しかし、, が十分近ければ、 その解が今まで紹介した単純波で構成できることが知られている ([5])。
双曲型保存則方程式 (5.1) の すべての -特性方向が、 内で真性非線形であるか、または線形退化である場合、 内の各 に対し、 を含む十分小さい近傍 () をとれば、 この 内の任意の , に対して、 リーマン問題 (5.2) の解は、 原点を出発する高々 個の単純波 (膨張波、衝撃波、接触不連続) と、 それにはさまれる高々 個の定数ベクトル (一番左と一番右は , ) によって構成できる。
この定理は、後で説明するように気体の例の場合は 具体的に解を構成する手順を与えられるし、 と が近くない場合でも解が求められる場合もあるが、 一般の方程式 (5.1) の場合は 陰関数定理によって十分近くの , に対して 解の存在が示せるにすぎず、 具体的に構成するのも難しい。 しかし少なくともそのような , に対して 必ずその形で から へ単純波をつないで 解を作ることができることが保証される。
証明
-特性方向が真性非線形である場合は、
命題 5.1 の証明にある
を
と書くこととし
( のときは膨張波の右に現われるベクトル、
のときは衝撃波の右に現われるベクトル)、
-特性方向が線形退化である場合は、
を
このとき、
なので、
これにより、 から までを (, , ) によって単純波と定数ベクトルで つなぐことができ、それによって リーマン問題 (5.2) の解を構成できる。
5.2 節の内容、 およびこの定理の証明は、単にリーマン問題の解の存在だけではなく、 このような形の解が一意的に決まることも示している。
竹野茂治@新潟工科大学