教員免許状更新講習のページ (担当 竹野)


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はじめに

現在うちの大学でも、主に秋に、 中学校、高等学校等の教員免許状の更新講習を行っていますが、 私も 2011 年から担当しています。

ここには、私が担当する更新講習に関する話 (講習の内容、QandA、リンクリスト等) や資料等を上げておきます。
(11/28 2016 更新)

このページにいくつか数式を直接書いているのですが、 見易くなるように MathJax を使用することにしました。
(06/01 2023 更新)

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講演会 (2023-10-25)

更新講習とは関係ありませんが、2023-10-25 に、 高校の先生方に向けた講演 (新潟県高等学校教育研究会 数学部会 全県研究協議会) を行うことになりました。 その講演会の資料などをここに置きます。

また、講演会で質問されたことへの補足資料などを以下に紹介します。


(10/25 2023 更新)

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更新講習の内容

現在、私は 2011 年から以下のタイトル、資料で更新講習を行っています。

かなり広いタイトルのためか、 内容に関してかなり期待して来られる場合もあるようなのですが、 現在の詳しい内容は具体的には以下の通りです。

  1. ベクトルの内積・外積 (内積や外積は誰が考えたのか、その経緯は、 「内」「外」の意味は)
  2. e と自然対数 (e はどこからでてきたのか、なぜ「e」と名付けられたのか、 なぜ底が e の対数を「自然対数」と呼ぶのか)
  3. 斜円錐の側面積 (斜円錐の側面積は、直円錐の側面積と同じ式で求められるか)

いずれも実際に私が学生、教員、知人などから質問を受けた話で、 調べるのがあまり易しくなく、 かつその内容がやや深い話であったり、 歴史的に意外な経緯をたどったりしているものを取り上げて 解説しています。

最近は、これらに、過去の講習会で出た疑問なども少し加えて話をしています。 上の資料でも、今年は過去の質問の一覧や、懸垂線に関する章を追加しています。
(12/04 2018 更新)

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連絡事項等

(11/28 2016 更新)

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Q and A

ここに、私が担当した過去の更新講習に関する質問などを上げていきます。

また、講習が私が実際に受けた質問をネタにしたこともあり、 講習を受けていただいた先生方からも、先生方がお持ちの質問や、 生徒から受けた質問などをいくつかお聞きしました。

それらに対する回答も上げておきますが、 あくまで私の個人的な意見でしかありません。

なお、以下簡単にセクションに分類していますが、 それほど厳密なものではありません。

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Q and A の一覧


Q and A の回答

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1. 更新講習自体に関する質問


Q 1.1. 学習指導要領の変更点について解説してもらえないか

A 1.1.

教育の専門家の講習ならばそういうものもあるかもしれませんが、 私は数学の専門家の方なので、ちょっとそれは難しいです。


(01/18 2016 更新)

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Q 1.2. 中学校教員は対象ではないのか

A 1.2.

以前は、対象は「中学校、および高等学校の数学教員」としていたのですが、 上記の通り、内容はほぼ高校以上の数学の話なので、 中学校の教員から「内容が中学校教員にはやや合わない」という意見があり、 それで現在は「高等学校の数学教員のみ」を対象としています。


(01/27 2016 更新)

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2. 数学の教え方に関する質問


2-A. 数式や記号の読み方/書き方に関する質問


Q 2-A.1. y=a/x は 1 次式と呼ばないか (2012)

A 2-A.1.

確かに初学者はそう考えてしまうのかもしれませんね。 敢えて言えば (-1) 次式ですかね。

なお、「一次式」は、多くの場合単純に次数が 1 であるというだけでなく、 「線形」「直線的」であることも意味しています。 x に対する y の増え方が一定である、という点が重要で、 それは明らかに他の関数、 特に y=a/x などとは違っている点だと思います。


(01/20 2016 更新)

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Q 2-A.2. 内積の「・」を「○」の形で書いてはいけないか (2015)

A 2-A.2.

適当な記号がないので、大きな○で表示されていますが、 元の質問は、黒板で内積の間の点を書くとき、 丸を塗り潰す (円盤にする) か、塗り潰さない (円周だけ書く) か、 という話です。 塗り潰さずに (円周だけ) 板書したら、 生徒に「その書き方はおかしい」と言われたそうです。

その場におられた高校の先生方に聞いてみたのですが、 全員塗り潰すということでした。 多分教科書に合わせておられるのだろうと思いますが、 ということは、塗り潰す方がいいんでしょうかね。

ちなみに私はどちらかというと塗り潰しません。 黒板で点だけ書くと、点なのかゴミなのか区別がしにくいので、 どちらかというと少し大きめに内積の点を書きます。 そうすると中を塗り潰すのが面倒なので、円周だけ書いてます。

高校の先生だとそうはいかないかもしれませんが、 数学の記号は、中学、高校の教科書を離れると、 意外に統一されていませんし、 国によっても使う記号は違います。 よって大学は少しいいかげんでも許されるかと思います。


(01/21 2016 更新)

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Q 2-A.3. 高校のベクトルの内積の記号は色々あったような気がするが変わっているのか (2016)

A 2-A.3.

私が高校の頃の「数 IIB」の参考書を見ると、 「\(\vec{a}\cdot\vec{b}\)」 の書き方以外に、「\((\vec{a},\vec{b})\)」と書くものもあります。 実際、こう書く本もある、という紹介がされていますので、 当時の高校の教科書では、この 2 種類の書き方が使われていたようです。

日本のベクトルの教育に関する歴史については、以下に詳しく書かれています。

特に後者の方に高校でのベクトルの教育の話が書かれています。 ベクトルの記号と内積の記号については、要約すると以下のようです。

「昭和 50 年代以降」の学習指導要領というと、 「数学 IIB」から「代数・幾何」「基礎解析」 に変わったころの指導要領です (cf. 高等学校学習指導要領 昭和53年(1978)改訂版 https://www.nier.go.jp/guideline/s53h/chap2-3.htm) ので、 多分その「代数・幾何」の頃から 「\(\vec{a}\cdot\vec{b}\)」に統一されていったのではないかと想像します。
(12/28 2016 更新)

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Q 2-A.4. log は英語圏でも「ログ」と読むのか (2016)

A 2-A.4.

数式の英語読みには、 「意味で読む読み方」と「記号としての読み方」の 2 種類があるような気がします。 例えば分数でも、「5 分の 3」(3/5) は、 英語の授業では「three fifth」と教わりますが、 「three divided by five」(割算的な表現) という言い方もしますし、 より記号的な「three over five」「three by five」といった読み方もされます。

さて \(\log\) ですが、 例えば「\(\log_2 8\)」をどう読むかについては、

を見ると「log (of) eight to the base two」、 あるいは「logarithm (of) eight to the base two」と書いてあります。 これは多分ある意味で正式な読み方なのだと思います。

一方、YouTube などで参照できる「数学の講義」の動画を見ると、 上記の読み方の他に、「log base two (of) eight」という読み方もあるようです。 英語版の Wikipedia などには、上で紹介したもの以外にも 「The base two logarithm of eight」という読みも紹介されています。 また、単に「log eight base two」という読みもあるようです。 これらはどちらかと言えば、 日本の「ログにのはち」に近い記号的な読み方だと思います。

たくさんその記号がでてくる場面では、 読みが徐々に記号的になるのは、 どの国の言語であるかに関わらず、ごく自然なことだと思います。
(12/27 2016 更新)

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Q 2-A.5. ∫ dx の記号を使うことのいい説明は (2017)

A 2-A.5.

質問者も当然ご存知だったようですが、 この「\(\int\ dx\)」(インテグラル) の記号は定積分から来るもので、 確かに高校ではこの説明がしにくいところがあります。

積分 (不定積分と定積分) の導入の仕方には、 大きく以下の 2 通りがあります。

大学の教科書は後者が多いのですが、高校で前者が多いため、 その折衷案を採用しているものや、 大学の教科書でも前者を採用している場合があります。 後者は歴史的な流れとも合います。

元々「\(\int f(x) dx\)」は、\(f(x)\) (= グラフの高さ) と \(dx\) (= \(x\) の小さい変化) をかけたものを加える (= \(\int\)) ということを表す式で、 すなわちそれは定積分の区分求積を意味しています。 よって、高校流の積分の導入の仕方では 確かにこの記号の意味の説明が難しいと思います。

地道な方法としては、 上の大学流の流れの話をざっとしてあげて、 そういうところから来ているんだという説明をすることくらいでしょうか。 私も授業では、ざっとだいたいそういう話をしています。 参考までに、手書きで汚ないですが、その際の配布資料を以下に置きます。

なお、工学の専門書では、物理量や工学的な量を 定積分で表す場面がかなり出てきます。 その際には定積分の記号の意味を知っている必要がありますので、 こういう見方ができることは工学ではかなり重要だと思います。
(02/09 2018 更新)

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Q 2-A.6. a というベクトルを呼ぶときは「ベクトル a」 「a ベクトル」のどちらが普通か (2018)

A 2-A.6.

確かに、私もどちらも聞いたことがあります。

ただ、例えば、「点 A」とは言いますが、「A 点」とはあまり言いません。 「直線 l」とは言いますが、「l 直線」とはあまり言わないような気がします。 そこからすると「ベクトル a」の方が自然な気がします。

これは私の想像ですが、ベクトルの場合、 「位置ベクトル」や「方向ベクトル」のように、 「ベクトル」の前になんらかの言葉が付く用語も普通に使われているので、 「a ベクトル」という言い方もあまり不自然に感じずに 使われしまうのかもしれません。 または、なんらかの歴史的な理由でもあるのかもしれませんが、 そこまではわかりません。
(12/04 2018 更新)

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Q 2-A.7. 2 進法の「10101(2)」はどう読めばよいか (2018)

A 2-A.7.

これは、2 進法の「10101(2)」を、「いちまんひゃくいち」と読むか、 「いちぜろいちぜろいち」と読むか、という話ですが、 これは、2 進法の「10(2)」を「じゅう」と読むかどうかに帰着されそうです。

もちろん、読む側と聞く側の合意があれば「10(2)」を「じゅう」と読んでも、 「いちぜろ」と読んでも構わないのですが、 我々は普段 10 進数で生活しているので、 「じゅう」というとつい「きゅう (9)」の次の数と思いがちなので、 「いちぜろ」のように敢えて違う読み方にするのは意味があると思います。

また、コンピュータなどで良く使われる 16 進数の場合は、 「ab(16)」などという数値がでてきますが、これは「a(16) = 10, b(16) = 11」 で、よって 10 進数の 10×16 + 11 = 171 という数を意味します。 「10(2)」を「じゅう」と読むなら、 「ab(16)」も「えーじゅうびー」と読むことになりますが、 やや読みにくそうですし (アルファベットと和語が混ざる)、 そういう読み方をしているのを聞いたことはありません。

それに、2 進数はすぐに桁が大きくなるので、 一々位に名前をつけた読み方をすると読み上げるのがかなり大変です。

ということで、私は「いちぜろいちぜろいち」と読む方が良さそうに思いますが、 他の講義参加者もほぼそういう意見のようでした。
(12/04 2018 更新)

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Q 2-A.8. d2y/dx2の 2 が違う場所にあることのよい説明は (2018)

A 2-A.8.

