4 証明その 1
まずは典型的な
の場合の証明を紹介する。
この場合に限らず、いずれの場合も証明には基本的に
「コーシーの平均値の定理」を用いる。
それをまず説明する。
より、 は
であるが、もし 、 があって であれば、
となるので、さらに , が で連続であれば
この最後の値は に等しいことになり、
ロピタルの定理が成立することになる。
ただし、この論法では元のロピタルの定理より強い仮定を
いくつか使ってしまっている (が、シンプルな証明の一つと言えるし、
実例ではこれで十分な場合も多い)。
元の条件の下で証明するために、通常の平均値の定理を使うと、
に対して、
となるような , () が取れる。
この式で を に近づけると , は に近づくので
最後の項は に近づきそうだが、 と が揃っていないので、
その極限が に等しいことの保証にはならない。
この , を同じ値に揃えることができる、
というのがコーシーの平均値の定理である。
定理 2
(コーシーの平均値の定理)
, が で連続、 で微分可能で、
かつ であるとき、
となる が 内に少なくとも一つ存在する。
この定理の証明は、
に対して通常の平均値の定理を使えば得られる。
なお、コーシーの平均値の定理の条件にある「」は
外すことができない。例えば、, が、
- は , , では増加、
では減少、 (例えば、
)
- は , , では減少、
では増加、 (例えば、)
のような関数であれば、
であるが、
では、 以外では であり 1 に等しくなることはない。
では となるので、
これがコーシーの平均値の定理の条件を満たさない。
これが、ロピタルの定理 1 の
条件 2 に含まれる「」の由来になる。
このコーシーの平均値の定理を用いて、
の場合の
ロピタルの定理の証明を、
論法で行う。
より、任意の に対して、
であるすべての に対して、
|
(2) |
となるような が取れる。
となる任意の に対して、
コーシーの平均値を用いると、
で
となる が存在する。
よって、(2) より
となる。 は の任意の で、
も任意なので、
これは が存在して であることを示している。
これで、
の場合の証明が終わった。
この証明は、
の場合もほぼ同じであるし、
その 2 つを合わせれば の場合になるので、
これも同様に示されることになる。
これで、, の場合のうち 3 通りのものの証明が終わる。
竹野茂治@新潟工科大学
2015年7月20日