5 反比例のグラフ

最後に、反比例 $y=A/x$ ($A>0$) のグラフの $[\sqrt{A},a]$ ($a>\sqrt{A}$) の 範囲の曲線長 $L=L_4(a,A)$ を考える。 なお、$y=A/x$$x>\sqrt{A}$ の部分と $0<x<\sqrt{A}$ の部分は $y=x$ に 関して対象なので、$0<b<\sqrt{A}$ に対する $[b,\sqrt{A}]$ での 曲線の長さは、 $[\sqrt{A},A/b]$ での長さ $L_4(A/b,A)$ に等しく、 $a>\sqrt{A}$$L_4(a,A)$ で求められることになる。

$y'=-A/x^2$ より、$L_4(a,A)$

  $\displaystyle
L_4(a,A) = \int_{\sqrt{A}}^a\sqrt{1+\frac{A^2}{x^4}}\,dx$ (16)
となるが、$x=\sqrt{A}\,t$ とすると
  $\displaystyle
L_4(a,A) = \sqrt{A}\int_{1}^{a/\sqrt{A}}\sqrt{1+\frac{1}{t^4}}\,dt
=\sqrt{A}L_4\left(\frac{a}{\sqrt{A}},1\right)$ (17)
となるので $L_4(a,A)$$A=1$ の場合に帰着し、 よって以後は $L_4(a,1)$ のみを考える ($a>1$)。

この $L_4(a,1)$ もやはり楕円積分で表されるものになる。 少し計算が厄介だが、この積分を楕円積分の標準形である「第 1 種楕円積分」

  $\displaystyle
F(\phi,k) = \int_0^\phi\frac{dt}{\sqrt{1-k^2\sin^2 t}}
\hspace{1zw}(0<k<1)$ (18)
と (13) の第 2 種楕円積分 $E(\phi,k)$ で表す。 まず、$L_4(a,1)$
$\displaystyle L_4(a,1)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \int_{1}^{a}\frac{\sqrt{x^4+1}}{x^2}\,dx
\ =\
\int_{1}^{a}\frac{x^4+1}{x^2\sqrt{x^4+1}}\,dx$ 
  $\textstyle =$ $\displaystyle \int_{1}^{a}\frac{x^2}{\sqrt{x^4+1}}\,dx
+\int_{1}^{a}\frac{1}{x^2\sqrt{x^4+1}}\,dx
\ =\
f_1(a) + f_2(a)$(19)
と 2 つに分ける。ここで、$f_2(a)$$x=1/t$ と置換すると、
$\displaystyle f_2(a)
= \int_{1}^{1/a}\frac{t^2}{\sqrt{1/t^4+1}}
\left(-\frac{1}{t^2}\right)dt
= - \int_{1}^{1/a}\frac{t^2}{\sqrt{t^4+1}}\,dt
$
となり、形式的には $f_2(a)=-f_1(1/a)$ に等しくなるので、 $a>1$$0<a<1$ に対して $f_1(a)$ を求められれば、
  $\displaystyle
L_4(a,1) = f_1(a) -f_1\left(\frac{1}{a}\right)$ (20)
と求まることになる。よって次は $f_1(a)$ を考える。

唐突ではあるが、[2] を参考に、

  $\displaystyle
I = \left(\frac{x\sqrt{x^4+1}}{x^2+1}\right)'
- \frac{x^2}{\sqrt{x^4+1}}$ (21)
を考える。すると、
\begin{eqnarray*}I
&=&
\frac{\sqrt{x^4+1}}{x^2+1}-\frac{x\cdot 2x\sqrt{x^4+1}...
...1)^2\sqrt{x^4+1}}
\ =\
\frac{(x^2-1)^2}{(x^2+1)^2\sqrt{x^4+1}}\end{eqnarray*}
となるので、これにより $f_1(a)$ は、
$\displaystyle f_1(a)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \int_1^a \frac{x^2}{\sqrt{x^4+1}}\,dx
\ =\
\int_1^a\left\{\left(...
...rt{x^4+1}}{x^2+1}\right)'
- \frac{(x^2-1)^2}{(x^2+1)^2\sqrt{x^4+1}}\right\}\,dx$ 
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{a\sqrt{a^4+1}}{a^2+1}-\frac{\sqrt{2}}{2}-f_3(a)$(22)
となり、あとは、
  $\displaystyle
f_3(a) = \int_1^a\frac{(x^2-1)^2}{(x^2+1)^2\sqrt{x^4+1}}\,dx$ (23)
を求めればよいことになる。 $f_3(a)$ は一見 $f_1(a)$ より難しそうだが、 実は次のような置換がうまくいく。
  $\displaystyle
u = u(x) = \frac{2x}{x^2+1}$ (24)
$u(x)$$0<x<1$ では増加し、$x>1$ では減少し、 $u(0)=u(\infty)=0$, $u(1) = 1$ となることに注意する。 そのため、$a>1$$0<a<1$ かで少し式が分かれる部分がある。

