6 最後に

本稿では、曲線長を求める積分の公式を用いて、 実際に具体的ないくつかの関数の曲線長を計算してみた。

本稿の計算でもわかるが、平方根の中に簡単な式が入った計算は実は かなり難しく、平方根がほどけない場合は、楕円積分のように 初等的な関数では表せないものになってしまうことが多い。 だから、教科書などで曲線長の計算をおこなう演習問題では、 例えば $y=(e^x+e^{-x})/2$ のように平方根がほどける問題であったり、 $y=Ax\sqrt{x}$ のように平方根の中が 1 次式になる問題などが 良く出されていて、逆にそれ以外の問題が出されることは 大きな演習書にでもあたらない限りかなり少ないように思う。

よって、通常の教科書の場合は、 例えばより身近な放物線や三角関数などの曲線長を計算する機会や、 その計算を見る機会はほとんどなく、 そういうことに対して疑問を持つ学生はいるかもしれないので、 その意味では本稿はそれなりに意味があるような気がする。

なお、5 節では、唐突に (21) による部分積分と、 (24) による置換を行ったが、どちらも簡単に思いつくものではない。 [1] に書かれている楕円積分の標準形への変換手順では 相当大変そうだったので、[2] に書かれている結果に 合わせたのが (21) による部分積分で、 [1] の演習問題を利用したのが (24) による置換であり、 かなりズルをしたことになっている。 よってなぜこれでうまくいくかに関しては、 私自身今のところ全く理解できていない。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-12-11