5 さらなる因数分解

(11), (13) の商は、 係数を実数の範囲に広げればもう少し因数分解できる。 本節ではそれを紹介する。

まず、$n=4$ の場合。この場合は、(11) は、

$\displaystyle \frac{f_4(x)}{x-1} = x^3+x^2+x+1 = (x+1)(x^2+1)
$
となるので、
  $\displaystyle
f_4(x) = x^4 - 1 = (x-1)(x+1)(x^2+1)$ (17)
のように因数分解される。 ついでに言えば、$g_4(x)=x^4+1$ は 1 次の因数は持たないが、 実数の範囲で次のように 2 次式の積に因数分解される。
  $\displaystyle
g_4(x) = x^4+1
= (x^2+1)^2 - 2x^2
= (x^2+\sqrt{2}\,x+1)(x^2-\sqrt{2}\,x+1)$ (18)

次は $n=5$ の場合。

$\displaystyle \frac{f_5(x)}{x-1}$ $\textstyle =$ $\displaystyle x^4+x^3+x^2+x+1
\ =\
(x^2+1)^2-x^2+(x^3+x)$ 
  $\textstyle =$ $\displaystyle (x^2+1)^2+x(x^2+1) - x^2$(19)
となるので、$p+q = 1$, $pq = -1$ となる $p$, $q$ を取れば、
$\displaystyle (x^2+1)^2+x(x^2+1) - x^2$ $\textstyle =$ $\displaystyle (x^2+1)^2+(p+q)x(x^2+1)+pqx^2$ 
  $\textstyle =$ $\displaystyle (x^2+1+px)(x^2+1+qx)$(20)
と因数分解される。この $p,q$$t^2-t-1=0$ の 2 つの解
$\displaystyle t = \frac{1\pm\sqrt{5}}{2}
$
なので、結局 $f_5(x)$
  $\displaystyle
f_5(x) = x^5-1
= (x-1)\left(x^2+\,\frac{1+\sqrt{5}}{2}\,x+1\right)
\left(x^2+\,\frac{1-\sqrt{5}}{2}\,x+1\right)$ (21)
と分解される。$g_5(x)=x^5+1$ $g_5(x) = -f_5(-x)$ なので、
  $\displaystyle
g_5(x) = x^5 + 1
= (x+1)\left(x^2-\,\frac{1+\sqrt{5}}{2}\,x+1\right)
\left(x^2-\,\frac{1-\sqrt{5}}{2}\,x+1\right)$ (22)
となる。

一般に $f_n(x)=x^n-1$$g_n(x)=x^n+1$ も、 実数の範囲で 1 次式、または 2 次式の積の形に因数分解 できることが知られていて、結果のみ示せば以下のようになる。 $n$ が偶数の場合、$n=2m$ とすると

$\displaystyle f_{2m}(x)$ $\textstyle =$ $\displaystyle x^{2m}-1
\ =\
(x-1)(x+1)\prod_{k=1}^{m-1}\left(x^2-2x\cos\frac{k}{m}\,\pi + 1\right),$(23)
$\displaystyle g_{2m}(x)$ $\textstyle =$ $\displaystyle x^{2m}+1
\ =\
\prod_{k=1}^{m}\left(x^2-2x\cos\frac{2k-1}{2m}\,\pi + 1\right)$(24)
$n$ が奇数の場合、$n=2m+1$ とすると
$\displaystyle f_{2m+1}(x)$ $\textstyle =$ $\displaystyle x^{2m+1}-1
\ =\
(x-1)\prod_{k=1}^{m}\left(x^2-2x\cos\frac{2k}{2m+1}\,\pi + 1\right),$(25)
$\displaystyle g_{2m+1}(x)$ $\textstyle =$ $\displaystyle x^{2m+1}+1
\ =\
(x+1)\prod_{k=1}^{m}\left(x^2-2x\cos\frac{2k-1}{2m+1}\,\pi + 1\right)$(26)
となる。さらに、 $g_{2m+1}(x) = -f_{2m+1}(-x)$ であるから、 $n=5$ のときと同じように $g_{2m+1}(x)$ の因数分解は 以下のようにも書ける。
  $\displaystyle
g_{2m+1}(x)
= x^{2m+1}+1
= (x+1)\prod_{k=1}^{m}\left(x^2+2x\cos\frac{2k}{2m+1}\,\pi + 1\right)
$ (27)
なお、これは、
$\displaystyle \cos\frac{2k-1}{2m+1}\,\pi
= -\cos\left(\pi - \frac{2k-1}{2m+1}\,\pi\right)
= -\cos\frac{2(m-k+1)}{2m+1}\,\pi
$
より (27) から直接得ることもできる。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-05-12