これは、多分ご存知だと思いますが、 意味があってそのような書き方になっています。

私も微積分の講義で説明していますが、2 階導関数は

\(\displaystyle y'' = \frac{dy'}{dx} = \frac{d(\frac{dy}{dx})}{dx} = \frac{d}{dx}\left(\frac{dy}{dx}\right)\)
であり、このかっこを省略しようとすると、 分子は、\(d(dy) = ddy\) となって \(d\) が 2 つあるように見えるから 「\(d^2y\)」と書くようにした、 一方分母は、\(dx dx\) となって \(dx\) が 2 つあるように見えるから 「\(dx^2\)」と書くようにした、 というのがこの記号の由来になると思います。

なお、数学ではあまり「単位」は扱わないことが多いのですが、 この高階導関数の表記法は、 その「単位」が何であるかも示す記号になっています。 \(\frac{d^2y}{dx^2}\) の分子の \(y\) には指数がついてないので、\(y\) が一つだけのように見えますが、 分母は \(dx\) に 2 乗がつくので \(x\) (らしきもの) が 2 つかけられているように見えます。 それが、\(y''\) の単位が丁度 「\((y\ の単位)/(x\ の単位)^2\)」 であることをちゃんと表しています。 そういう話、例えば加速度などを例にしてセットで教えるといいかもしれません。
(12/04 2018 更新)

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2-B. いい説明方法に関する質問


Q 2-B.1. (マイナス)×(マイナス)=(プラス) のいい説明は (2012)

A 2-B.1.

これは昔からの難題ですね。 マイナスを「裏返す」と考えるなど、 色々な工夫が昔から考えられている問題です。

多分その辺りは、中学校の教科書、 参考書あたりにいい説明があるでしょうし、 数学教育の本や雑誌でも何度も取り上げられているのではないでしょうか。 残念ながら私はあまりその辺りは詳しくはありません。

ただ、「マイナスの値をかけ算する必要性」を考えると、 そういう例は作れそうな気がします。 それが理解できない例として、以下のようなものを見たことがあります。

プラスを財産、マイナスを借金と考えると、 借金と借金をかけるとなぜ財産になるのかわからない
けど、これは全く見当違いです。 それはプラスとプラスのかけ算だとしても 「貯金と貯金をかける」ことには全く意味がないからです。

お金にかけることがあるとすれば、 品物の個数であるとか、 借金や貯金の回数であるとかでしょうか。 けど、「回数」や「個数」は基本的に負の値にはなりませんので、 ちょっと説明には使いにくいですが、例えば以下のように考えれば使えそうです。

1000円札のお金は、持っていると得なので「+1000円券」と考え、 それに対し 1000円の物をお金なしで買ったときの請求書は 持っていると損 (借金) なので「-1000円券」と考えます。 中学生に「請求書」が難しければ直接借金の「借用書」と考えてもいいでしょう。

そして、それらがすでに手元に何枚かずつあるとします。 このとき、それらの券を n 枚もらう、ということを考えます。 例えば

となり、「p 円券を n 枚もらう」場合は、 常に「財産は pn 円増える」と計算できることになります。

この「n 枚もらう」の反対に、 「他人に n 枚あげる」場合も、 「(-n) 枚もらう」と考えることができます。例えば、

のようになります。 この最後のものを「財産が pn 円増える」と計算するなら、 「(-1000) × (-3)」は「+3000」と見るのが自然なわけです。

このように考えれば、ほかにも身近な事例は色々あるだろうと思いますが、 お金の話は割と食いつきが良く、理解しやすいかもしれません。


(01/26 2016 更新)

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Q 2-B.2. e ってそもそも何かと良く聞かれる (2012)

A 2-B.2.

例えば以下をご覧ください。


(01/21 2016 更新)

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Q 2-B.3. 「x2+x+2<0 を解け」という問題に 「解がない」という答えはおかしいと言われた (2012)

A 2-B.3.

「解集合を求めよ」という意味では、 「解け」で「解がない (=空集合)」も数学的には許容できると思いますが、 確かに通常「解け」という言葉からは「解はちゃんとある」 と感じる人も多いでしょうから、「解がないというのが答」、 と言われるとだまされたような気がするかもしれません。 特に初学者、より一般人に近い人を対象と考える場合は 注意がいるかもしれませんね。

なお、この点では、日本語は「空」という言葉への 連続性が低いような気もします。 日本語では「2 個ある、1 個ある」とは言いますが、 「0 個ある」という言い方はあまりせず、 否定文である「ない」という言い方をするのが普通ですが、 英語では、否定文というよりも「There is no pencil.」といった、 「0 個のものがある」表現も良く使われます。 そういう文化だと、もしかすると「ない」という状態も 自然に例外にはなりにくいかもしれませんが、 日本は「ない」という状態はかなり「例外」と感じる人が多いのかもしれません。

実は自然数にも 0 を自然数に入れる流儀と入れない流儀があって、 日本の教育現場では 0 は自然数に入れない流儀が採用されていますが、 日本人にはその方が自然なのかもしれません。

なお、解がないような問題の場合は、特に対象者によっては、 単に「解け」ではなく、「解があればそれを求めよ」 という表現を使うことも少なくないかもしれません。


(01/20 2016 更新)

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Q 2-B.4. 0 で割るのがいけない等のいい説明は (2014)

A 2-B.4.

これは、ほかの方にも振ってみたのですが、 連続的な話 (極限の話) で説明をしてくださった方がいらっしゃいました。 つまり「1÷0 は無限大」という話です。

1÷0.1 は 10、1÷0.01 は 100、1÷0.001 は 1000、 ということを繰り返すと、1÷0 は無限大になる、 だから 0 や普通の数ではないですよ、という話です。

極限を用いない整数、有理数だけの世界でも、0 で割ることはいけませんが、 それはむしろかけ算で説明ができます。

まず、\(0\times n\) は常に 0 になります。 それは分配法則から導かれ、 「\(0\times n = (a-a)\times n = a\times n - a\times n = 0\)」 となります。 もし、\(n\) が 0 でないとき、「\(n\div 0 = p\)」とすると、 「\(n = 0\times p\)」となってしまい、 よって \(n = 0\) となってしまうことになります。 だから「\(n\) が 0 でないとき」は 「\(n\div 0\)」があると困ります。

ちなみに、この論法では、\(n\) が 0 のときは、 「\(0\div 0 = p\)」とすると、 「\(0 = 0\times p = 0\)」となるので、矛盾はありません。 ただし、この場合 \(p\) が積から決まらないので、 \(p\)、すなわち \(0\div 0\) は「不定」となります。

最近の中学校の教科書でも、 このような説明を採用しているものがあるようです。


(01/20 2016 更新)

追加ですが、2017 年度も似たような質問がありました。 「分母が 0 だと分数は値なし、分子が 0 だと分数は 0、 ということをわかりやすく伝えるには」という話です。 確かに、うちの学生もこの両者を間違えることがあります。

これも、例えば上の極限の話で説明はできるかもしれませんね。 例えば、2/0.1 = 20/1 = 20 だが、0.1/2 = 1/20 = 0.05、 2/0.01 = 200/1 = 200 だが、0.01/2 = 1/200 = 0.005、 といった感じです。

ただし、いざというときに学生がこれで思い出せるかが微妙なところです。 何か記憶に残る図のようなもので説明できるといいのかもしれませんが、 ちょっと思いつきません。 何かいいものを思いついたら更新したいと思います。
(12/04 2017 更新)

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Q 2-B.5. axx が実数の場合のいい説明は (2014)

A 2-B.5.

高校の教科書では、確かに無理数の場合は有理数の極限として定義しますが、 負の整数や有理数の場合の指数の拡張に比べると 今一つピンとこない定義かもしれません。

大学 (数学科) ではもう少し厳密にやります。 例えば、無理数に対する指数関数の値を、 その無理数に収束する有理数列に対する指数関数の値の極限で定義する場合、 その極限がまず存在することを示さなければいけません。 そのため、例えば

  1. 有理数の指数に対して指数関数が単調であることなどを示し、
  2. 無理数に収束する有理数の増加数列に対する指数関数の値の極限で 無理数の指数関数値を定義し、
  3. 同じ無理数に収束する他の有理数列でも同じ値に収束することを示し、
  4. 指数関数の連続性を示すことで他の任意の数列でも同じ値に収束することを示す

といった流れを取ったりします (最後は必ずしも必要ない)。 実際、「無理数乗」の指数が存在することは、 実数自体の定義 (実数の完全性など) をちゃんとやった上でないと説明できない話で、 厳密には高校ではまともには説明できません。 となると、どうしてもある程度はごまかすしかなさそうな気がします。

なお、他にも指数関数の定義としては、

などという筋もあります。 いずれも「無理数乗」には触わらずに指数関数を定めるものですが、 実は歴史的にはむしろこのような方法が取られたりしたようです。


(01/21 2016 更新)

追加ですが、以下の本には、いわゆる高校の教科書流の 「有理数乗の極限」による一般の実数乗の定義が、 厳密に書かれています (第 3 章、§3)。

しかしそれには実数論も必要で、かなり難しいので、 上の最後の方法 (自然数乗と極限のみを用いる定義) による指数関数の定義の話を以下にまとめてみました。 そちらも参考にしてみてください。


(02/02 2017 更新)

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Q 2-B.6. 1 が素数でないことのいい説明は (2014)

A 2-B.6.

例えば以下をご覧ください。


(01/21 2016 更新)

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Q 2-B.7. 物理を履習していない生徒へ内積の図形的な意味を説明するには (2016)

A 2-B.7.

「Q 3-A.2. 内積の図形的な定義式は何に使われるか」 (2012) では確かに物理的な説明をしていますね。 では物理ではない説明を一つ紹介します。

内積の一つの主要な用途は「成分計算」です。 \(\vec{a}\) というベクトルに対して、 ある方向の単位ベクトル \(\vec{e}\) があったときに、 \(\vec{a}\) を \(\vec{e}\) 方向と \(\vec{e}\) に垂直な方向に分解したときに、 その \(\vec{e}\) 方向の成分は、\(\vec{a}\) と \(\vec{e}\) の内積 \(\vec{a}\cdot\vec{e}\) により求められます。 「正射影」という用語もほぼこのことを指します。

CG (= コンピュータグラフィックス) ではそういう使われ方をしますし、 少し話はそれますがその他にもこういう使われ方はよく行われています。

内積は、2, 3 次元のベクトル空間だけでなく、 無限次元のベクトル空間でも定義されます。 例えば関数を三角関数の無限級数で表現するフーリエ級数も、 関数空間という無限次元空間空間内の、 三角関数という無限個の軸に対する成分 (フーリエ係数) の計算と見ることができ、 それが無限次元空間の内積による成分計算になっています。

フーリエ級数、およびその連続化であるフーリエ変換は、 オーディオ機器の音声処理、電波の信号処理などに使われていて、 今の時代はスマホや音楽端末など、 日常的にいたるところでそれらが行われています。 音声信号や電波信号から特定の周波数を得たり削除したりする作業は まさに内積を計算することに相当します。 つまり、ある意味では「身の回り内積だらけ」といってもいいでしょう。
(12/28 2016 更新)

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Q 2-B.8. 必要条件、十分条件のいい説明は (2016)

A 2-B.8.

p→q」によらない、いい説明はないか、という話でしたが、 私も高校生の頃はそのどちらであるかという問題は苦手だったので、 やはり矢印を書いて判断していました。

「必要」「十分」という言葉の説明は、 残念ながら教科書通りのものしか思いつきませんが (p が成り立つには q が成り立つことが必要、 q が成り立つには p が成り立てば十分)、 もちろん最初はこれ、および例で説明する必要はあるとは思います。 ネットでも、苦労している人は多いのか色々なサイトで情報がみつかりましたが、 ほぼそういった説明で、これというものはないようです。

なお、言葉や意味だけで判断しようとすると、 命題によっては判断がかなり難しい場合もありますし、 日本人は論理的にそういうことを考えることが苦手と言われていますので、 むしろちゃんと「矢印を書いて判断する」のは、 個人的には非常にいい方法なのではないかと思います。

なお、単純な覚え方としては、講義の際にもお話ししましたが、

というものがあります。
(12/28 2016 更新)

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Q 2-B.9. 等式の両辺を定数でかける、割る作業に「移項」のようないい言葉はないか (2016)

A 2-B.9.

