5 複素形

(3), (5) の $J_{n+1/2}(x)$, $N_{n+1/2}(x)$ の式、 および $\phi_n$, $\psi_n$ の漸化式 (6) は 複素数を使うと多少簡単な式にまとめることもできる。 本節でそれを紹介する。

$\displaystyle \xi_n (x) = \phi_n(x) + i\psi_n(x),
\hspace{1zw}
M_\nu(x) = J_\nu(x) + iN_{\nu}(x)
$
とすると、(3), (5) より、
\begin{eqnarray*}\lefteqn{\sqrt{\frac{\pi x}{2}}\,x^n M_{n+1/2}(x)}
\\ &=&
\ph...
...+1)\pi/2)}(\phi_n(x)+i\psi_n(x))
\ =\
e^{ix}(-i)^{n+1}\xi_n(x)\end{eqnarray*}
となるので、
  $\displaystyle
M_{n+1/2}(x)
= \sqrt{\frac{2}{\pi x}}\,\frac{(-i)^{n+1}}{x^n}\,e^{ix}\xi_n(x)$ (8)
の形に表される。漸化式 (6) の方は、
\begin{eqnarray*}\xi_n(x)
&=&
\phi_n(x)+i\psi_n(x)
\\ &=&
(2n-1)(-\psi_{n-1}(x)+i\phi_{n-1}(x))
+ x^2(\phi_{n-2}(x)+i\psi_{n-2}(x))\end{eqnarray*}
より、
  $\displaystyle
\xi_n(x) = i(2n-1)\xi_{n-1}(x) + x^2\xi_{n-2}(x)\hspace{1zw}(n\geq 2)$ (9)
となることがわかる。 (4) より $\xi_0(x)=1$, $\xi_1(x)=x+i$ なので、 これで $\xi_n$ が帰納的に計算できることになる。

元々 (2) より、

$\displaystyle M_{n+1/2}(x)$ $\textstyle =$ $\displaystyle (-1)^n\sqrt{\frac{2}{\pi x}}\,x^{n+1}
\left(\frac{1}{x}\,\frac{d}{dx}\right)^n\frac{\sin x-i\cos x}{x}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle (-1)^{n+1}i\sqrt{\frac{2}{\pi x}}\,x^{n+1}
\left(\frac{1}{x}\,\frac{d}{dx}\right)^n\frac{e^{ix}}{x}$ (10)
なので、複素数を使って自然にひとつにまとまる形をしている。 容易に、
  $\displaystyle
\left(\frac{1}{x}\,\frac{d}{dx}\right)^n\frac{e^{ix}}{x}
=\frac{\eta_n(x)}{x^{2n+1}}\,e^{ix}
\hspace{1zw}(\mbox{$\eta_n(x)$\ は複素数係数の多項式})$ (11)
の形になることがわかるので、(10) より
$\displaystyle M_{n+1/2}(x)
= \sqrt{\frac{2}{\pi x}}\,
\frac{(-1)^{n+1}i}{x^n}\,e^{ix}\eta_n(x)
$
となるから、(8) より
$\displaystyle \eta_n(x) = i^n\xi_n(x)
$
となることがわかる。 つまり、$\eta_n$ を求めることと $\xi_n$ を求めることはほぼ同等である。

ところが、$\eta_n$ に関する漸化式を (11) から 作ろうとすると、$\eta_n$ に関する微分の関係式になってしまって、 計算にはあまり都合はよくない。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-01-11