2.3 速度と流量

時刻 $t$ での $x$ における気体の速度を $u(t,x)$ とするが、 2.2 節同様、局所化する前の量での表現を考えてみる。

速度 $u(t,x)$ に対しては位置の移動が局所化の前の量であり、 時刻が $t=s$ のときに $x=\xi$ にあった気体の $t=T$ での位置を $x=X(T;s,\xi)$ と書くことにすると、 $X(s;s,\xi)=\xi$ であり、 また任意の $t_1\leq t_2\leq t_3$ に対して、

\begin{displaymath}
X(t_3;t_2,X(t_2;t_1,\xi))=X(t_3;t_1,\xi)\end{displaymath} (2.4)

を満たす。

速度 $u(t,x)$ は、位置の時間に関する微分であるから、

\begin{eqnarray*}u(t,x)
&=&
\lim_{\Delta t\rightarrow +0}
\frac{X(t+\Delta t;...
...t,x)}{\Delta t}
\\ &=&
\frac{\partial\, X}{\partial\, T}(t;t,x)\end{eqnarray*}

と書ける。一方で、$x=X(t;s,\xi)$$t$ に関する微分を考えると、 (2.4) より
$\displaystyle \frac{\partial}{\partial\, t}X(t;s,\xi)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \lim_{\Delta t\rightarrow +0}
\frac{X(t+\Delta t;s,\xi)-X(t;s,\xi)}{\Delta t}
=
\lim_{\Delta t\rightarrow +0}
\frac{X(t+\Delta t;t,x)-x}{\Delta t}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle u(t,x)
=
u(t,X(t;s,\xi))$ (2.5)

となるので、この式を $s$ から $T$ まで積分すれば、

\begin{displaymath}
X(T;s,\xi) = \xi + \int_s^T u(t,X(t;s,\xi)) dt
\end{displaymath}

となる。

さて、今 $c\leq t\leq d$ に対して $b=X(d;c,a)$、 すなわち $t=c$ のときに $x=a$ にあった気体が $t=d$ のときにいる位置を $x=b$ とすると、 $x=a$ をこの間に通過した質量 $N^1_{[c,d]}(a)$ は、 $t=d$ のときに $x=a$ から $x=b$ までの間に存在する 気体の質量に等しい。よって、

\begin{displaymath}
N^1_{[c,d]}(a)=M^1_{[a,b]}(d),\hspace{1zw}b=X(d;c,a)\end{displaymath} (2.6)

となるので、$d$$t$, $a$$x$ と置き換えて、 この (2.6) を $\bar{N}^1$, $\bar{M}^1$ で書き直せば、

\begin{displaymath}
\bar{N}^1(t,x)-\bar{N}^1(c,x)=\bar{M}^1(t,X(t;c,x))-\bar{M}^1(t,x)
\end{displaymath}

となり、この両辺を $t$ で微分すれば、 (2.3), (2.5) より、

\begin{eqnarray*}q(t,x)
&=&
\frac{\partial\, \bar{N}^1}{\partial\, t}(t,x)
=
...
...)
u(t,X(t;c,x))
-\frac{\partial\, \bar{M}^1}{\partial\, t}(t,x)\end{eqnarray*}

となるが、 $c\rightarrow t-0$ とすると $X(t;c,x)\rightarrow X(t;t,x)=x$ となるので、
\begin{displaymath}
q(t,x)=\rho(t,x) u(t,x)\end{displaymath} (2.7)

が得られる。

竹野茂治@新潟工科大学
2018-08-01