もしかしたら中国語にはそれに相当する言葉があるかもしれませんが、 よくわかりません。 「移項」という言葉はヨーロッパの方では 「代数学」という言葉の語源になっている位なので、 特別に扱われているのかもしれませんね。

ところで、この質問は、方程式を解く学生が、

3x - 5 = 2
3x = 2 + 5
3x = 7
x = 7 - 3
のように、割る作業でも「移項してしまう」間違いをすることがあるので、 それで「移項」同様の言葉があれば、ということでした。 左辺から右辺に文字などを移動する際の間違いですが、 確かにそういう間違いはありますね。

等式の変形で「左辺から右辺へ数字を移動する」と考えると、

A + p = B   →   A = B - p (符号が変わる)
A - p = B   →   A = B + p (符号が変わる)
A p = B   →   A = B / p (逆数になる)
A / p = B   →   A = B p (逆数になる)
という形になりますが、 このように考えていると上のような間違いをしやすいような気がします。

むしろ上のような間違いをしやすい学生には「移項」、 すなわち数を移動させる、と考えるよりも、 両辺に同じ数を足す、同じ数を引く、同じ数をかける、同じ数を割る、 と考えさせる方が良さそうな気がします。

A + p = B   →   A + p - p = B - p (両辺から p を引く)   →   A = B - p
A - p = B   →   A - p + p = B + p (両辺に p を足す)   →   A = B + p
A p = B   → A p / p = B / p (両辺を p で割る)   →   A = B / p
A / p = B   → (A / p) p = B p (両辺を p 倍する)   →   A = B p
まあ最終的には、慣れてもらうしかないとは思います。
(12/28 2016 更新)

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Q 2-B.10. 分数を足すときの通分や、分数の割り算の計算法 を分かりやすく教えるには (2016, 2017)

A 2-B.10.

これは数学というよりは算数で、 小学校教育でさんざん語られる主要なテーマでしょうから、 私などが答えるより算数教育の本を見た方がためになると思いますが、 少し個人的な意見を紹介します。

私が中学生位のころ、小学生の妹に分数を聞かれて教えたことがあります。 相手が妹だったこともあり、 当時の私は全く教育的ではなく、 なぜこんな簡単なことがわからないんだ、 という調子で教えていた (叱責していた ?) ので、 結局のところ「数学が苦手」な妹を一人作っただけになってしまいました。

その頃の私は、分数の計算は、理屈ではなく、 ほぼ機械的にやっていて、 だから「なぜこんな簡単なことがわからないんだ」というのは、 むしろ「なぜこんな簡単な技術が使えないんだ」 という気持ちだったんだろうと思います。 その妹が「分数計算の理屈がわからないのか」 それとも「技術が身についていないのか」という違いは、 当時の私には認識できていませんでしたが、 特に高校生等に対して分数の間違いを直す場合に、 その 2 つは正しく区別する必要があるように思います。

大学生の分数計算の間違いで特に多いのは、 文字式が入った分数式の間違いです。 その場合、まず普通の数の分数ならできるのかを確認し、 文字式が入った場合の分数も、 数字だけの分数の場合と同じ計算をするのだ、 ということを正しく認識させるのが早道と考えて教えています。

さて、元の質問の直接の回答も一応示しておきます。 一つの手として、多分学生は分数よりも小数の方が認識しやすいので、 小数化して話をすると受け入れやすいのでは、と思います。 例えば通分の方は、「1/10 + 2/5」を 「3/15」とやってはいけない、 それは、「1/10 + 2/5 = 0.1 + 0.4 = 0.5」となってしまって、 「3/15 = 1/5 = 0.2 に等しくならないから」といった感じですし、 分数の割り算の方は、「3÷(2/5)」は「3÷0.4 = 3/0.4 = 30/4 = 15/2」 だから「3×(5/2)」と同じになるよね、といった感じでしょうか。 こんなところでどうでしょう。
(12/04 2017 更新)

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Q 2-B.11. 平方根の値の求め方はどのように教えたらいいか (2017)

A 2-B.11.

これは、\(\sqrt{2}\)、\(\sqrt{3}\) の値を生徒はなんとなく知っているが、 それ求め方はどのように教えたらいいか、といったような話のようでした。

今は電卓があるので、昔あった計算尺もなくなりましたし、 開平法も教えなくなったようです。 ただ、電卓があっても簡単な筆算は教えているわけですから、 開平を教えても悪いことはないですよね。

ただ、開平はぱっとみて、なぜそれで求まるかが あまりわかりやすくはない方法ですので、 教える際も少し面倒ですね。

開平に寄らずに考えてみると、 単に\(\sqrt{2}\) が \(1.4142156\cdots\) であることを実感してもらいたのであれば、 単純に電卓で \(1.4142156\) を 2 乗してもらう、 あるいは筆算で 2 乗を計算してもらうという手があります。

また、\(\sqrt{2}\) の値を知らずにそれがどれくらいであるかを調べる場合も、 電卓の「平方根機能を使わず」にその数値を探してみる、 という手があります。 つまり、\(1<\sqrt{2}<2\) であるから \(1.2^2=1.21\) から始めて、 \(1.2^2=1.44\), \(1.3^2=1.69\), ... と順に計算することで \(1.4<\sqrt{2}<1.5\) を見つける、 さらに \(1.41^2,\ 1.42^2\) を計算し、 \(1.4<\sqrt{2}<1.42\) を見つける、といった実験を行う方法です。

他愛ない実験ですが、案外学生は面白がってやってくれるかもしれません。
(02/09 2018 更新)

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Q 2-B.12. 組立除法がなぜそうなるかの易しい説明は (2017)

A 2-B.12.

組立除法は、通常は \(x\) の多項式を \((x - a)\) で割算する際の商と余りを簡単に求める方法ですが、 あのように簡単に計算して求まるポイントは 2 つあると思います。

例えば筆算の 1 段の計算を考えると、上の性質により、 例えば \(px^2\) を \((x - a)\) で割算してみると、

\(px^n = px^{n-1}(x-a) + apx^{n-1}\)
となって \(px^{n-1}\) が商、 \(apx^{n-1}\) が今回の余りで次の \(x^{n-1}\) に追加される部分になるわけですが、つまり、

  1. 商の \(x^{n-1}\) の係数は、 \(x^n\) 次の係数である \(p\) 自身
  2. 次の次数に追加される \(x^{n-1}\) の係数は、 \(x^n\) 次の係数 \(p\) の \(a\) 倍

であることがわかります。この前者が組み立て除法の 3 段目に書くもの、 後者が 2 段目 (3 段目の右斜上) に書くものに対応しています。

通常の筆算では引算を行ないますが、 組立除法では「\((x - a)\)」の割算としていることで それを足算に変えていて、また \(x\) の係数が 1 であることで 商と余りの計算が易しくできるようにしているわけです。

上のことを踏まえて、実際の筆算と比較しながら考えると 納得できるのではないでしょうか。

なお、ネットを検索すると、 2 次式以上の多項式での割算に対する組み立て除法なんてのも見つかります。
(02/15 2018 更新)

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Q 2-B.13. 0!=1 のよい説明の仕方は (2018)

A 2-B.13.

もちろんこれは「定義」に過ぎないので、 そうつきはなしてしまうのも一つの手ですが、 当然こう考えるのが自然であるという理由があってそうなっているので、 それでこう決めているんだよ、という説明がしたいところです。

私は、0 乗や (-1) 乗を説明するときも、 逆の方をたどる形で説明することが多いのですが、 それと同じようにしたらいかがでしょうか。 例えば、nn! の表でも書いて、n! の方は、

1! = 1
2! = 2 = 1!×2
3! = 6 = 2!×3
4! = 24 = 3!×4
5! = 120 = 4!×5
...
のように、次々一つずつ増やした数をかけていって次の階乗の値が作られる、 よって、それを逆に辿ると、
4! = 5!÷5 = 120÷5 = 24
3! = 4!÷4 = 24÷4 = 6
2! = 3!÷3 = 6÷3 = 2
1! = 2!÷2 = 2÷2 = 1
0! = 1!÷1 = 1
といった感じです。

あとは、0! = 1 とすると都合がいい 「状況証拠」のような事例 (組み合わせの計算など) を紹介することくらいでしょうか。
(12/04 2018 更新)

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Q 2-B.14. グラフの平行移動 y - q = f(x - p) の簡単な説明は (2018)

A 2-B.14.

これは、プラスの方への平行移動なのに、なぜマイナスになるか、 というところがわかりにくいわけですが、 質問としてありがちなもののようで、 インターネットで「平行移動 なぜマイナス」と検索すると、 相当数のサイトが引っかかります。 それらを見ると、だいたい以下のような説明が多いようです。

  1. 移動元を (x,y), 移動先を (X,Y) として、 y = f(x), X = x + p, Y = y + q から Y - q = f(X - p) を導くもの
  2. y + q = f(x + p) ではおかしいことを例で示すもの
  3. y - q = f(x) はマイナスではなく、 y = f(x) + q だからプラスだ、とするもの (ただし x の方が説明しにくい)
  4. 逆に x 軸が -p, y 軸が -q 移動することと同じだから、とするもの
  5. y = f(x - p) のグラフの x での y の値と、 y = f(x) のグラフの x - p (p だけ左) での y の値が等しい、のようにするもの (q の方も同様)

多分、標準的なのは 1. でしょう。サイトでも 1. の説明が一番多いです。 けど、多分一番わかりやすいのは 5. ではないでしょうか。 そして、さらにこれを表にして、以下のようなものを書けば、 よりわかりやすいのではないかと思います。 例えば、y - 3 = f(x - 5)、すなわち y = f(x - 5) + 3 のグラフを考えます。

x 0 5 10
x - 5 -5 0 5
f(x - 5) f(-5) f(0) f(5)
f(x - 5) + 3 = y f(-5) + 3 f(0) + 3 f(5) + 3

1 段目の x に対して、 4 段目の値を y とするのが y = f(x - 5) + 3 のグラフですが、 2 段目は 1 段目より 5 だけ左の値で、 3 段目はその 5 だけ左の値の f(x) の値を取っています。 つまり、グラフとしては 3 段目のグラフ y = f(x - 5)y = f(x) のグラフを 5 だけ右に移動したことになります。

そして 4 段目は 3 段目の値を 3 だけ増やしているので、 さらに上に 3 移動することになります。

同様に、私は例年、 y = sin ax, y = a sin x, y = sin(x - a) のようなグラフの説明で上のような表を使っています。 例えば y = sin ax の場合には、 1 段目を x, 2 段目を ax, 3 段目を sin ax = y とするわけですが、 この場合は sin の特徴点である 0, π/2, π, 3π/2, 2π を先に 2 段目に埋めて、 そこから 3 段目を計算し、 1 段目は 2 段目から逆算する、という順に書くことで、 x 方向に 1/a 倍になる、という説明をしています。
(12/26 2018 更新)

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Q 2-B.15. 整数の 2 元 1 次不定方程式の解法の一つの解の組を求めるのに、 互除法以外の簡単な方法は (2018)

A 2-B.15.

