Glimm 差分は、基本的には初期値を階段関数で近似して、 それに対する複数個の Riemann 問題を解くことで短い時間の解 (局所解) を作り、 ある時間でまたそれを階段関数で近似してそれを初期値とする局所解を作る、 ということを繰り返す。
この構成法の中で、階段関数への近似の際に確率変数を利用するので、 この Glimm 差分は ランダム選択法 (random choice method) とも 呼ばれる。
非線形の方程式なので、厳密には局所解を作ることができるための条件や 近似解の評価も近似解の 1 ステップ毎に変化し、 本当はそれを検証しつつ近似解を構成していく必要があるが、 それらは後回しにしてこの節では近似解の構成法のみを扱うことにする。
まず、初期値 は有界変動関数であるとする:
この初期値に対して、空間方向 () の差分幅 、 時間方向 () の差分幅 の、 初期値問題 (2.1) に対する差分近似解 を構成する。
今、これから構成する に対する特性速度 の値は一様に有界であるとする:
(3.22)
(3.23)
なお、この条件 (3.2) は、 Courant-Friedrichs-Lewy 条件 (CFL 条件) とも呼ばれ、 は と解 (波の速度) に応じて 小さく取らなければならないことを意味している。
奇数でかつ
(3.24)
(3.25)
階段部分は、 幅であり、 この幅も段差の個数も有限なので、 この はせいぜいこの幅でしか を近似しないように見える。 しかし、(3.3) より この幅はほぼ 幅に等しく、 よって が 0 に近くなるとだんだんこの幅が広くなり、 最終的には 全体を近似していくことになる。
なお、このような有限範囲への切り捨ては、 [Glimm], [Smoller], [Dafermos] 等には書かれていないが、 その方が後の説明にも都合がいいし、 これにより近似作業の手続きの有限性も保証されるので、 ここではこのようにすることにする。
Riemann 問題の波の速度 () は、 いずれの波もその両側の状態の特性速度でおさえられ、 を越えることはない。 よって、CFL 条件 (3.2) により、 その波は時間 までの間に 幅までは広がらず、 よって隣り合う波がぶつかることはない。
なお、2. で、 での値は の外では定ベクトルとしたので、 そこでは段差はなく、その定ベクトル値がそのまま解となるので、 では の外では その定ベクトルの値が となる。
(3.26)
の段差は、 では偶数の に対して のところにあったが、 では奇数の に対して のところに できることになる。
また、 ではすべての に対し (3.5) で を決めるが、 実際には の外では 定ベクトルとなることになる。
とし、 が奇数であるような , に対し
以後、この階段関数の値 を作るために代表値を取る点を、
この構成法では、このようにして近似解が作り続けていけるかどうかは 考えていなかったが、そのためには次のようなことを考える必要がある。