4 標準形への変形
本節で、実正規行列 を標準形 (6) に変形する
直交行列 を実際に構成する。
の固有値 (5) に対し、定理 2.2 により、
(8)
とするようなユニタリ行列 が存在する。
このとき の列ベクトルを
(9)
とすると、これらは の単位固有ベクトルで、
の正規直交基底を成し、
(10)
を満たす。よって、補題 3.1 と
より、次がいえる。
(11)
これに対し、まずは複素ベクトル
の
実ベクトルへの取り替えから考える。
固有値
のうち、
重解を
とするとき、
その複素固有ベクトル
は
互いに直交するので線形独立で、その固有値 に対する固有空間
はそれらを含むため、
の次元は 以上となるが、
その次元は
に等しい ([1] の補題 4.1) のでその次元も 以上であり、
から 個の直交する
実単位固有ベクトル
を
取ることができる。
これを実固有値
すべてに対して行えば、
単位ベクトルの実固有ベクトル列
を取ることができる。
同じ固有空間内では直交するものを取ったが、
異なる固有値に対する
同士が直交することも、
次のようにして示される。
のとき、(10), (11) より
なので、
となり、
より
が得られる。
よって
は互いに直交する
実単位ベクトルとなる。
次は、
と
するとき、
の直交性等を示す。
より、(10), (11) を実部、虚部に分けると、
(12)
となる。
さらに、
() は
で
互いに直交する単位ベクトルなので、
より、
(13)
となる。
補題 4.1
-
()
-
()
- に対し、
,
,
-
,
(,
)
証明
1.
、
および (12) より、
となるので、
がわかり、
より
となり、
(13) より、
が
得られる。
2. (12) より、
となり、よって
だから より
となる。
3. に対し、(12)、(13) より、
となり、
(14)
が得られる。(14) で と を入れ替えて (13) を用いると、
(15)
となるから、(14), (15) より
となり、
より
(16)
よって
が得られる。
さらに、(13) と (16) より
(17)
となり
が得られる。
なお、(14), (16) から
となるが、
とは限らないので、
ここから
は得られないことに注意する。
次は
を計算する。
, (12)、(13)、
および (16) より、
となり、
なので、
が得られる。
4. (12) より
となり、よって
(18)
となる。また、
より
(19)
となるので、(18), (19) より
となり、 より
(20)
よって
が得られる。
また、(12), (20) より、
となり、
, よって より
が得られる。
,
とすると、
この補題 4.1 により
は
の正規直交基底となり、
は直交行列で、
より、(6) の に対し が
成り立つことがわかる。
これで、 を元に実正規行列を標準形に直す直交行列 が
構成できたことになる。
竹野茂治@新潟工科大学
2024-04-03