので、
$\displaystyle \frac{1}{k!}I_2(x;k,1)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{x^k}{k!}\sin x + \frac{x^{k-1}}{(k-1)!}\cos x
- \frac{1}{(k-2)!}I_2(x;k -2 ,1)$ (14)
$\displaystyle \frac{1}{k!}I_3(x;k,1)$ $\textstyle =$ $\displaystyle -\frac{x^k}{k!}\cos x + \frac{x^{k-1}}{(k-1)!}\sin x
- \frac{1}{(k-2)!}I_3(x;k -2 ,1)$ (15)

と、ひとつ跳んだ形ではあるが、$I_2$$I_3$ が混在しない 漸化式が得られるので、あとは $n$ が奇数か偶数かで場合分けすれば $I_2(x;n,1)$, $I_3(x;n,1)$ の 一般的な式を得ることができる。 ただし、その場合分けも含めて、 その一般的な式は 2 節のものよりはだいぶ複雑に なる (が、これも不思議と $\sin x$, $\cos x$ のマクローリン展開に 似た形になる)。

それを解消する方法として、さらに次のような手がある。

  $\displaystyle
I_4(x;n,\alpha,\beta)
= \int x^n\cos\left(\alpha x-\frac{n\pi}...
... dx
\hspace{1zw}
\left( =\frac{1}{\alpha^{n+1}}I_4(\alpha x;n,1,\beta)\right)$ (16)
とすると、これは、
  $\displaystyle
I_4\left(x;n,\alpha,\frac{n\pi}{2}\right) = I_2(x;n,\alpha),
\h...
...w}
I_4\left(x;n,\alpha,\frac{n\pi}{2}-\frac{\pi}{2}\right)
= I_3(x;n,\alpha)$ (17)
となるので、$I_4$$I_2$, $I_3$ を特別な場合として含んでいて、 つまり $I_2$, $I_3$ を一般化したものとも見ることができる。 $I_4(x;k,1,\beta)$ を部分積分すると、

\begin{eqnarray*}I_4(x;k,1,\beta)
&=&
\int x^k\left\{\sin\left(x-\frac{k\pi}{2...
...\right)
- k\int x^{k-1}\sin\left(x-\frac{k\pi}{2}+\beta\right)dx\end{eqnarray*}

となるが、

$\displaystyle \sin\left(x-\frac{k\pi}{2}+\beta\right)
= \sin\left(x-\frac{(k-1)\pi}{2}-\frac{\pi}{2}+\beta\right)
= -\cos\left(x-\frac{(k-1)\pi}{2}+\beta\right)
$

より、
  $\displaystyle
\frac{1}{k!}I_4(x;k,1,\beta)
=
\frac{x^k}{k!}\sin\left(x-\frac{k\pi}{2}+\beta\right)
+\frac{1}{(k-1)!}I_4(x;k-1,1,\beta)$ (18)
となり、

$\displaystyle I_4(x;0,1,\beta) = \int \cos(x+\beta)dx = \sin(x+\beta)+C
$

なので、結局
  $\displaystyle
\frac{1}{n!}I_4(x;n,1,\beta)
= \sum_{k=0}^n\frac{x^k}{k!}\sin\left(x-\frac{k\pi}{2}+\beta\right) + C$ (19)
が得られる。一般の $\alpha$ の場合も、
$\displaystyle \frac{\alpha^n}{n!}I_4(x;n,\alpha,\beta)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{\alpha^n}{\alpha^{n+1}}\,\frac{1}{n!}I_4(\alpha x;n,1,\beta)$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{1}{\alpha}\sum_{k=0}^n\frac{(\alpha x)^k}{k!}
\sin\left(\alpha x-\frac{k\pi}{2}+\beta\right) + C$ (20)

となる。

例えば、これを簡単なものに適用すると、(17), (19) より

\begin{eqnarray*}\int x^2\cos x dx
&=&
I_2(x;2,1) = I_4(x;2,1,\pi)
\\ &=&
2!...
...}{2}\right)\right\} + C
\\ &=&
2\cos x + 2x\sin x-x^2\cos x + C\end{eqnarray*}

のようになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-03-12