これは、例えば「163 x + 78 y = 1」の整数解を求めよ、 といった問題の解法の話で、 通常は、まず互除法により一つの解の組を (x,y) = (-11,23) と求め、 それにより一般解は (x,y) = (-11 + 78n, 23 - 163n) とするのですが、 この「一つの解の組」を求めるのに、互除法よりも簡単な方法はないか、 という質問でした。

ちなみに、この (x,y) = (-11,23) を求めるには、 通常は以下のような、いわゆる「互除法」(ユークリッドの互除法) を用います。

163 ÷ 78 = 2 余り 7
78 ÷ 7 = 11 余り 1
7 ÷ 1 = 7
なお、最後の 1 での割り算は不要 (自明) なので、やらない場合もあります。 これらの割り算の結果を積の形で表記すれば、
163 = 78×2 + 7 ... (1)
78 = 7×11 + 1 ... (2)
となりますが、(2) の式を移項して、 その 7 に (1) の式を移項したものを代入すると、
1 = 78 - 7×11 = 78 - (163 - 78×2)×11 = 78×23 - 163×11
という式が得られ、よって元の方程式の一つの解として (x,y) = (-11,23) が得られることになるわけです。

実は、互除法はコンピュータでもよく使用される非常に優れたアルゴリズムで、 2 つの数の最大公約数をとても速く、効率よく計算できることが知られています。 中学校までは最大公約数は、 両方の数を素因数分解して求めるのが普通ですが、 それは実は大きな数に対してはかなり遅い方法です。 しかも、互除法の経過をたどることで、 このような不定方程式の解も短時間で求めることができます。 もしこれを、x=0,1,...,77 などと順番に試していたら、 67 になってやっとそれが見つかるわけですから、 いい方法ではありません。 多分、互除法が一番早いと思います。

ただ、互除法は、元の方程式から少し離れてしまうので、 互除法をやった後で、その結果と元の方程式の解を結びつけるところがわかりにくい、 という欠点が確かにあります。 それに対して、講習会の場に同席していたある先生が、 とてもいい方法を紹介してくれました。 実質的には互除法と同じ方法なのですが、 元の方程式から離れない方法です。

163x + 78y = 1 (→ 163x から 78x を 2 回引いて 78y の方に移動)
7x + 78(2x + y) = 1 (→ 2x + y = z とする)
78z + 7x = 1 (→ 78z から 7z を 11 回引いて 7x の方に移動)
z + 7(x + 11z) = 1
よって 1 つの解は z = 1, x + 11z = 0 のときなので、
z = 2x + y = 1, x = -11 より、 x = -11, y = 1 + 22 = 23
このように、一方の係数が他方の係数の約数になるまで (この場合は 1 になるまで)、 大きな係数を小さな係数の方に合わせて引き算をするような式変形を行うことで 一つの解の組を見つける方法です。

この方法の、 「163x から 78x を 2 回引く」ことでの式変形は、 互除法の (1) と同じ計算ですし、 「78z から 7z を 11 回引く」式変形も 互除法の (2) と同じ計算で、 この方法は実質互除法と同じであることがわかると思います。 しかし、こちらの方が元の方程式から離れてない分、 学生は方程式の解と結びつけやすいように感じます。

なお、この解法と互除法とセットにして、

163x + 78y = 1163 = 78×2 + 7 より
(78×2 + 7)x + 78y = 78(2x + y) + 7x = 178 = 7×11 + 1 より
(7×11 + 1)(2x + y) + 7x = 7(22x + 11y + x) + (2x + y) = 7(23x + 11y) + (2x + y) = 1
よって 1 つの解は 2x + y = 1, 23x + 11y = 0 のとき、
これを解いて x = -11, y = 23
のように考えると、 互除法を使っていることの意味がわかりやすくなるかもしれません。
(12/04 2018 更新)

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Q 2-B.16. 0 の 0 乗はいくつか (と中学生に聞かれた) (2018)

A 2-B.16.

0 の 0 乗は、一般には「不定形」と呼ばれるものなので、 いくつかという値をうまく決めることはできないのですが、 中学生に説明する、というところが難しい問題ですね。

高校生ならば、極限の話で不定形になることを説明することも可能ですが、 中学生だとそうはいきません。 なお中学生だと、まずは 0 乗を説明するところから始める必要がありますね。

0 乗、分数乗、0 の階乗など、素朴な計算式から外れる値は、 都合がいいように、そして自然な値として「定義する」というのが 数学の考え方ですが、とりあえずは 2 つの立場、すなわち、

を紹介して、0 の 0 乗が well-defined ではない (うまく決めることができない) ことをわかってもらうくらいでしょうか。

なお、講習会でも話しましたが、 巾級数「Σanxn」では、 暗黙のうちに 0 の 0 乗は 1 とみなしています。 これは、xnx の関数と見たときに、 n=0 の場合も含めてそれらが連続関数であるためには 0 の 0 乗を 1 と見なす方が都合がいいからです。

同様の理由で、 「Σannx」のような級数による関数を考えた場合は、 n=0 も含めるのであれば、 0 の 0 乗は 0 と見なす方が都合がいいでしょう。 ただ、こちらの場合、普通は n=1 からの和にすると思います。

すなわち、0 の 0 乗は well-defined ではないのですが、 それぞれの立場が用いられる場面では、 都合のいい 0 や 1 と定めていることもなくはない、 といった感じでしょうか。
(12/18 2018 更新)

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Q 2-B.17. 実数の連続性を高校生にわかるように教えるには (2018)

A 2-B.17.

「実数の連続性」は、微分積分学、解析学の基礎となる話ですが、 高校では明確に説明することは難しいです。

大学でも、まず数学科でない限りこの手の話はしませんが、 「実数の連続性」の考え方 (ほぼ「実数の定義」そのもの) にはいくつか同値な命題 (公理) があることが知られています。

  1. デデキントの切断
  2. 上限・下限の存在
  3. 有界単調数列の極限の存在
  4. 区間収縮法の原理

厳密に言えば、いわゆる「アルキメデスの公理」が必要なものもありますが、 これらの同値性の証明もあまり簡単ではありません。 実数の定義として何を採用するかにもよっても議論の難易度は変わるでしょう。

このあたりの議論については、以下の本が詳しく、 かつ丁寧に書かれています。

いわゆるε-δ論法の解説書としても有名な本で、 数学科など、理系の大学 1 年生向けの本ですが、 大変丁寧に書かれていますので、優秀な高校生なら読めるかもしれません。

ちなみに、実数の連続性の公理で高校生が一番わかりやすそうなのは、 個人的には「有界単調数列の極限の存在」だと思いますが、 大学の教科書では「上限・下限の存在」を採用するものが多いような気がします。
(12/05 2018 更新)

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2-Z. 教え方に関するその他の質問


Q 2-Z.1. 中学生に興味を持たせるような数学の話題は (2012)

A 2-Z.1.

残念ながらあまり最近の中学生のことをよく知らないので なんとも言い難いのですが、 私が中学生の頃は、 書店や図書館もそんなに近くにはなかったためもありますが、 「数学の世界」のかなり狭い部分だけ見ていて、 広い話をあまり知らなかったような気がします。

数学と言えば本当に中学校の数学の本の中の数学くらいしか知らず、 ある先生に 「積分を使うと円の面積が πr2 であることが証明できる」 などという話を聞いて、 ドキドキしながら高校生の教科書を開いてみた記憶があります。

今はどうか知りませんが、 教科書から離れたちょっとした話題でも、 多分面白がってくれるのではないでしょうか。 昔とは違い、最近は数学の啓蒙書やマンガなども出ていますし、 インターネット上でも色んな話が見つかりますので、 そういうネタはかなりたくさんあるような気がします。 また、上の例のようにちょっとした高校数学の話 (複素数、ベクトル、数列、 積分など) でも面白く感じる学生はいるかもしれません。


(01/20 2016 更新)

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Q 2-Z.2. 学生が退屈する分野の面白いエピソードはないか (2015)

A 2-Z.2.

例えばとして上げておられたのは「数列」の分野です。 ちなみに、私は数列は好きな分野でしたのであまり退屈はしませんでした。

数列に関係するエピソードというと、例えば、

あたりが思いつきますが、まだほかにも色々あると思います。


(01/21 2016 更新)

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Q 2-Z.3. 数学好きの高校生にお勧めの本はないか (2015)

A 2-Z.3.

これは、「Q 2-Z.1. 中学生に興味を持たせるような数学の話題は」 にも書きましたが、 今は数学に関する啓蒙書がかなりたくさん手に入りやすくなっていますし、 マンガ、小説などもあるので、むしろ昔よりも色々あるのではないかと思います。

私ももちろん高校生の頃は数学好きでしたが、 高校生の頃に楽しく読んだのは実は高校や市の図書館にある、 ちょっと難しい数学の本だったり、 当時かなり少ない中でわずかにあった矢野健太郎の書いた啓蒙書でした。

高校の図書館には、意外に大学レベルの難しい数学の本があったりして、 こんな数学もあるんだなと眺めるだけでも楽しかった記憶があります。 特にロシア (当時はソ連) の人が書いた数学の啓蒙書や大学レベルの本が 意外に結構置いてあったような記憶があります。

当時特に面白かったものを紹介しておきます。

一応最近の啓蒙書も手元にあるものをいくつか紹介しておきます。 ただ、今の高校生が読んで面白いのかどうか、 もはや高校生の気持ちはよくわからないので、 あまり適切ではないかもしれません。


(01/21 2016 更新)

追加ですが、 「Q 2-Z.6. 数学を好きになるようないいネタはないか」(2016) にもいくつか本を追加紹介しましたので、そちらも参照してください。
(12/28 2016 更新)

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Q 2-Z.4. 対数方程式で真数条件が書いてないのはなぜかと聞かれた (2016)

A 2-Z.4.

この質問は、正確には、 「対数方程式の問題で真数条件が書いてないのはなぜかと学生に質問されたが うまく説明できなかった」という話のようで、 「log10(x+2)(x+5)=1」と 「log10(x+2)+log10(x+5)=1」という 2 本の方程式が書いてありました。 私もよく確認しなかったので、 細かいニュアンスをはっきりとは認識していないのですが、 ここでは次の 3 つのことを考えてみましょう。

  1. 対数の問題で真数の部分が正であるという条件が 書いてあるものと書いてないものがあるが、それはなぜか
  2. 対数の問題で真数の部分が正であるという条件が 書いてない場合は、どう扱ったらよいか
  3. 上の 2 本の方程式は同じなのか違うのか

まず、1. ですが、対数の問題には確かに 例えば「y = log2x (x>0) のグラフを書きなさい」 のように真数が正であるという条件が書いてあるものもあれば、 上の方程式のように単に 「log10(x+2)(x+5)=1」を解きなさい、 と書いてあるものもあります。

問題を出題する立場から言えば、 これは「その条件を自分で確認することも問題のうち」ということで、 条件が書いてないのはあえてそれを書いてないのであって、 これは「そういう条件があることをちゃんと身につけているかどうかを確認する問題」 ということができます。 だから、「log10(x+2)(x+5)=1」の方は、 単に「(x+2)(x+5) = 10」から x を求めるだけでよいのではなく、 求めた x が「(x+2)(x+5)>0」 という条件を満たすかどうかを確認して、初めて満点が貰えることになります。

一方、「y = log2x (x>0) のグラフを書きなさい」 という問題も「(x>0)」の条件をあえて書かない問題も可能ですが、 それが書いてあるのは、この問題はそこは主眼ではなく、 むしろ「y = log2x のグラフの形を問うことを主としている問題」 ということでしょう。 こういう 2 種類があるのは、だいたいそういうことだと思います。

2. の「どう扱うか」については、もちろん暗黙の了解である「真数が正」 という条件もちゃんと自分で書き出して解く、 つまり解がそれを満たすことをちゃんと調べること (そしてそれを書くこと) が必要になります。 実は数学にはこのような「暗黙の了解」がいくつかあり、 例えば「f(x) = √x」と書いてあれば、 高校では実数値の関数しか扱いませんので、 その x は「x ≧ 0」であるという暗黙の了解がありますし、 「f(x) = 1/x」と書いてあれば、 「x ≠ 0」という暗黙の了解があります。

ただ、「暗黙の了解」は立場によって多少変わり得ますので、少々厄介です。 例えば複素数をまだ習っていなければ 「x2+2x+5=0 を解け」は「解なし」が答えになりますが、 複素数を習ったあとで、出題者の意図が複素数の範囲での解を期待していれば 「x = -1±2i」が答えになります。 そういうあいまいさを生まないために、 大学入試では「出題範囲」が示されていますし、 あいまいさをなくす最低限の条件は指定されているはずです。

3. の 2 つの違いは、前者は条件が 「(x+2)(x+5)>0」の 1 つであるのに対し、 後者は条件が「(x+2)>0 かつ (x+5)>0」の 2 つなので、 当然条件は違います。 前者は「x>-2 かまたは x<-5」ですが、 後者は「x>-2 のみ」なので、 後者の方が強い条件になります。
(03/03 2017 更新)

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Q 2-Z.5. 互除法や判別式に関する豆知識を教えて (2016)

A 2-Z.5.

