4 一般の指数関数

一般の正の実数 $a$ ($>0$) の実数乗「$a^x$」に相当する $\mathop{\rm pow}(a,x)$ を、 $a=\exp(p)$ となる $p$ に対し、
\begin{displaymath}
\mathop{\rm pow}(a,x) = \exp(px)\end{displaymath} (28)

と定義する。 まず、$a$ に対する $p$ の存在であるが、 3 節、および (26) でみたように、 $\exp(x)$ は増加関数で、(21) より 実数全体から正の実数全体への 1 対 1 の対応を与える。よって、 $a>0$ であれば $a=\exp(p)$ となる $p$ が必ず存在し、 かつただ一つ定まることがわかる。

なお、この $p$$a$ に対してただ一つ定まるので、 そのような $a$ から $p$ への対応を $a=\exp(p)$ の逆関数と呼び、 通常は $p=\exp^{-1}(a)$ のように書くが、$(-1)$ 乗とまぎらわしいので、 本稿ではこれを $p=\ln(a)$ と書くことにする。 これにより、(28) は、

\begin{displaymath}
\mathop{\rm pow}(a,x) = \exp(x\ln(a))\end{displaymath} (29)

と書けることになるが、これは (2) に対応する。 この (28) により、任意の $a>0$, $x$ に対して $a$$x$ 乗に相当する $\mathop{\rm pow}(a,x)$ が定義されることになる。

なお、$p=1$ の場合を考えると、$e=\exp(1)$ とすれば、 $1=\ln(e)$ であるから

\begin{displaymath}
\mathop{\rm pow}(e, x) = \exp(1\cdot x) = \exp(x)
\end{displaymath}

となるので、よって $\exp(x)$ 自身もこの意味で 「$e=\exp(1)$$x$ 乗」に相当するものになっている。

今度はこの $\mathop{\rm pow}(a,x)$ の性質を見ていく。 まず、(28) より、$p>0$ ならば $\mathop{\rm pow}(a,x)$ は増加関数、 $p<0$ ならば $\mathop{\rm pow}(a,x)$ は減少関数であることがわかるが、 $\exp(0)=1$ より、$p=\ln(a)>0$ となるのは $a>1$ のとき、 $p<0$ となるのは $0<a<1$ のときなので、 よって (21) より

の単調性と漸近性が得られる。また、
\begin{displaymath}
\mathop{\rm pow}(a,0) = \exp(0) = 1,
\hspace{1zw}
\mathop{\rm pow}(a,1) = \exp(p) = a\end{displaymath} (30)

も言える。 よって、$x$ が正の有理数 $x=m/n$ ($m$, $n$ は自然数) であれば、 (24) より
\begin{displaymath}
\mathop{\rm pow}\left(a,\frac{m}{n}\right)
= \exp\left(\frac{m}{n}p\right)
= \sqrt[n]{\exp(p)^m}
= \sqrt[n]{a^m}
\end{displaymath}

で、$x$ が負の有理数 $x=-m/n$ であれば、
\begin{displaymath}
\mathop{\rm pow}\left(a,-\,\frac{m}{n}\right)
= \exp\left(-...
...t)
= \sqrt[n]{\frac{1}{\exp(p)^m}}
= \frac{1}{\sqrt[n]{a^m}}
\end{displaymath}

となり、確かに $pow(a,x)$ が通常の「$a^x$」に対応したもの、 すなわち通常の有理数乗を含んでいることがわかる。

また、(25), (27) より、

\begin{eqnarray*}\mathop{\rm pow}(a,x)\mathop{\rm pow}(a,y)
&=& \exp(px)\exp(p...
...x)}{\exp(py)}
\ = \ \exp(p(x-y))
\ = \ \mathop{\rm pow}(a, x-y)\end{eqnarray*}


の通常の指数法則 ( $a^xa^y=a^{x+y}$, $a^x/a^y=a^{x-y}$) が 成り立つこともわかる。

次は、 $\mathop{\rm pow}(a,x)\mathop{\rm pow}(b,x)$ を考える。$p=\ln(a)$, $q=\ln(b)$ とすると、 $a=\exp(p)$, $b=\exp(q)$ であるから、

\begin{displaymath}
ab = \exp(p)\exp(q) = \exp(p+q)
\end{displaymath}

となるので、$p+q=\ln(ab)$ であり、よって、
\begin{eqnarray*}\mathop{\rm pow}(ab,x)
&=&
\exp((p+q)x) = \exp(px+qx) = \exp(px)\exp(qx)
\\ &=&
\mathop{\rm pow}(a,x)\mathop{\rm pow}(b,x)\end{eqnarray*}


の指数法則 ($(ab)^x=a^xb^x$) が成り立つ。 同様にして、$p-q=\ln(a/b)$ より
\begin{displaymath}
\mathop{\rm pow}\left(\frac{a}{b},x\right) = \frac{\mathop{\rm pow}(a,x)}{\mathop{\rm pow}(b,x)}
\end{displaymath}

となること ( $(a/b)^x=a^x/b^x$) も示される。

最後に「$(a^x)^y$」の指数法則、すなわち $\mathop{\rm pow}(\mathop{\rm pow}(a,x),y)$ であるが、 $p=\ln(a)$, $q=\ln(\mathop{\rm pow}(a,x))$ とすると、$a=\exp(p)$, $\mathop{\rm pow}(a,x)=\exp(q)$ となるが、

\begin{displaymath}
\mathop{\rm pow}(a,x)=\exp(px) = \exp(q)
\end{displaymath}

より $\exp(x)$ の単調性から $q=px$ である。よって、
\begin{displaymath}
\mathop{\rm pow}(\mathop{\rm pow}(a,x),y) = \exp(qy) = \exp(pxy) = \mathop{\rm pow}(a, xy)
\end{displaymath}

となり、「 $(a^x)^y=a^{xy}$」に対応するものが得られる。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年2月2日