4 公式を利用しない部分積分
ここまでは、公式 1、
あるいは公式 2 を用いた部分積分を議論してきたが、
「公式を用いない部分積分」もある。
やや手間がかかる方法であるが、
「部分的に一方を積分する」という考え方を利用する以下のような方法である。
方法 3:
-
の一方を積分した を作る
- その残り (差) を とし、
|
(10) |
と置いてこの両辺を微分する:
- この最後の式を積分して
を計算して、その結果を (10) に代入する
例として、
を計算してみる。
の方のみを積分して、その余りを と置くと、
|
(11) |
となるが、この (11) の両辺を微分すると、
となるので、 となるからこれを積分して
となる。これを (11) に代入すれば
が得られる、といった具合である。
この方法 3 の長所は、
- 長所 1: 公式を覚える必要はないので、公式の覚え間違いによる誤答は防げる
- 長所 2: 微分計算もしているので、検算もしやすい (逆に読んでいけばよい)
等だろう。これらの点では公式 1 や公式 2 よりも優れていると言えるが、逆に欠点は、
- 短所 1: 積の微分でミスをする学生にはむしろ間違いの元となりうる
(特に積分と微分が混ざった計算では、 と のどちらに がつくのかを間違える学生が多い)
- 短所 2: 公式 1、公式 2 よりも手間がかかる (少なくともそのように見える) ので、学生には敬遠されるかもしれない
- 短所 3: 特に複数回部分積分が必要な場合は、余計に面倒である。
- 短所 4: 部分積分の有効性を教え (理解し) にくい
であろうか。
積の微分は苦手な学生も多いので、
短所 1 は大きな欠点かもしれないが、
そのような学生には、例えば公式 1 の 長所 1 も長所にはならないので、
その点では公式 1 とは差し引きされるかもしれない。
また、短所 2 の「手間がかかる」という欠点も、
むしろ手間をかけて丁寧にやれば間違いが少ないということであり、
途中の計算も残りやすいので、そういう点ではよいことも多い。
しかし、最後の 短所 4 は、
例えば公式 1 であれば
「 よりも の積分の方が楽になる場合に部分積分は有効である」
と説明できるが、方法 3 ではそうはいかない、
ということを意味していて、これはある意味致命的で、
その有効性を認識してもらうためには公式 1 や公式 2 を示す必要があり、
方法 3 は補助的な使用に留まらざるを得ないと思う。
竹野茂治@新潟工科大学
2010年3月16日