私はそのあたりについてそれほど詳しくはありませんので、 少し調べたことを書きます。

判別式は、2 次方程式だけではなく、3 次以上の方程式にもあるようです。 例えば以下参照。

私はどちらかと言えば 2 次方程式の判別式は「実数解を持つかどうか」 ということのために使うことが多いのですが、 3 次以上の判別式は少し意味が違い、 「重解を持つかどうか」を意味しているようです。 判別式だけで、実数解を持つかどうか、解がいくつになるか、 といったことがはっきりわかるのはむしろ 2 次方程式だけで、 3 次以上の場合はそれらは判別式だけでは決まりません。

なお、2 次式は、進んだ数学や工学などでも頻繁に出てきます。 例えば単振動のような 2 階線形微分方程式の性質を決める特性方程式として 2 次方程式がでてきて、単振動の解が三角関数で表現されるのは、 その特性方程式の判別式が負であるから、ということができます。 また、2 変数関数の極値問題でも、実質 2 次方程式の判別式によって 極大極小があるかないかがわかったります。

互除法は、高校で新しく整数の話が追加されましたので、 今後は学ぶ学生が多いだろうと思います。 具体的に互除法を使う場面はそれほどありませんが、 例えばコンピュータの内部では見えないところで互除法が使われていたりします。 コンピュータでは、セキュリティを守るために暗号が用いられていますが、 そこには整数の理論が応用されていて、 その計算に互除法が頻繁に使われているようです。 コンピュータは整数の割算や余りを求めるのは得意で、 そういう計算は速く行えるので、 互除法のような計算も瞬時に行えます。

不定方程式を解くのにも互除法が利用されますが、 整数に限らず多項式同士の公約数を求める互除法もあります。 多項式の互除法は、部分分数分解の証明でも使われます。


(03/03 2017 更新)

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Q 2-Z.6. 数学を好きになるようないいネタはないか (2016)

A 2-Z.6.

「一発で好きになるネタ」というのは難しいでしょうが、 最近は色んな啓蒙書がありますので、その辺を見てみたらいかがでしょうか。 例えば、 「Q 2-Z.3. 数学好きの高校生にお勧めの本はないか (2015)」 で紹介した本などを参考にしてみてください。 ただし、そこでは多少古めか、多少固い本を紹介しています。

最近では桜井進というサイエンスライターの方が 数学の啓蒙書を多数書いています。 それらにも興味を引くネタがあるかもしれません。

また、数学史で一般の人にも関心を持って聞いてもらえる鉄板ネタに、 アーベルやガロアの話があり、 上記の本でもいくつか取り上げていますが、 ちょっとやわらかい本として以下のようなものもあります。

なお、これは数学に限らない科学全般の科学者の話が書かれています。

また、抽象的な数学に飽きている学生には、 実学満載の和算などもいいかもしれません。 和算の本も最近は割と切れずに出版されているような気がします。


(12/27 2016 更新)

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Q 2-Z.7. 有理化をするかしないかはどのように分けるか (2017)

A 2-Z.7.

これは、例えば三角比の値としてよく出てくる 1/√3 などを √3/3 とした方がいいのかどうか、 そしてその基準は、といったような話のようです。

これはかなり難しいですね。 「1/√3 を √3/3」に変形するのは正確には「分母の有理化」、 すなわち分母の無理数を有理数に変える、という意味があります。 「1/(√3 - √2)」を「√3 + √2」に変形するのも「分母の有理化」です。

有理化を行う必要性は、基本的に以下の 3 点かなと思います (他にもあるかもしれません)

  1. 数値 (近似値) を計算するときに便利
  2. 拡大体の意味での標準形に直す
  3. 答案の答えはなるべく単純化すべき

1 つ目は、例えば「√3≒1.732」だと知っていても、 1/√3 だと 1/1.732 の 4 桁の割算の計算は難しいですが、 √3/3 ならば 1.732/3 の 1 桁の割算は易しい、という話です。 電卓を使ってよいなら、当然分母の有理化にメリットがあるわけではないので、 有理化をしなければいけない理由はありません。

2 つ目は、数学でいういわゆる「拡大体」の話です。 例えば、有理数と√2 からなる四則演算式は必ず p + q√2 (p, q は有理数) の形に一意的に表すことができます。 これは簡単な形ですし、 この形の式同士の計算も易しいですので、 有理数と√2 からなる複雑な式があった場合、 それをこのような形に変形することは意味があるでしょう。 その際に、分数であれば分母の有理化という計算が必要になります。

3 つ目は、数学の問題では最終的な答えはなるべく単純な形で表すべき、 という暗黙のルールのようなものの話です。 もちろんそれが自然ですので、 易しくできるならそれは通常は行うべきものだと思います。

それらを踏まえて言えば、例えば、「1/√3 を √3/3」とすることは、

  1. 1 番目の理由では、電卓の存在を認めれば「不要」、 電卓を考えなければ「必要」
  2. 2 番目の理由では「必要」
  3. 3 番目の理由では「どちらでもよい」(どちらが単純とはいちがいに言えない)

といった感じでしょうか。 どの基準を取るかで意見が分かれる話だと思いますので、 「1/√3 を √3/3」とする必要性はそれほど強くはないと思います。
(2/09 2018 更新)

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Q 2-Z.8. なぜ数学の勉強が必要なのか (と聞かれたときの答え) (2018)

A 2-Z.8.

これは相当に大きな、そして「学問」全体に対する根源的な問いだと思います。 私などが簡単に答えられるものではありませんし、 これが正解、というものがあるわけでもないと思います。

また、「なぜ数学の勉強が必要なのか」という質問には、 別な問題も含まれているように思います。 むしろ、なぜそういう問いをするのか、 ということに意味がある場合があります。 数学が苦手で、「数学の勉強なんてしたくない」ために、 この問いに対して具体的な必要性を説明すると、 「それらは私には関係ないから必要ない」 という言い訳に使われてしまう、というケースです。 単純な疑問というよりは、苦痛から逃れるための理由探しであり、 この手の学生からの質問は、むしろこちらの方が多いようにも感じます。

しかし、この手の質問は、 特に比較的下位学年の学生からは良くある質問ですから、 数学の教員としては何らかの回答は用意しておいた方がいい質問です。 特に、上のような理由で聞いてくる学生にも、 それなりに答えられるようにする必要があると思います。

また、この質問は「数学の勉強が誰にとって必要なのか」によっても、 すなわち、「学生にとって」であるのか、 より広く「人間にとって」であるのかによっても 答えが違うような気がします。 多くの場合は「学生にとって」でしょうが、 その場合は直接的な理由は、例えば

などがあげられます。他方、「人間にとって」であれば、

といった感じでしょうか。 当然、他の人に言わせれば他の答えがでてくると思います。

そもそも、学校の教育は、 「必要だから勉強する」というわけでもありません。 必要なものしか勉強しないことはあまり面白くありません。 化学は必要か、漢文は必要か、英語は必要か、と言われれば、 生きるためにはそれほど必要ではない人も少なくはないでしょう。 必要性のためだけではなく、教養を深める、知的好奇心を満たす、 というための勉強も意味は十分にあります。 それらが将来自分の趣味につながることだってありますし、 「生きるために必要なこと」よりも、 「趣味」の方が人生を幸せにすることだってあります。

今の段階で必要性は見えなくても、 のちのち必要になることもあります。 よく、大人がもっと勉強しておけばよかった、 というのはまさにその通りで、 勉強しないのは、その道を閉ざすことにつながります。 もちろん、「必要になったらそのとき勉強する」というのでもいいのですが、 そのときは基本的に自分一人で勉強しなければいけないわけですが、 定期的に時間が取れて、 問題集がついて、先生に解説してもらって、質問にも答えてもらえる、 などという恵まれた状態で勉強できるのは学生のうちだけです。

嫌いだ、退屈だ、面白くない、難しい、と思う人は、 何か面白さを見つける努力をしてみるといいでしょう。 私も、嫌いな、苦手な教科は、 面白いところを探すとか、 やらされて学ぶのではなく自分で学ぶようにするとか することで、その科目から離れないようにしていたように思います。
(02/25 2019 更新)

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3. 数学自体に関する質問


3-A. 高校までの数学に関する質問


Q 3-A.1. インテグラルの記号はどのようにしてできたのか (2012)

A 3-A.1.

不定積分、定積分ででてくるインテグラル () は、 元々 S を縦に引き伸ばしたものです。 「インテグラル」と「S」には関係がないようですが、 「S」は「和」(sum) を意味しています。

現在はかなり真っ直ぐになっているインテグラルですが、 かなり古い論文に実際に大文字の S にかなり近いものが 載っているのを見たことがあります。

良く知られていますが、「ab f(x) dx」は、 「f(x) (x でのグラフの高さ) と dx (無限に小さい x の横幅)」の積を、 a から b まで足し合わせたもの、という意味を表す記号で、 それでインテグラルには和を意味する「S」が使われています。 この記号を用いたのは、微積分の発明者でもあるライプニッツです。

なお、ライプニッツの頃の「S」は、 どちらかというと今の「f」を縦に伸ばしたような記号だったようです (cf. ハイラー、ヴァンナー「解析教程 上」丸善出版)。


(01/21 2016 更新)

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Q 3-A.2. 内積の図形的な定義式は何に使われるか (2012)

A 3-A.2.

\(\vec{a}\)・b=|\(\vec{a}\)||b| cosθ」 という式のことだと思いますが、 確かにこの式が最初に出てくると、 なぜこのような式を考えているのか、という気になります。

具体例としては、例えば「仕事量」などがあります。 何らかの物体を引いて移動する際の仕事量は、 「(力の大きさ)×(引いた距離)」で求まるものですが、 引く方向と移動方向が異なる場合、 移動方向の力しか仕事に寄与していないため、 移動方向の力の成分を考えて、その力の成分と距離の積を考えます。

力を F、移動変位ベクトルを x とすると、 |F| cosθ がまさにその「移動方向の力の成分」に当たるので、 仕事量は「Fx」で表わされることになります。

このように、正射影を考える場面では良く用いられていますが、 正射影を最も良く使う場面と言えば座標計算でしょうか。 「座標」とはまさに x 方向の成分、y 方向の成分、という具合に、 各軸方向への成分、すなわち正射影の計算です。 CG (コンピュータグラフィック) のように座標軸が回転する場面では、 そのような計算が頻繁に行われます。


(01/20 2016 更新)

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Q 3-A.3. sin はどこからできたのか (2013)

A 3-A.3.

三角形の性質は、古代ギリシャやエジプト、バビロニアなど、 かなり古くから色んな場所で研究されていましたので、 三角関数が産み出される土壌はどこにでもあったように思います。

その歴史については、以下の本に詳しい話が載っています

それによれば、紀元前から古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスにより ある種の三角関数表に相当するものが作られ、 その後もギリシャでその精密化が計られていったようです。 一方でインドで 5, 6 世紀頃に同様のものが作られたそうですが、 それが今でいう sin の数表になっているそうです。 その両者が 8 世紀頃にアラビアに伝わり、 sin の他にも cos, tan などが使われるようになって、 現在の形の三角関数が確立していくことになるようです。 三角関数表も、10 世紀にはアラビアですでに 6 桁位の精度の 15 秒 (= 1/240 度) 刻みのものが作られていたそうです。

なお、「sin」(sine) という言葉は、 インドで生まれたサンスクリット語の言葉 (「弦の半分」という意味) が、 アラビアで省略、記号化され、 その省略語と同じ意味を持つラテン語に誤訳されてしまったものだそうです。 詳しくは上記の本をご覧ください。


(01/26 2016 更新)

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Q 3-A.4. 相乗平均はどこで使うか (2013, 2017)

A 3-A.4.

