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5 数値計算

式 (1) と式 (4) とでは かなり見た目に違いがありますが、 実際どれくらい違うのか数値計算してみました。

まず、式 (1) の $L_1$ と式 (4) の $L_2$ は、

\begin{displaymath}
F(x)=x^2,  G(x)=x\sqrt{1+x^2}+\log(x+\sqrt{1+x^2})
\end{displaymath}

とすると、それぞれ

\begin{displaymath}
L_1 = \frac{d}{4\pi}\{F(\hat{R})-F(\hat{r})\},
\hspace{1zw}
...
...\left(\hat{R}=\frac{2\pi}{d}R, \hat{r}=\frac{2\pi}{d}r\right)
\end{displaymath}

と書けます。 よって、$F(x)$$G(x)$ が近ければ、 この $L_1$$L_2$ 両者の値も近くなりますが、 $F(x)$, $G(x)$ のグラフを並べて書いてみると 図 2, 3 のようになります。

図 2: $0\leq x\leq 1$ のグラフ
\includegraphics[width=18.5zw]{graph1.eps}
図 3: $0\leq x\leq 20$ のグラフ
\includegraphics[width=18.5zw]{graph2.eps}
見てわかる通り、$x=0$ の近くでは多少違いがあるようですが、 大きい $x$ に対しては、$F(x)$$G(x)$ の値に比べて その違いはごく小さなものになります。

実際に計算してみるとわかりますが、

\begin{eqnarray*}F'(x) &=& 2x,\\
G'(x) &=& \sqrt{1+x^2}+x\frac{x}{\sqrt{1+x^2}...
...+x^2})
 &=&
%=
\frac{x}{x+\sqrt{1+x^2}}+\log(x+\sqrt{1+x^2})\end{eqnarray*}

なので、

\begin{displaymath}
\{G(x)-F(x)\}' = 2\sqrt{1+x^2} - 2x \geq 0
\end{displaymath}

より、$G(x)-F(x)$$x\geq 0$ で常に 0 以上で、 かつ増加する関数ですが、

\begin{displaymath}
G(20)-F(20)=4.189,\hspace{1zw}G(100)-F(100)=5.798,
\hspace{1zw}G(1000)-F(1000)=8.101
\end{displaymath}

のようにその増加は非常にゆっくりです。

実際の CD の場合、 $d=1.6\mu\mathrm{m}=0.0016\mathrm{mm}$ のようで、 $R$, $r$ は簡単に測ってみたところ、 $R=55\mathrm{mm}$, $r=22\mathrm{mm}$ くらいのようですから、

\begin{displaymath}
\hat{R} = \frac{2\pi}{d}R \approx 2.16\times 10^5,\hspace{1z...
...es 10^4,\hspace{1zw}
\frac{d}{4\pi} \approx 1.27\times 10^{-4}
\end{displaymath}

として計算してみると、

\begin{eqnarray*}L_2-L_1
&=&
\frac{d}{4\pi}\{G(\hat{R})-G(\hat{r})\}
-\frac{d...
... % &=&
=
1.16\times 10^{-4}\mathrm{mm}
= 0.116 \mu\mathrm{m}\end{eqnarray*}

というごく小さい値になります。

なお、$L$ 自体の長さは、

\begin{eqnarray*}L_1
&=& \frac{d}{4\pi}\{F(\hat{R})-F(\hat{r})\}
\\ &=&
1.27\...
...&=&
=
4.98\times 10^6\mathrm{mm}
%\\ &=&
=
4.98 \mathrm{km}\end{eqnarray*}

となります。

よって、(1) と (4) は CD の場合は非常に近い、 と言えるのではないかと思います。


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竹野茂治@新潟工科大学
2005年9月23日