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8.1 差分

厳密な解を求めにくい場合、計算機で数値計算を行い解の様子を調べる 方法がある。 微分方程式の数値計算法にも色々あるが、ここでは差分法を紹介する。

差分方とは、関数の微分 $f'(x)$ を、$h>0$ として

\begin{displaymath}
\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\end{displaymath} (31)

で置き換えることをいう。この差分の $h\rightarrow 0$ のときの極限が 微分であるので、$h$ が小さければ差分と微分との差は小さく、 よって微分は差分で近似できることになる。 式 (31) の他にも
    $\displaystyle \frac{f(x)-f(x-h)}{h}$ (32)
    $\displaystyle \frac{f(x+h)-f(x-h)}{2h}$ (33)

で置き換えることもできるが、(31) は前進差分、 (32) は後退差分、 (33) は中心差分と呼ばれる。

図 24: 前進、後退、中心差分
\includegraphics{image/differs.eps}

例えば、次のような常微分方程式の初期値問題

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{l}
\displaystyle \frac{dx(t)}{dt}=x(t) \ \ (t>0), \\ [1zh]
x(0)=1
\end{array}\right.\end{displaymath} (34)

を考えてみる。(34) の方程式の左辺を前進差分で 置き換えると

\begin{displaymath}
\frac{x(t+h)-x(t)}{h}\approx x(t)
\end{displaymath}

となり、よってこの近似方程式は

\begin{displaymath}
x(t+h)\approx (1+h)x(t)
\end{displaymath}

と書けることになる。$x(0)=1$ と与えられているので、これにより

\begin{eqnarray*}
&& x(h)\approx (1+h)x(0)=1+h,\\
&& x(2h)\approx (1+h)x(h)=(...
... (1+h)x(2h)=(1+h)^3,\\
&& \ldots \\
&& x(nh) \approx (1+h)^n
\end{eqnarray*}



と、 $t=h,2h,3h,\ldots$ での $x(t)$ の近似値が求められることになる。

元の方程式 (34) の真の解は $x(t)=e^t$ であるが、 上の近似解を $x=x_h(t)$ とすると、$t=mh$ のときこの値は

\begin{displaymath}
x_h(t)=x_h(mh)=(1+h)^m=(1+h)^{t/h}
\end{displaymath}

となる。今、$t$ を固定して $h\rightarrow 0$ とすると

\begin{displaymath}
(1+h)^{t/h} = \{(1+h)^{1/h}\}^t \rightarrow e^t
\end{displaymath}

となるので、この近似解 $x_h(t)$$h$ が小さい値のときは 確かに真の解 $x(t)$ を近似していることがわかる。

今、小さい正数 $h$ が与えられた場合、$x_n=x_h(nh)$ を計算する式は

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{l}
x_{n+1}=(1+h)x_n \ \ (n\geq 0),\\
x_0=x(0)=1\end{array}\right.\end{displaymath}

となり、すなわち数列の漸化式で与えられることになる。 このような漸化式の計算は、計算機で計算する場合にはむしろ都合が良い。 このように、差分法においては通常漸化式によって数値計算が行われる。


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Shigeharu TAKENO
2001年 9月 21日