7 漸化式

F_k , G_k のラプラス逆変換を

$$\mathcal {L}$$^-1[F_k] = f_k(t),   $$\mathcal {L}$$^-1[G_k] = g_k(t)

とし、この f_k , g_k に対する漸化式を作って、 そこから f_k , g_k を順に計算する、という方法もある。 漸化式にもいくつかあり、それらをここで紹介し、 計算量の比較などを行ってみる。

まずは、(4) を利用したものを考える。

$$\mathcal {L}$$[f_k] = $${\frac{{1}}{{(s^2+1)^{k+1}}}}$$,   $$\mathcal {L}$$[g_k] = $${\frac{{s}}{{(s^2+1)^{k+1}}}}$$

であるので、(4) より、

$$\mathcal {L} {\frac{{d}}{{ds}}} {\frac{{1}}{{(s^2+1)^{k+1}}}} {\frac{{2(k+1)s}}{{(s^2+1)^{k+2}}}}$$ =

$$\mathcal {L} {\frac{{d}}{{ds}}} {\frac{{s}}{{(s^2+1)^{k+1}}}} {\frac{{1}}{{(s^2+1)^{k+1}}}} {\frac{{2(k+1)s^2}}{{(s^2+1)^{k+2}}}}$$ =

$${\frac{{2(k+1)(s^2+1)-2(k+1)}}{{(s^2+1)^{k+2}}}}$$ =

= - F_k +2(k + 1)F_k -2(k + 1)F_k+1 = (2k + 1)F_k - (2k + 2)F_k+1

よって、

tf_k = (2k + 2)g_k+1,   tg_k = (2k + 1)f_k - (2k + 2)f_k+1

となるので、よって

$${\frac{{2k+1}}{{2k+2}}} {\frac{{t}}{{2k+2}}} {\frac{{t}}{{2k+2}}}$$ (11)

が得られる。f₀ , g₀ は、

f₀ = $$\mathcal {L}$$^-1$$\left[\vphantom{\frac{1}{s^2+1}}\right.$$$${\frac{{1}}{{s^2+1}}}$$$$\left.\vphantom{\frac{1}{s^2+1}}\right]$$ = sin t,   g₀ = $$\mathcal {L}$$^-1$$\left[\vphantom{\frac{s}{s^2+1}}\right.$$$${\frac{{s}}{{s^2+1}}}$$$$\left.\vphantom{\frac{s}{s^2+1}}\right]$$ = cos t

であるから、(11) を用いて順に、f₁ , g₁ , f₂ , g₂ 等を計算できる。 なお、(11) の係数の分母を消すために、 この式の両辺に 2^k+1(k + 1)! をかけると、

2^k+1(k + 1)!f_k+1 = (2k + 1)2^kk!f_k - t2^kk!g_k,   2^k+1(k + 1)!g_k+1 = t2^kk!f_k

となるので、 $\hat{{f}}_{k}^{}$ = 2^kk!f_k , $\hat{{g}}_{k}^{}$ = 2^kk!g_k とすれば、

$$\hat{{f}}_{{k+1}}^{} \hat{{f}}_{k}^{} \hat{{g}}_{k}^{} \hat{{g}}_{{k+1}}^{} \hat{{f}}_{k}^{}$$ (12)

となり、(11) より多少式はやさしくなる。 $\hat{{f}}_{0}^{}$ = f₀ , $\hat{{g}}_{0}^{}$ = g₀ より、 具体的に $\hat{{f}}_{k}^{}$ , $\hat{{g}}_{k}^{}$ を求めてみると、

$$\hat{{f}}_{1}^{} \hat{{f}}_{0}^{} \hat{{g}}_{0}^{}$$ =

$$\hat{{g}}_{1}^{} \hat{{f}}_{0}^{}$$ =

$$\hat{{f}}_{2}^{} \hat{{f}}_{1}^{} \hat{{g}}_{1}^{}$$ =

$$\hat{{g}}_{2}^{} \hat{{f}}_{1}^{}$$ =

$$\hat{{f}}_{3}^{} \hat{{f}}_{2}^{} \hat{{g}}_{2}^{}$$ =

$$\hat{{g}}_{3}^{} \hat{{f}}_{2}^{}$$ =

$$\hat{{f}}_{4}^{} \hat{{f}}_{3}^{} \hat{{g}}_{3}^{}$$ =

$$\hat{{g}}_{4}^{} \hat{{f}}_{3}^{}$$ =

のようになる。

さらに、(12) から $\hat{{g}}_{k}^{}$ , あるいは $\hat{{f}}_{k}^{}$ を 消去して、3 項漸化式を導くこともできる。 (12) より、

$$\hat{{f}}_{{k+2}}^{} \hat{{f}}_{{k+1}}^{} \hat{{g}}_{{k+1}}^{} \hat{{f}}_{{k+1}}^{} \hat{{f}}_{k}^{}$$ = (13)

$$\hat{{g}}_{{k+2}}^{} \hat{{f}}_{{k+1}}^{} \hat{{f}}_{k}^{} \hat{{g}}_{k}^{} \hat{{g}}_{{k+1}}^{} \hat{{g}}_{k}^{}$$ = (14)