確かに通常平均というと相加平均

(a1 + a2 + ... + an)/n
を意味します。 相乗平均
(a1a2...an)1/n
はあまり使う場面がないように感じるかもしれませんが、 指数的に変化する値はむしろ相乗平均が自然ではないかと思います。

例えば、音階の周波数はほぼ等比数列になっています。 ドの音の周波数は 262Hz、そのオクターブ上の音の周波数は 523Hz、 ミの音は 330Hz, ラの音は 415Hz, その中間の音であるファの音の周波数は、 (262 + 523)/2 = 393Hz (≒ソ) ではなく、 (262×523)1/2 = 370Hz になります。

このように値が指数的な値として出てくる事象の場合は、 相加平均よりも相乗平均を使う方が自然かもしれません。

また、pH (ペーハー) や dB (デシベル) のように、 考えている値が本来の値の対数を取った値である場合、 そちらで取った相加平均は、 元の値で言えば相乗平均を取ったことになっています。 そういう意味では、自分では使ってなくても、 実は相乗平均を計算していることになっている、 という場合もあるかと思います。


(01/24 2016 更新)

追加ですが、先日聞いた漫才のネタに、まさにこの話がありましたので、 一つ紹介します。

ある宝石店で、 まず安い宝石を見せて下さいと言ったら、 「3000円」の宝石がでてきました。 これは安すぎだと思いましたので、 次にもう少し高い宝石を見せてくださいと言ったら、 今度は「3000万円」の宝石がでてきました。 これは高すぎと思いましたので、 その間のものはありませんかと言ったら、では「1500万円」ですかね、 という話をされたのですが、それは安くなってないです、 「30万円」位のものはないですか、という話です。

この「1500万円」は 3000円と 3000万円の相加平均なのですが、 3000円と 3000万円の相加平均だとほぼ 3000円が無視されてしまうので 意味がありません。 それに対して、「30万円」は 3000円と 3000万円の相乗平均なのですが、 これはなんとなく真ん中を意味しているように感じないでしょうか。

このように、桁の大きく違う値同士を考えるときは、 指数的な見方をすることになる (桁の方に目が行く) ので、 その真ん中の値としては相加平均よりも相乗平均の方が 適切なように感じられると思います。
(12/28 2018 更新)

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Q 3-A.5. 「順列」より「組み合わせ」が先では (2014)

A 3-A.5.

これは、話を聞いてみたところ、

n 個のものから k 個を取る「順列」 nPk を考える場合は、 まず n 個のものから k 個を「組み合わせ」で取り (nCk 通り)、 その k 個の並べ換え (k! 通り) で考えるのが自然で、 それで nPk = nCk × k! となるから
という話でした。

確かにそういう見方もありますが、 普通の教科書にあるように順列から先に考える考え方も不自然ではないと思います。 ちなみに、私が高校のときは「順列」に比べて「組み合わせ」の考え方が苦手で、 「組み合わせ」の問題も「順列」に直して解いたりしていました。 そういう人間からすると、 むしろ「順列」の方が先にある方がやはり自然かなと感じます。

講習では、今教える順番と歴史的な順番が逆になっているような例も いくつか紹介しましたが、 この「順列」と「組み合わせ」については順番はわかりませんが、 それほど順番にずれはないのではないかと想像します。


(01/24 2016 更新)

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Q 3-A.6. 数列の漸化式が特性方程式で解ける理由は (2014)

A 3-A.6.

例えば以下をご覧ください。


(01/24 2016 更新)

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Q 3-A.7. sin(x) に関する循環論法とは (2015)

A 3-A.7.

これは、やや長くなるので以下にまとめてみました。そちらをご覧ください。


(01/24 2016 更新)

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Q 3-A.8. 3 階微分はグラフでどういう意味を持つか (2015)

A 3-A.8.

例えば以下をご覧ください。


(01/24 2016 更新)

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Q 3-A.9. sin, cos, tan の歴史的背景は (2016)

A 3-A.9.

「Q 3-A.3. sin はどこからできたのか (2013)」 をご覧ください。
(12/28 2016 更新)

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Q 3-A.10. sin20°×sin40°×sin80° が簡単な値になる理由は (2017)

A 3-A.10.

以下にまとめてみましたので、ご覧ください。


(12/08 2017 更新)

これは簡単に言えば、これが

sin20°×sin40°×sin80° = sin20°×sin(180°- 40°)×(- sin(80°+ 180°)) = - sin20°×sin140°×sin260° = - sin20°×sin(20°+ 120°)×sin(20°+ 240°)
のように 360° を 3 等分する角の sin の積の形になるからで、 そのような積に対して、
sin x sin(x + 2π/3) sin(x + 4π/3) = (-1/4)sin(3x)
のような公式が成り立つことによります。 つまり元の問題が 20 度、40 度、80 度の角の並びにしてあるのは ある種の目くらましのようなものです。 中には、この問題を「sin20°×sin40°×sin60°×sin80° は」 という別の目くらましの形にする場合もあるようです。
(01/16 2019 更新)

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Q 3-A.11. ベクトルの割り算は本当にないか、あるとすればどのようなものか (2018)

A 3-A.11.

ベクトルが得意でない学生は、 よく「ベクトル同士の割り算 (b=3\(\vec{a}\) から 3=b/\(\vec{a}\))」 とか「ベクトルの内積の割り算 (\(\vec{a}\)・b/\(\vec{a}\) = b)」 のような計算をしてしまいがちです。 もちろん、これらは間違いです。

では、「ベクトルの割り算」はないかと言えば、必ずしもないとは言えません。 元々「割り算」とは積の逆算なので、 その意味ではベクトルの積である内積や外積の逆算として それぞれの割り算らしきものを考えることはできます。 例えば、以下の本の演習問題 (p20-21) に 内積、外積に対する「除法」の話が書かれています。

例えば、内積に対する除法とは、「\(\vec{a}\)・x = k」 となるベクトル x を、k を \(\vec{a}\) で割ったもの、 と考えることですし、 外積に対する除法とは、「\(\vec{a}\)×x = b」 となるベクトル x を、b を \(\vec{a}\) で割ったもの、 と考えることです。

ただ、これらの解 x はいずれも一意的ではないためか (後者はゼロベクトル以外の \(\vec{a}\) で常に解があるとも限らない)、 それらが割り算として広く使われていることはないようです。
(12/05 2018 更新)

なお、「ベクトルの割り算」とは直接は関係ない余談を一つ追加します。 講習会でも少し紹介したヘビサイドは、 正式な数学の高等教育を受けた人ではない電気技術者だったのですが、 「微分の割り算」のような計算を自由に行い、 微分方程式を形式的に解くという手法 (ヘビサイドの演算子法) をあみだしました。 これは、当時の正式な数学者からは、 まともな数学ではない、正しい数学ではない方法と見られていたようですが、 その方法は後にラプラス変換によって正当化されることになります。

歴史的には、数学にはこのような例はいくつかあり、 そういうものが新しい発見、新しい数学分野の創造につながる場合もあります。
(12/06 2018 更新)

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Q 3-A.12. 漸化式の特性方程式の「特性」とは (2018)

A 3-A.12.

「特性」は英語では「characteristic」で、 その特徴を表すもの、それに特徴的なもの、といった意味があります。 数学では「固有」と訳す場合もあります。

漸化式の特性方程式は、微分方程式の特性方程式同様、 その解に直結した代数方程式で、 その解で元の方程式の解が表現されるので そのように呼ばれているのだと思います。
(12/05 2018 更新)

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Q 3-A.13. 自然対数の底はなぜ e か (2018)

A 3-A.13.

これは、自然対数の高校での定義:

(a) 「自然対数とは、底が e の対数関数のこと」
ということからすると、本来は出ない質問のはずです。 よって、質問者の真意を良く確認すべき質問でしたが、 ほぼ講習会の内容に含まれるだろう、ということで、 そのあたりを良く確認していませんでした。 今となってはどういう意図だったのかはわかりませんが、 それを想像しながら回答してみます。 なお、以後自然対数を ln x と書くことにします。

  1. 「なぜ e を底とする対数を自然対数と呼ぶようになったのか」 という、むしろ「自然対数」という名前に対する質問である場合

    元の質問は、一応そう読めなくもありません。 「自然対数」という名前の由来は、講習会でも説明した通りで、 メルカトルがそのように名付けたのですが、 1/x のグラフの下の面積として定義される対数だから、 あるいは綺麗な展開式:

    ln(1+x) = x - x2/2 + x3/3 - ...
    が成り立つことを見つけたため、ということのようです。

    なお、この時期の対数関数は、 現在の高校数学のような「指数関数の逆関数」 として定義されるものではありませんでした。 実数乗などというものは認識されておらず、 指数関数というもの自体がない時代で、 対数表の発明などによりむしろ対数の方が先にあり、 なじみがあったわけです。

    すなわち、

    (b) 対数関数とは、正の x,y に対して f(xy) = f(x) + f(y) となる関数 f(x) のこと
    であり、
    (c) 対数関数の底とは f(a)=1 となる値のこと
    と認識されていたと思われます。 そして、講習会で説明したように、 メルカトルらの時代に、y=1/x のグラフの下の 1 から x までの面積 (1x 1/x dx) が対数関数となることがわかり、 それを「自然対数」と名付けられたわけです。

    e」という実体も、現在高校で学ぶ

    (d) e(1+1/n)n の極限
    ではなく、むしろ「自然対数の底」、すなわち ln e = 1 となる数、 として認識されていて、 実際オイラーもそのような表現で e を定義しています。

    その意味では、

    e を底とする対数を自然対数と呼ぶようになった」
    のではなく、
    「自然対数の底が元は e の定義であり、 それが (d) であることはその後に見つかったこと」
    ということになります。 実際オイラーは自然対数の底が (d) に等しいことを示していて、 そして、ex を、今の指数関数の定義とは異なる式、 すなわち
    (e) ex(1+x/n)n の極限
    と定義し、その逆関数が自然対数であることも示しています。 つまり、「指数関数」は、むしろ先に対数関数の逆関数として認識され、 「実数乗」や指数関数の底という考え方は、むしろその後に出てきたもの、 であるようです。

  2. 質問者の「自然対数」の定義 (認識) が (a) とは違う場合

    それなら、このような質問が出ても不思議ではないわけですが、 今度はその「自然対数」の定義は何か、が問題となります。

    講習会の内容から、

    (f) ln x = ∫1x 1/x dx
    と考えてくれたのであれば、歴史的な順と同じなので、 ほぼ上に説明した通りで、むしろ (f) の底を e の定義としたことになりますから、それがなぜ e か、 という質問には意味がないことになります。

    また、自然対数は (f) の意味だけれど、 e の定義は高校の (d) の意味だとすると、 (f) の底がなぜ (d) になるか、という質問になります。 この場合は、その質問に対する回答は、(f) の定義の元で、

    (g) ln(1+1/n)n の極限が 1 となること
    を示せばいいわけです。この (g) は、対数法則と (f) から
    ln(1+1/n)n = n∫11+1/n 1/x dx
    となりますが、右辺の定積分と長方形の面積とを比較すれば
    1/(1+1/n) < n∫11+1/n 1/x dx < 1
    が容易に得られますので、 はさみうちの原理によって (g) が示されます。

元の質問者の意図は、上とは別の意味だった可能性もありますが、 もし必要ならご連絡ください。


(12/06 2018 更新)

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Q 3-A.14. dy/dx を分数として使ってよいか (2018)

A 3-A.14.

