4 2 回微分して戻るもの

ついでに、次のような問題も考えてみよう。
「2 回微分して元に戻るものは、 y = C1ex + C2e-x の形の式のみ」

この問題は、2 階の (定数係数線形の) 微分方程式

y'' = y (4)
を解けばいいわけであるが、 ここでは、標準的な定数係数線形微分方程式の解法、 およびその理論は用いず、 (4) から直接
y = C1ex + C2e-x (5)
を導くいくつかの方法を紹介する。

(4) の両辺に y' を加えると、

y'' + y' = y' + y

となるが、左辺は (y' + y)' であるから、z = y' + y とすれば、これは

z' = z

を意味する。 2, 3 節の結果により これは z = C1ez を意味するので、よって、
y' + y = C1ex (6)
が得られる。

この (6) を、 1 階線形微分方程式の解法と同様の変形をしてみよう。 (6) の両辺を ex 倍すると、

y'ex + yex = C1e2x

となるが、この左辺は y'ex + y(ex)' = (yex)' に等しい。 (e2x)' = 2e2x なので、この両辺は、

(yex)' = $\displaystyle \left(\vphantom{\frac{C_1}{2}e^{2x}}\right.$$\displaystyle {\frac{{C_1}}{{2}}}$e2x$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{C_1}{2}e^{2x}}\right){^\prime}$

と変形できる。よって

$\displaystyle \left(\vphantom{ye^x-\frac{C_1}{2}e^{2x}}\right.$yex - $\displaystyle {\frac{{C_1}}{{2}}}$e2x$\displaystyle \left.\vphantom{ye^x-\frac{C_1}{2}e^{2x}}\right){^\prime}$ = 0

となるので、(3) によりこのかっこの中味が定数となり、

yex = $\displaystyle {\frac{{C_1}}{{2}}}$e2x + C2

となる。よってこの両辺を ex で割れば

y = $\displaystyle {\frac{{C_1}}{{2e^x}}}$e2x + $\displaystyle {\frac{{C_2}}{{e^x}}}$ = $\displaystyle {\frac{{C_1}}{{2}}}$ex + C2e-x

となり、(5) が得られることになる。

ただ、これはいかにも少し作為的にも見えるが、 (6) を微分方程式として解くのではなく、 もう一本同等のものを導いて利用する、という方法もある。

(4) の両辺から y' を引くと、

y'' - y' = - y' + y = - (y' - y)

となるので、w = y' - y とすれば、これは w' = - w を意味し、 3 節の結果によりここから w = C2e-x 、すなわち
y' - y = C2e-x (7)
が導かれる。 よって、(6) から (7) を引いて 2 で割れば

y = $\displaystyle {\frac{{C_1}}{{2}}}$ex - $\displaystyle {\frac{{C_2}}{{2}}}$e-x

となり、(5) が得られる。

この (6), (7) を導く方法は、 微分演算子 D = ' によって (4) を、

D2y = y,   (D2 -1)y = 0,   (D + 1)(D - 1)y = 0,   (D - 1)(D + 1)y = 0

のように変形した考察、すなわちいわゆる演算子法と実質的に同等である。

竹野茂治@新潟工科大学
2008年7月6日