のようになる。f_k , g_k の一方のみを計算したい場合は、 これらを用いる方が多少計算は速くなる。 $\hat{{f}}_{0}^{}$ = sin t , $\hat{{f}}_{1}^{}$ = sin t - t cos t であるので、

$$\hat{{f}}_{2}^{} \hat{{f}}_{1}^{} \hat{{f}}_{0}^{}$$ =

$$\hat{{f}}_{3}^{} \hat{{f}}_{2}^{} \hat{{f}}_{1}^{}$$ =

= 15 sin t - 15t cos t - 6t²sin t + t³cos t,

$$\hat{{f}}_{4}^{} \hat{{f}}_{3}^{} \hat{{f}}_{2}^{}$$ =

= 7(15 sin t - 15t cos t - 6t²sin t + t³cos t) - t²(3 sin t - 3t cos t - t²sin t)

= 105 sin t - 105t cos t - 45t²sin t + 10t³cos t + t⁴sin t

のように計算できる。

さて、漸化式は (12) 以外にも成り立つ。 例えば、(5) を用いれば、

$$\mathcal {L}$$[f_k'] = s$$\mathcal {L}$$[f_k] - f_k(0)

となるが、k $\geq$ 0 に対して f_k は t の奇関数である ((13) と $\hat{{f}}_{0}^{}$ , $\hat{{f}}_{1}^{}$ より 帰納的に示すことができる) から f_k(0) = 0 であり、

s$$\mathcal {L}$$[f_k] = s$${\frac{{1}}{{(s^2+1)^{k+1}}}}$$ = $$\mathcal {L}$$[g_k]

なので、

$$\geq$$ (15)

がわかる。同様に (5) より

$$\mathcal {L}$$[g_k'] = s$$\mathcal {L}$$[g_k] - g_k(0)

となるが、(11) より k $\geq$ 1 ならば g_k(0) = 0 であることががわかるので、

$$\mathcal {L} {\frac{{s^2}}{{(s^2+1)^{k+1}}}} {\frac{{(s^2+1)-1}}{{(s^2+1)^{k+1}}}} {\frac{{1}}{{(s^2+1)^{k}}}} {\frac{{1}}{{(s^2+1)^{k+1}}}}$$ =

$$\mathcal {L} \mathcal {L}$$ =

より、

$$\geq$$ (16)

が成り立つ。 しかし、この (15) の両辺の添え字は同じであるし、 (16) にも添え字の同じものが含まれているので、 この 2 本から f_k , g_k を順に計算できる形にはなっていないが、 これらに (11) を組み合わせることで、 一応順に計算できるような形に変形できる。 例えば、(15), (16) に (11) を代入して、

$${\frac{{t}}{{2k}}}$$ f_k' =

$${\frac{{2k-1}}{{2k}}} {\frac{{t}}{{2k}}} {\frac{{1}}{{2k}}}$$ g_k' =

または、$\hat{{f}}_{k}^{}$ , $\hat{{g}}_{k}^{}$ で書き直した式:

$$\hat{{f}}_{k}{^\prime} \hat{{f}}_{{k-1}}^{} \hat{{g}}_{k}{^\prime} \hat{{f}}_{{k-1}}^{} \hat{{g}}_{{k-1}}^{}$$ (17)

を得ることができる。 しかし、この式から f_k , g_k を計算するには、 積分計算が必要になるが、 そこには t^jsin t , t^jcos t の形の積分が含まれるので、 必ずしも計算は易しくはない。

例えば、

$$\hat{{f}}_{1}^{} \int_{0}^{t} \hat{{f}}_{0}^{} \int_{0}^{t} \int_{0}^{t}$$ =

= - t cos t + sin t,

$$\hat{{g}}_{1}^{} \int_{0}^{t} \hat{{f}}_{0}^{} \hat{{g}}_{0}^{} \int_{0}^{t} \int_{0}^{t}$$ =

= t sin t,

$$\hat{{f}}_{2}^{} \int_{0}^{t} \hat{{f}}_{1}^{} \int_{0}^{t}$$ =

$$\int_{0}^{t} \left(\vphantom{t^2\sin t-\int_0^t2x\sin xdx}\right. \int_{0}^{t} \left.\vphantom{t^2\sin t-\int_0^t2x\sin xdx}\right)$$ =

$$\int_{0}^{t} \int_{0}^{t}$$ =

= - t²sin t - 3t cos t + 3 sin t,

$$\hat{{g}}_{2}^{} \int_{0}^{t} \hat{{f}}_{1}^{} \hat{{g}}_{1}^{} \int_{0}^{t}$$ =

$$\int_{0}^{t} \int_{0}^{t}$$ =

= - t²cos t + t sin t

のようになる。

最後にもうひとつの漸化式を紹介する。

$$\mathcal {L} {\frac{{1}}{{(s^2+1)^{k+2}}}} {\frac{{1}}{{s^2+1}}} \mathcal {L} \mathcal {L} \mathcal {L}$$ = (18)

$$\mathcal {L} {\frac{{s}}{{(s^2+1)^{k+2}}}} {\frac{{1}}{{s^2+1}}} \mathcal {L} \mathcal {L} \mathcal {L}$$ = (19)