導関数 dy/dx は、y' とも書きますが、 この分数形の書き方も良く用いられます。 実際、合成関数の微分法や置換積分法では、 これを分数と見るような計算式もでてきます。

元々、微分の誕生当時は、極限という概念がまだ固まっていなかったため、 「無限小」である dy (= 限りなく小さい y の変化) を、 「無限小」である dx (= 限りなく小さい x の変化) で割る、 割り算として考えていたため、このような分数記号が使われていました。 当然その当時は微分は「分数」だったわけで、 合成関数の微分法や置換積分法も分数のような計算で示されていたわけです。 しかし、「無限小」と「0」との区別は難しく、 当時もこの dy/dx の意味に関してはかなり議論になったようで、 専門の数学者がその意味を「正しく」理解していなければ 正しく使える状況ではなかったようです。

そういう経緯からすると、あまり「分数」として考えるよりも、 「微分は分数ではなく、あくまで分数の極限」ととらえる方が、 わかりやすいのではないかと思いますし、 変な計算をさせずに済むのではないかと思います。 特に 2 階微分や偏微分になると、 単純な分数のような扱いが難しくなっていきます。

しかし一方で、工学や応用分野では、 dy/dx はむしろ分数のように捉えることがあります。 例えば、dQ/dT は熱量 Q の変化 dQ を 温度 T の変化 dT で割ったもの、 すなわち 1 度上昇させるのに必要な熱量、と見たり、 dN/dt は人口 N の変化 dN を 時刻 t の変化 dt で割ったもの、 すなわち 1 年間の増加人口、と見るようなことが普通に行われていますし、 dT/dQdQ/dT の逆数として考える、 ということも行われます (数学では逆関数の微分法則)。

もちろん厳密にはいずれも極限があるため単純な割り算ではないのですが、 工学、物理などでは微分はむしろこのような「変化率」、 すなわち y の変化と x の変化の比と見ることが多く、 それを表現するためにも、この分数表現は都合がいいわけです。 場合によっては、dy = f'(x)dx のような分母を払った式 (= 名詞の「微分」) が用いられることもありますし、 工学部向けの古い数学の教科書や海外の数学の教科書では、 無限小を用いた微分の導入などを行っているものもあります。

ということで、結論としては以下のような感じでしょうか。

なお、現在では、微分の導入においては 「無限小」という考え方はほぼ使われなくなりましたが、 「無限小」による微分の考え方については、 以下のものも参考にしてみてください。


(12/25 2018 更新)

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3-B. 大学や研究レベルの数学に関する質問


Q-3.B.1. 「abc 予想」を雰囲気だけでも教えてもらえないか (2012)

A 3-B.1.

京都大学の教授が、かなり遠大な理論を構築して、 「abc 予想」の証明を発表したことで、 確かに一時期話題になりました。

「abc 予想」は整数論という分野の問題で、 ある種の不等式が成り立つことの予想のようです。 私は数論は専門家ではないので難しさとか、 意味や意義などはよくわからなくて説明もよくできませんが、 それが証明できると色んな問題が解決することになるような 大きな応用を含む評価式のようです。 あれから何年か経ちますが、 彼の論文の真偽はもう判明したのでしょうか。 そのあたりもよくはわかりません。

なお、以下の本に多少紹介されているようです。


(01/21 2016 更新)

追加ですが、以下に多少詳しく abc 予想の話が載っています。


(08/31 2018 更新)

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Q-3.B.2. グラスマンのベクトルは行列式か (2014)

A 3-B.2.

多分講習の中で「行列式」らしく見えたのは、 「ベクトル」ではなくて「ベクトル積 (外積)」の方だろうと思います。 実は、グラスマンの「ベクトル」はかなり抽象的な面倒なものです。 まだ「ベクトル」の概念がなかったころのものですから仕方はないのですが、 私もはっきりとは理解していません。

また、グラスマン自身「ベクトル」という表現は使っておらず、 「区間」や「変動」のような言葉を使っていて、 それらを高次元に拡張することを考えていたようです。 現在我々が高次元空間での「ベクトル」と呼ぶものは、 2 次元、3 次元の場合と同じように相変わらず「有向線分」だったり、 「点への位置ベクトル」だったりするのですが、 グラスマンは、線分の高次元化として 平行四辺形や平行六面体のような対象物を考えて、 それらを「ベクトル」(のようなもの) として扱って、 それらの「外積」を考えているようです。 そして、その「外積」により、 また新たな「ベクトル」(のようなもの) が生成される、 という話らしいです。

グラスマンの外積では、2 つだけでなく 3 つの積なども現れるようで、 [ab], [abc] のように表しています。 ちなみに、ベクトルは大学では→付きではなく、 このように太字で書くことが多いのですが、 それもグラスマンに由来するようです。

講習で紹介した、通常のベクトルの 2 つの外積は、 確かに平行四辺形らしかったので、その点では「行列式風」なのですが、 実際には行列式を係数に持つ「ベクトル」のようなもので、 よって、現代的に言えば、グラスマン代数 (外積代数) の元、 外積はその交代積、という感じになります。 交代積は、微分形式の計算などで使われています。 上記の話については、以下に書かれています。


(01/27 2016 更新)

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Q-3.B.3. 底が負の指数関数のいい説明は (2016)

A 3-B.3.

例えば (-2)√2 など、と書かれていましたが、これは厄介です。 数学では、底が負の指数は、一般には複素数を使って表現するからです。

一般の ab (a, b は複素数) は、 数学では複素関数論を使って、

ab = exp(b×log(a))
と定義します。 ただし、exp(z) は複素指数 (いわゆる ez)、 log(z) は複素対数 (底は e) です。 底が負の指数もそこに含まれ、一般には値は複素数 (しかも多値) になります。 例えば、
(-2)√2 = exp(√2×log(-2)) = exp(√2×log(2) + i(2n+1)√2π) = 2√2{cos((2n+1)√2π) + i sin((2n+1)√2π)}
となります (n は任意の整数)。

これを知った上で、 「高校生にわかるように負の指数を説明したい」ということでしたら、 ちょっと難しいかもしれません。 実数の実数乗なのに複素数がでてくる意味が少しわかりにくいです。 少し考えてみましょう。

複素数が必要になるのは、上の変形を見てもわかりますが、 指数というよりは、むしろ負の真数に対する対数です。 対数の真数は通常は正の値しか許されませんが (真数条件)、 それを負の値まで拡張しようとすると複素数が必要になります。

log(-1) = x となる値は、ex = -1 となる値ですから、 x は実数ではありえません。 そこで、exx を実数から複素数に拡張して考えてやる (オイラーの公式を導入して exp(z) を定義する) と、 exp(z) = -1 となる z が複素数内に z = (2n+1)πi と見つかるので、これを log(-1) と考え、 次は z = (-1)b を考え (log(z) = b×log(-1) = (2n+1)bπi より z = exp((2n+1)bπi))、 それによって (-a)b = ab×(-1)b と考える、といった形で構築していくのはいかがでしょうか。 ただし、落し穴がいくつもありそうですね。、
(12/28 2016 更新)

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Q-3.B.4. 四元数をさらに発展させたものはあるか、またそれらの応用例は (2016)

A 3-B.4.

さらに発展させたものはあるようで、「八元数」「十六元数」などがあるようです。 ただ、「四元数」になると交換法則が失なわれるのと同様に、 「八元数」では結合法則が失われ、 「十六元数」ではまたある種の性質が失われるようです。 それらを統一して扱う「多元数」という数学の分野もあるようです。 以下を参照してみてください。

四元数 (クォータニオン) は、ベクトルの登場によって下火になってしまった、 という話を講義ではしましたが、 最近では剛体の回転の表現などに利用されているようです。 複素数を使う方が、平面ベクトルの回転をシンプルに表現できるように、 3 次元の回転の表現には行列よりも四元数の方がシンプルになるそうです。 実際にスペースシャトルや人工衛星、ロボットの姿勢制御の計算や、 コンピュータグラフィックスにも使用されている、 という話もあります。


(12/27 2016 更新)

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Q-3.B.5. 「ζ(-1) = -1/12」をわかりやすく説明できないか (2017)

A 3-B.5.

実は、以前同様の質問を別なところでも扱っていました。 まずは以下をご覧ください。

ただし、私は数論の専門家ではないので、 申し訳ありませんが 「ζ(-1) = -1/12」の意味もよくわかりませんし、 そして当然それをわかりやすく説明することもできません。
(12/08 2017 更新)

追加ですが、以下にその話が載っています。

なお、書いてあった式は案外簡単なもので、 テイラー展開式の変形から出てきますので、ざっと紹介してみましょう。

まず、無限等比級数の公式から

1+x+x2+x3+... = 1/(1-x)
が成り立ちます。これは右辺の関数の x=0 でのテイラー展開 (マクローリン展開) と見ることもできます。 テイラー展開は、形式的に微分してもよいので、両辺を微分すると
1+2x+3x2+4x3+... = 1/(1-x)2
となります。これらはいずれも -1<x<1 でしか 本来は成り立たない (収束しない) 式なのですが、 ここに形式的に x=-1 を代入すると、
1-2+3-4+5-6+7-... = 1/4
という式が得られます。 左辺を偶数部分と奇数部分に分けると、形式的には、
左辺 = (1+3+5+7+...) - (2+4+6+8+...)
= (1+2+3+4+5+6+7+...) - 2(2+4+6+8+...)
= (1+2+3+4+...) - 4(1+2+3+4+...)
= -3(1+2+3+4+...)
となります。よって、それが 1/4 であることと合わせると、
ζ(-1) = 1+2+3+4+... = -1/12
となる、という話のようです。

ただ、当然 x=-1 ではこれらの無限級数は収束しないので、 通常の数学の枠の中ではこれらの計算には意味はありません。 しかし、ここから新たなアイデアや新たな問題解決の方向を見出す、 というのがその分野の研究者の考えなのでしょう。
(02/21 2018, 03/02 2018 更新)

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3-C. 日常の数学や工学、物理などの数学に関する質問


Q-3.C.1. 懸垂線のパラメータはちゃんと決定できるか (2013)

A 3-C.1.

これは、やや長くなるので以下にまとめてみました。そちらをご覧ください。


(01/23 2016 更新)

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Q-3.C.2. 計算尺は積も計算できるのか (2013)

A 3-C.2.

計算尺は、最近はほとんど見ることはなくなりましたが、 私が中学生の頃の数学の教科書にはまだかろうじて 「計算尺の使い方」の話が載っていたように記憶しています。

計算尺は、2 つの直線定規を組み合わせたようなもので、 それらの長辺をずらして並べて目盛を読むことで 2 数の積、商、累乗などが計算できるようになっています。 そしてその向かい合う辺には「対数的な目盛」が等間隔に打ってあります。 その計算原理は、以下の表による計算とほぼ同じです:

x = log2y -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6
y = 2x 1/64 1/32 1/16 1/8 1/4 1/2 1 2 4 8 16 32 64

上は交差 1 の等差数列、下はそれを 2 の指数とした値で、 公比 2 の等比数列です。 指数法則からわかりますが、 例えば、表の上の行の「2 + 3 = 5」「6 - 2 = 4」「3×2 = 6」が、 下の行の「4×8 = 32」「64÷4 = 16」「82 = 64」 に対応するように、 上の行の和、差、定数倍が、下の行では積、商、累乗に対応します。

計算尺の 2 本の定規 A, B には、 A の下辺と B の上辺に上の表の下の行の数字が等間隔に並んで打ってあります。 等間隔に等比数列の値が並ぶ形になるわけです。 もちろん、実際の計算尺は、上の表の整数だけでなく、 その間のすべての整数に対応する目盛も打ってあります。 そして、計算する場合はその 2 辺をすべらせながら目盛を読みます。

例えば「4×8」を計算する場合は、B の上辺の「4」の目盛に、 A の下辺の「1」を合わせ、 そして A の下辺の「8」の場所の下にある B 上辺の目盛の数値を読むと 「32」という答えが得られる、という仕組みです。 実際にはそれは、上の行の 2 の場所から右に 3 つ進んだ場所 (上の 5) の下の行の値を見ていることに対応します。

割り算はそれを逆にやるわけです。例えば B の「64」に A の「4」を合わせ、 A の「1」の下にある B の数値を読めばいいわけです。

実際の計算尺は、固定された直線尺 2 本の間を一本の可動尺をすべらせますし、 その 3 本の直線尺には 2 ~ 4 種類の目盛が打ってあります。 中には、裏にも目盛が打ってあるものもあります。 そして、それらの同じ位置にある目盛を正しく読む、 あるいは隣接しない目盛の位置を正しく合わせるための 「カーソル」というものがついています。 それらを組み合わせることで、 分数や累乗、2 乗、3 乗、平方根、立方根、三角関数、 対数の値なども計算できるようになっています。 現在の電卓程の精度はありませんが、 それでも有効数字で 3、あるいは 4 桁の精度の数値が得られたようです。

今でもインターネットで「計算尺」と検索すると 山ほど解説サイトが見つかりますので、 詳しくはそちらをご覧ください。
(01/24 2016 更新)

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Q-3.C.3. ある 3 次元模型の立体図形の展開図を考えて欲しいと言われた (2016)

A 3-C.3.