まずは $a>1$ の場合を考える。この場合 $x>1$ であり、

  $\displaystyle
\frac{du}{dx} = \frac{2(x^2+1)-2x\cdot 2x}{(x^2+1)^2}
= \frac{2(1-x^2)}{(x^2+1)^2}$ (25)
で、また、$x^2+1=2x/u$ より
  $\displaystyle
\sqrt{x^4+1} = \sqrt{(x^2+1)^2-2x^2}
= \sqrt{\frac{4x^2}{u^2}-2x^2}
= \frac{2x}{u}\sqrt{1-\frac{u^2}{2}}$ (26)
となる。また、
$\displaystyle (x^2-1)^2 = (x^2+1)^2-4x^2 = \frac{4x^2}{u^2}-4x^2
= \frac{4x^2}{u^2}(1-u^2)
$
より、$x>1$ より
  $\displaystyle
x^2-1 = \frac{2x}{u}\sqrt{1-u^2}$ (27)
となるので、$f_3(a)$ を置換すると、
  $\displaystyle
f_3(a)
= \int_1^a \frac{1}{2}\,\frac{1-x^2}{\sqrt{x^4+1}}\,
\f...
...\,dx
= -\frac{1}{2} \int_1^{2a/(a^2+1)}\frac{\sqrt{1-u^2}}{\sqrt{1-u^2/2}}\,du$ (28)
となる。ここでさらに $u=\sin\theta$ ( $0\leq\theta\leq \pi/2$) と 置換すると、 $\theta_0=\sin^{-1}(2a/(a^2+1))$ に対し、
\begin{eqnarray*}f_3(a)
&=&
-\frac{1}{2}\int_{\pi/2}^{\theta_0}
\frac{\cos\t...
...int_{\theta_0}^{\pi/2}
\frac{d\theta}{\sqrt{1-(\sin^2\theta)/2}}\end{eqnarray*}
となるので、(13), (18) より、$f_3$
  $\displaystyle
f_3(a) = \left[E\left(\theta,\frac{1}{\sqrt{2}}\right)
-\frac{1}{2}F\left(\theta,\frac{1}{\sqrt{2}}\right)
\right]_{\theta_0}^{\pi/2}$ (29)
と表されることになる。

$0<a<1$ の場合は $0<x<1$ なので $x^2-1<0$ となり、 上の計算のうち (27) が

  $\displaystyle
x^2-1 = -\frac{2x}{u}\sqrt{1-u^2}$ (30)
に変わり、よって、
  $\displaystyle
f_3(a)
= \frac{1}{2}\int_{\pi/2}^{\theta_0}
\frac{\cos^2\thet...
...-\frac{1}{2}F\left(\theta,\frac{1}{\sqrt{2}}\right)
\right]_{\pi/2}^{\theta_0}$ (31)
となる。 今、$a>1$ に対して $b=1/a$ とすると $0<b<1$ であり、 $\theta_1=\sin^{-1}(2b/(b^2+1))$ に対し
$\displaystyle f_3(b)
= \left[E\left(\theta,\frac{1}{\sqrt{2}}\right)
-\frac{1}{2}F\left(\theta,\frac{1}{\sqrt{2}}\right)
\right]_{\pi/2}^{\theta_1}
$
となるが、
$\displaystyle \frac{2b}{b^2+1} = \frac{2/a}{1/a^2+1} = \frac{2a}{1+a^2}
$
なので $\theta_1=\theta_0$ となり、よって、
  $\displaystyle
f_3(b) = f_3\left(\frac{1}{a}\right) = -f_3(a)$ (32)
となることがわかる。よって (22) より、
  $\displaystyle
f_1\left(\frac{1}{a}\right)
=
\frac{\sqrt{1/a^4+1}}{a(1/a^2+1)...
...frac{1}{a}\right)
=
\frac{\sqrt{a^4+1}}{a(a^2+1)}-\frac{\sqrt{2}}{2}
+f_3(a)$ (33)
となり、よって (20), (22), (33) より $L_4(a,1)$
\begin{eqnarray*}L_4(a,1)
&=&
-f_1\left(\frac{1}{a}\right) + f_1(a)
\\ &=&
...
...frac{1}{\sqrt{2}}\right)
\right]_{\sin^{-1}(2a/(a^2+1))}^{\pi/2}\end{eqnarray*}
と表されることになる。一般の $L_4(a,A)$ は、(17) より、
\begin{eqnarray*}\lefteqn{L_4(a,A)
=
\sqrt{A}L_4\left(\frac{a}{\sqrt{A}},1\rig...
...}\right)
= \sin^{-1}\left(\frac{2a\sqrt{A}}{a^2+A}\right)\right)\end{eqnarray*}
となる。これが最終的な $L_4$ の表現である。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-12-11