行列式を 列目で展開すると、
(9)
(10)
この展開公式の証明も、帰納法で得ることができる。 なお、行に関する展開公式 (10) は、 列に関する展開公式 (9) と 転置行列に対する定理 2 を組み合わせれば 容易に得られるので、ここでは (9) のみを考える。
(9) はもちろん の場合には明らかに成り立つので、 次では任意の列の展開が可能だとして、 (9) を示すこととする。 なお、 のときは行列式の定義 (1) そのものなので、 の場合を考える。
このとき を 1 列目に関して展開すると、 の 1 列目は、 の 1 列目の 行目以外の成分なので、
(11)
これを、(9) の右辺に代入すると、
ここで、 次の行列式である は、 帰納法の仮定により 列目で展開できるが、 の 列目は の 列目の 行目以外の成分なので、よって、
また、(9), (10) より、 は各列の成分 (または各行の成分) の 1 次式であることが言えるので、 よって、次のことも言える。
は各列 (または各行) に関して線形である。 すなわち、ある列が 倍されれば行列式の値は 倍となり、 ある列が 2 つの列ベクトルの和であれば、 それぞれをその列とした行列式の和になり、 さらにある列の要素がすべて 0 であれば行列式の値は 0 となる。
これにより、行列式を 個の列ベクトルの関数と見た場合、
そのそれぞれに関して線形である、ということになるので、
これを 多重線形性 と呼ぶことがある。
竹野茂治@新潟工科大学