簡単な図が書いてありましたが、四角錐と立方体を結合したような図形で、 その結合部分の展開図を考えて欲しいと言われたそうです。 工業科の先生は CAD で作ろうとしていた、という話が書いてありました。

確かに最近の 3D CAD は素晴しいらしいらしく、 うちの大学でも高いソフトを購入してそういう授業もやっているようですが、 残念ながら私は使ったことがありませんが、 簡単に検索してみるとソフトによっては 立体図形から展開図を作成してくれるような機能を持っているものもあるようですね。 地道にベクトルを使って長さや角を手で計算して展開図を作るよりは、 そちらの方が意外に楽かもしれません。

ただし、展開図は一意に決まるわけではないし、 ソフトが作る展開図が最適だというわけでもないでしょうから、 安易にその結果をうのみにせずに、 よりよい展開図を作り直す工夫も必要なのではないかとは思います。
(03/03 2017 更新)

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Q-3.C.4. 工学部ではどのような数学を勉強するか (2017)

A 3-C.4.

それほど明確な基準があるわけではありませんが、 工学で教えられる数学には以下のようなものがあります。

例えば、山口大学と広島大学が始めた「EMaT (工学系数学統一試験)」 というものがあります。

これは、全国の大学工学部、高専などの学生が無料で受験できる試験で、 ほぼすべての工学部で全員が共通に教わるであろう内容 (基本的な数学) の試験です。出題範囲はほぼ以下の通りです。

工学部では、まずはこのあたりを学ぶと考えていいでしょうが、 大学によってはやらない部分などもあります。 うちの大学も、カリキュラム上は数学は少なく、 上の半分くらいは入っていません。

なお、さらに学生はどの辺でつまづきやすいのか、 高校ではどのような点に注意して指導すればよいか、 ということも書かれていました。 うちの大学に入学する学生を想定してのご質問だと思いますが、 まずは高校の内容を普通にマスターすることが重要です。 また、工学では数学を応用することも必要なので、 応用問題 (文章題) も苦手意識を持たないようであると、 なおよいように思います。
(02/09 2018 更新)

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Q 3-C.5. 高校数学と実社会のつながり (どの分野が実際にどんなところで使われているのか) (2018)

A 3-C.5.

高校数学の大半の分野は、基本的な道具で、 「足し算」や「かけ算」のように、どこか特別の分野で使われる、 というよりも広く色んな分野で使われています。 よって、「この分野で使われる」と特定することは 実はかなり難しいです。

例えば、高校数学で出てくる代表的な分野である

「二次方程式・高次方程式」「複素数」「三角関数」 「指数・対数」「微分・積分」「ベクトル」「数列、漸化式」 「整数論」「集合・論理」「確率・統計」
について、 使われる場面、例など、私が知るもの、簡単に調べたものなどを紹介します (少し長い)。 最後に参考文献もつけておきます。

参考文献を以下にあげておきます。


(01/23 2019, 03/06 2019 更新)

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Q 3-C.6. 数学科と工学部、物理科、情報工学などで扱う数学の違いは何か (2018)

A 3-C.6.

「理学部数学科出身」というと、 工学部や物理学科などで学ぶ数学はすべて学ぶように誤解されがちなのですが、 そんなことはありません。 しかも、同じ分野を学んでも、内容も学び方も違います。

いずれの学科でも、それぞれの分野で「必要な数学」を学ぶのが原則なので、 学部や学科の違いで、だいぶ学ぶ数学に違いはあります。 基礎的な数学、すなわち、

については、理系学部であればだいたいどこの分野でも学ぶと思います (大学 1, 2 年生位)。 そこから先の話が、学部、学科によって変わってきます。

例えば工学部では、2, 3 年生で大体以下のような数学を講義することが多いようで、 それらをまとめた「応用数学」「解析学」などといった教科書が 良く出版されています。

工学部の情報系の学科では、さらに専門科目として

などを学ぶ場合もあります。

次に物理学科ですが、詳細は知りませんが、 いくつかの大学のカリキュラムを見てみると、 基礎的な数学の他に「物理数学」のような名前の数学の講義が 開講されていることが多いようですし、 物理の専門科目の中で数学を部分的に学ぶ場合もあると思います。

上の工学部の科目の内容は物理学科でもほぼ必須だと思いますが、 時間数は限られるので、 例えば工学部で良く使われるラプラス変換などは割愛されているかもしれません。 そして、以下のものもどこかで学んでいるだろうと思います。

ただ、もしかしたら必須ではなく、 物理の分野によって履習する科目は変わるかもしれません。 「変分法」や「テンソル」は、 比較的物理学科で良く用いられる特徴的な分野です。

最後に理学部数学科ですが、 ここまで見てきた物理や工学で用いられる数学とは違い、 理学部数学科では「現代数学」、 すなわち現在の研究者が研究している数学分野を将来見すえた形の 数学の体系を軸にカリキュラムが構築されていることが多く、 よってここまでに出てきた、 応用が意識された形のカリキュラムとはかなり違います。

例えば、私の出身大学では、線形代数や微積分の基礎数学以外に、

を基礎として学んだ後は以下の科目が軸となっていました。

もちろん、これら以外にも

なども (主に 4 年次に) 開講されていましたが、 いずれも選択科目だったと思います。 これらは工学部や物理学科で開講されている科目を すべて含んでいるわけではありません。 実際、私も数学科の講義では「フーリエ解析」も、 「ベクトル解析」も、「変分法」も、そして「古典的な確率論」 も学んでいません。

しかも、数学科は同じ名前の科目でも工学部や物理学科とは内容がだいぶ異なり、 「計算の仕方」よりも「証明の仕方」や「理論の構築」を中心に学びます。 「集合論」はそのために学ぶものですし、 1 年生の微積分でもいわゆる「ε−δ論法」による微分の定義 (ほかの分野ではほぼ使わない) や、その証明法を学びます。 つまり 1, 2 年生の基礎科目の微積分や線形代数もだいぶ内容が異なります。

「常微分方程式」でも、 工学部や物理学科では具体的な微分方程式の解法である「求積法」や、 「ラプラス変換」による計算法や、数値計算法の解説が主だと思いますが、 数学科ではむしろ一般的な常微分方程式の「解の存在定理」や 「解の一意性定理」などの定理の解説に時間が割かれます。 実は私も数学科の講義では、 工学部で習う求積法は 1/3 位しか学びませんでした。

「ルベーグ積分論」などは、積分とはいいつつ、 具体的な不定積分や定積分などの計算はほとんどなく、 測度論やルベーグ収束定理、フビニの定理や関数空間などの 理論の解説が主です。 実は数学科の「確率論」も、 高校で学ぶ順列や組み合わせなどを使う、いわゆる古典的な確率論ではなく、 測度論とルベーグ積分による現代流の確率論 (ほぼ積分論) を学ぶことが多いです。

だから、そういう内容の授業が行われていることを知らずに、 高校の数学が得意だった学生が大学の数学科に入ってくると、 かなりのギャップや相当なショックを感じることも少なくないようです。 私も高校生時代、数学が得意ならむしろ物理学科に行った方がいい、 と言われたことがあります。
(12/27 2018 更新)

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Q 3-C.7. 工学部へ進む学生が身につけておくべきことは何か (2018)

A 3-C.7.

工学部、ということで身につけておいた方がいいだろう分野は 多少ありますので、以下に少し紹介します。 特に、最近の高校の数学のカリキュラムは、 昔とは変わっているところが色々ありますので、 これくらい知っているだろうと思うことを、 学生が案外知らないことがあります。 現在の高校のカリキュラムを知らない工学専門の先生方は、 そういう点に関してとまどいを感じておられるのではないかと思います。

例えば、「ベクトル」は、 以前は高校数学のカリキュラムでも主要な位置にあり、 履習率がかなり高かったのですが、 現在は選択科目に置かれているので、 うちの大学に進学してくる学生では、普通高校以外の出身者も多いためか、 かなり履習率が下がっているように感じます。 「ベクトル」は物理や工学で良く用いる道具なので、 多分知らないよりは知っていた方がいいでしょう。

また、「指数関数・対数関数」や「三角関数」も、 物理や工学ではほぼ必須の内容なので、 大学でも改めて復習はしますが、 高校でじっくり身につけておくことが望ましいと思います。 特に、対数は指数の逆のためなじみが薄いせいか、 正しく身につけている人の割合が低いように感じています。

うちの学生で意外にできないのが、「関数のグラフ」を描くような問題です。 高校数学 II の「図形と方程式」の直線や円のグラフ、 不等式の領域のグラフ、 放物線、三角関数、指数・対数関数のグラフなど、 高校では何度も勉強すると思いますが、 単純な計算問題に比べてかなり正答率が低いように思います。 「グラフ」も工学では必須の内容なので、 これも身につけてもらいたいところです。

それ以外にも、確率や微積分も重要ですし、 数式や数字の計算力、数式を正しく読む力、なども必要になりますが、 工学部では、数学の中だけで計算が終わるわけではなく、 必ず最終的にそれを応用する場面で使うので、 「応用問題」、「文章題」などを読み解いて、 それを数字、数式に直して解くような力が最も重要ではないかと思います。 数学で良く出される x, y の連立方程式なら解けるのに、 簡単な文章題になったとたんに解けなくなる、 あるいは文字が x, y でなく r1, r2 になると解けなくなる、 係数が数字でなく、文字になると解けなくなる、 といった話を専門分野の先生から良く聞きます。 ある程度は大学でもやるのですが、 高校のときからそういう力を磨いていると工学部では役に立つだろうと思います。
(12/28 2018 更新)

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3-Z. 数学自体に関するその他の質問


Q-3.Z.1. nn はどんなところにでてくるか (2013)

A 3-Z.1.

この質問がどういう文脈だったか忘れましたが、 例えばスターリングの公式の右辺には nn も含まれます。 スターリングの公式の左辺 n!nn も、 n が大きくなっていくと非常に早く大きくなるものですが、 nn の方がかなり大きいです。

スターリングの公式の右辺の方が左辺よりも難しそうですが、 左辺の n! は扱いにくく、 それよりは右辺の式の方が扱いやすいので有用なのです。 例えば確率論などで n! は頻繁に現れますが、 その漸近評価に使います。 中心極限定理もこれを利用しています。

他には、例えば n 種類のものの r 個を並べた重複順列は nr なので、 n 種類のものを n 個を並べた重複順列は nn となります。


(01/26 2016 更新)

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Q-3.Z.2. ○○屋の「10% ポイント還元」は何割引きか (2017)

A 3-Z.2.

以下にまとめてみましたので、ご覧ください。


(02/15 2018 更新)

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作成日: 10/25 2023
竹野茂治@新潟工科大学 (shige@iee.niit.ac.jp)