4 等時降下曲線の解

式 (5) の被積分関数も、$y=\beta$ で分母が 0 になるので、 (5) を単純に $\beta$ で微分することはできないが、 実は良く知られているように、(5) の左辺は $G(y)$ の 1/2 階積分 (の定数倍) の形なので、 この式をもう 1/2 階積分すれば $G(y)$ については 簡単な式になることが期待される。

すなわち、両辺を $1/\sqrt{t-\beta}$ 倍して、 $\beta$ に関して 0 から $t$ まで積分する ($0<t<H$)。

\begin{displaymath}
\int_0^t\frac{d\beta}{\sqrt{t-\beta}}
\int_0^{\beta}\frac{...
...a-y}}\,dy
= \int_0^t\frac{\sqrt{2g}\,Td\beta}{\sqrt{t-\beta}}\end{displaymath} (6)

(6) の左辺の累次積分は、$G(y)>0$ より順序交換でき、
\begin{eqnarray*}
% latex2html id marker 1037 \mbox{(\ref{eq:G:1/2}) の左辺}
&=...
...)s}}
\ =\
\int_0^tG(y)dyB\left(\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)\end{eqnarray*}


となる。ここで、$B(p,q)$ はベータ関数で、良く知られているように
\begin{displaymath}
B\left(\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)
= \frac{\Gamma(1/2)^2}{\Gamma(1)}
= \pi
\end{displaymath}

である。一方 (6) の右辺は、
\begin{displaymath}
\int_0^t\frac{\sqrt{2g}\,Td\beta}{\sqrt{t-\beta}}
= \sqrt{2g...
...t{t-\beta}\right]_{\beta=0}^{\beta=t}
= 2\sqrt{2g}\,T\sqrt{t}
\end{displaymath}

なので、結局
\begin{displaymath}
\int_0^tG(y)dy = \frac{2\sqrt{2g}\,T}{\pi}\sqrt{t}\end{displaymath} (7)

が、$0<t<H$ である任意の $t$ に対して成り立つことになる。 この式を $t$ で微分すれば、$p$ に対する方程式
\begin{displaymath}
G(t) = \sqrt{1+(p'(t))^2} = \frac{c_0}{\sqrt{t}}\end{displaymath} (8)

が得られる ( $c_0 = T\sqrt{2g}/\pi$)。 $p'(t)>0$ より、(8) から
\begin{displaymath}
p'(t) = \sqrt{\frac{c_0^2}{t}-1} = \sqrt{\frac{c_0^2-t}{t}}
\end{displaymath}

となるので、$p(0)=0$ より結局
\begin{displaymath}
p(y)
= \int_0^y \sqrt{\frac{c_0^2-t}{t}} \,dt
= c_0^2\int_0^{y/c_0^2} \sqrt{\frac{1-s}{s}}\,ds\end{displaymath} (9)

となる。 あとはこの積分を求めればよい。積分
\begin{displaymath}
F(\xi) = \int_0^{\xi} \sqrt{\frac{1-s}{s}}\,ds
\hspace{1zw}(0<\xi<1)\end{displaymath} (10)

は、置換 $s=(1-\cos\theta)/2$, ($0<\theta<\pi$) により、
\begin{eqnarray*}F(\xi)
&=&
\int_0^{\theta_\xi} \sqrt{\frac{1+\cos\theta}{1-...
...+\sin\theta_\xi),
\\
\xi
&=&
\frac{1}{2}(1-\cos\theta_\xi)\end{eqnarray*}


となる。 ここで、 $\phi=\pi-\theta_\xi$ とすると、$0<\phi<\pi$ で、
\begin{eqnarray*}\frac{\pi}{2} - F(\xi)
&=&
\frac{\pi}{2} - \frac{1}{2}(\pi -...
... - \frac{1}{2}(1-\cos(\pi - \phi))
\ = \ \frac{1}{2}(1-\cos\phi)\end{eqnarray*}


となり、これは [1] で見たように、 $\pi/2 - F(\xi)$$x$ 軸、 $1-\xi$$y$ 軸のサイクロイド (の 1/2 縮小版) の左半分を表すので、 $F(\xi)$ は、それを $(\pi/4,1/2)$ を中心に上下、左右に反転したもの ($F(\xi)$$x$ 軸、$\xi$$y$ 軸)、 すなわち「逆さサイクロイド」の右半分のグラフになり、 原点がその最下点となる (図 2)。
図 2: サイクロイドの反転
\includegraphics[width=0.7\textwidth]{fig-cyc2-hanten.eps}

$p(y) = c_0^2F(y/c_0^2)$ なので、$x=p(y)$ は それを $x$, $y$ 方向に $c_0^2$ 倍したものであり、 やはり逆さサイクロイドが解となることがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年3月22日