となるが、以下の公式を使えばここから漸化式が得られる:

$$\mathcal {L} \mathcal {L} \mathcal {L} \mathcal {L} \left[\vphantom{\int_0^tf(t-y)g(y)dy}\right. \int_{0}^{t} \left.\vphantom{\int_0^tf(t-y)g(y)dy}\right]$$ (20)

この

(f * g)(t) = $$\int_{0}^{t}$$f (t - y)g(y)dy = $$\int_{0}^{t}$$f (y)g(t - y)dy

は 畳み込み 演算と呼ばれる。この公式 (20) は、 形式的に以下のように積分の順序交換と置換積分を行うことで得られる:

$$\mathcal {L}$$

$$\int_{0}^{\infty} \left(\vphantom{\int_0^tf(t-y)g(y)dy}\right. \int_{0}^{t} \left.\vphantom{\int_0^tf(t-y)g(y)dy}\right) \int_{0}^{\infty} \left(\vphantom{\int_y^\infty e^{-st}f(t-y)g(y)dt}\right. \int_{y}^{\infty} \left.\vphantom{\int_y^\infty e^{-st}f(t-y)g(y)dt}\right)$$ =

$$\int_{0}^{\infty} \left(\vphantom{\int_0^\infty e^{-s(y+x)}f(x)dx}\right. \int_{0}^{\infty} \left.\vphantom{\int_0^\infty e^{-s(y+x)}f(x)dx}\right) \int_{0}^{\infty} \left(\vphantom{\int_0^\infty e^{-sx}f(x)dx}\right. \int_{0}^{\infty} \left.\vphantom{\int_0^\infty e^{-sx}f(x)dx}\right)$$ =

$$\int_{0}^{\infty} \int_{0}^{\infty} \mathcal {L} \mathcal {L}$$ =

よって、(18), (19), (20) により、

$$\mathcal {L}$$[f_k+1] = $$\mathcal {L}$$[f_k * sin t],   $$\mathcal {L}$$[g_k+1] = $$\mathcal {L}$$[g_k * sin t]

となるので、畳み込み演算による漸化式

f_k+1 = f_k * sin t,   g_k+1 = g_k * sin t (21)

が得られる。これは一見シンプルでわかりやすいので、 これを漸化式として f_k , g_k は順次計算できる、 と書いてある本もあるようであるが、 実際にはこれを用いて計算するのもそれほど易しくはない。

$$\int_{0}^{t} \int_{0}^{t}$$ f₁ =

$$\int_{0}^{t} {\frac{{1}}{{2}}} \left[\vphantom{\frac{\sin(2y-t)}{4}}\right. {\frac{{\sin(2y-t)}}{{4}}} \left.\vphantom{\frac{\sin(2y-t)}{4}}\right]_{{y=0}}^{{y=t}} {\frac{{t}}{{2}}}$$ =

$${\frac{{1}}{{2}}} {\frac{{t}}{{2}}}$$ =

$$\int_{0}^{t} \int_{0}^{t} {\frac{{1}}{{2}}}$$ f₂ =

$${\frac{{1}}{{2}}} \left(\vphantom{\frac{1}{2}\sin t-\frac{t}{2}\cos t}\right. {\frac{{1}}{{2}}} {\frac{{t}}{{2}}} \left.\vphantom{\frac{1}{2}\sin t-\frac{t}{2}\cos t}\right) \int_{0}^{t} {\frac{{y}}{{4}}}$$ =

$${\frac{{1}}{{4}}} {\frac{{t}}{{4}}} \left[\vphantom{-\frac{y\cos(2y-t)}{8}}\right. {\frac{{y\cos(2y-t)}}{{8}}} \left.\vphantom{-\frac{y\cos(2y-t)}{8}}\right]_{{y=0}}^{{y=t}} \int_{0}^{t} {\frac{{1}}{{8}}} {\frac{{t^2}}{{8}}}$$ =

$${\frac{{1}}{{4}}} {\frac{{3t}}{{8}}} {\frac{{1}}{{8}}} {\frac{{t^2}}{{8}}} {\frac{{3}}{{8}}} {\frac{{3t}}{{8}}} {\frac{{t^2}}{{8}}}$$ =

見てわかる通り、三角関数の積を和に直したり、部分積分が入ったりと 結構面倒である。

結局、漸化式で具体的に f_k , g_k を求めるには、 (12), または (13), (14) を用いるのが よさそうである。もちろん、(15), (16) や (21) なども全く意味がないわけではなく、 これが使われる場面もちゃんとあるとは思う。