例えば、
の場合を考える。定理 2 により、
F(s) =
とおくことができる。 ただし、この場合定数 a, b, c, d は複素数であることに注意する。 (9) の右辺を通分すると、その分子は、
F(s) = = + (9)
(as+b)(s-i)2+(cs+d )(s+i)2 | |||
= | (as + b)(s2 -2si - 1) + (cs + d )(s2 + 2si - 1) | ||
= | as3 + (- 2ai + b)s2 + (- a - 2bi)s - b | ||
+ cs3 + (2ci + d )s2 + (- c + 2di)s - d |
という連立方程式を得る。これを解いて a, b, c, d を求めればよいが、 2 本目、3 本目の式を
(10)
と変形すれば、1 本目、4 本目の式より
-2i(a - c) + (b + d )= - 2, - (a + c) - 2i(b - d )= 0
となるので、
-2i(a - c) = 2, - 2i(b - d )= 1
となる。これと 1 本目、4 本目の式を組み合わせれば、結局
a - c = i, b - d =
が得られる。
a = + , b = - 2 + , c = - , d = - 2 -
なお、この結果を見ると c = , d = であることがわかるが、 これは実は (9) から導くこともできる。 F(s) は元々実数係数の有理関数なので、 (9) の共役を考えれば、共役の性質
を用いることにより以下のようになる:
= + , = - , = , =
これも F(s) の部分分数分解であり、この係数は一意に決まるので、 (9) と比較すれば、
= F(s) = = +
となり、よって c = , d = がいえる。 また、このとき F は、
s + = cs + d, s + = as + b
となることになる。最後の分数式は
F(s) = + = + = 2
となるので、元の式と比較すれば、
= =
となるが、 (iz) = - z なので、
{as3 + (- 2ai + b)s2 + (- a - 2bi)s - b} = - s2 + 2
となるので、よって、
a = , 2a + b = - 1, - a + 2b = 0, - b = 2
つまり
a = , a = , b = - 2, b =
と得られる。 こちらの方が (10) に比べて 多少は式の処理はやさしく見えなくもない。
a = + , b = - 2 +
しかし、いずれにせよ、この方法では分母の次数が大きい場合、 例えば (s2 +1)5 のような場合は、計算量が非常に多く、 あまり易しい計算方法ではない。
竹野茂治@新潟工科大学