4 因数分解公式

次は、因数分解公式 (4) の一般化を行う。

$f_n(x)=x^n-1$ とすると、$f_n(1)=0$ なので、 因数定理より $f_n(x)$$x-1$ で割り切れる。その商は、

  $\displaystyle
\frac{f_n(x)}{x-1} = \frac{x^n-1}{x-1}
= x^{n-1}+x^{n-2}+\cdots + x+1$ (11)
となる。なお、この式は、等比数列の和の公式としても知られている。 よって、
  $\displaystyle
f_n(x)
= x^n-1
= (x-1)(x^{n-1}+x^{n-2}+\cdots + x+1)$ (12)
となり、これが (4) の $x^2-1$, $x^3-1$ の因数分解の 一般化である。

さらに、$n=3$ の場合は $g_n(x)=x^n+1$ も因数分解できたが、 これも一般化できる。$n$ が奇数の場合は、

$\displaystyle g_n(-1)=(-1)^n+1 = -1+1 = 0
$
となるので、$g_n(x)$$x+1$ で割り切れる。その商は、
  $\displaystyle
\frac{g_n(x)}{x+1} = \frac{x^n+1}{x+1}
= x^{n-1}-x^{n-2}+\cdots - x+1$ (13)
となる。 これも、初項 1、公比 $(-x)$ の等比数列の和の公式に等しい。 よって、$n$ が奇数の場合は、
  $\displaystyle
g_n(x)
= x^n+1
= (x+1)(x^{n-1}-x^{n-2}+x^{n-3}-\cdots - x+1)$ (14)
となる。なお、$n$ が偶数の場合は、$g_n(x)=x^n+1$ は すべての実数 $x$ に対して $g_n(x)>0$ となるので、 1 次の因数を持つことはない。

(12), (14) を $a$, $b$ に戻すと、

$\displaystyle a^n-b^n$ $\textstyle =$ $\displaystyle (a-b)(a^{n-1}+a^{n-2}b + a^{n-3}b^2+\cdots +ab^{n-2} + b^{n-1}),$(15)
$\displaystyle a^n+b^n$ $\textstyle =$ $\displaystyle (a+b)(a^{n-1}-a^{n-2}b + a^{n-3}b^2-\cdots -ab^{n-2} + b^{n-1})$(16)
となり (15) はすべての自然数 $n$ に対して、 (16) は奇数の $n$ に対して成り立つことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-05-12