4 変形ベッセル関数の漸近展開
次に、変形ベッセル関数
の漸近展開を考える。
は、次のテイラー展開の形で定義される。
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(11) |
これは、元々 0 次のベッセル関数
に対し、
を取ったもの、
すなわち
としたものであり、そのため
「変形」ベッセル関数と呼ばれる。
の漸近展開を求めるには (11) のテイラー展開のままでは
難しいので、次のような公式を利用する。
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(12) |
まず、この公式が成り立つことを示そう。
のマクローリン展開は、
であるから、(12) の右辺は、
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(13) |
となる。ここで、
とすると、部分積分により、

となるから、
となる。よって、
が得られる。これを (13) の右辺に代入すれば (11) になるので、(12) が示されたことになる。
さて、(12) は、

と書き直すこともできるので、よって、
とし、この
,
, それぞれの漸近展開を求めることにする。
なお、明らかに
の方が
より大きいので、
の主要な展開項は
の方であることが予想される。
まず、
を考えよう。
では
だから、
のとき、
となることがわかる。
よって、この 0 への収束の速さ (オーダー) をまず考えてみる。
の 1 への収束は、
が 0 に近い程遅くなる。
つまりその近くが最も大きな項を与えると予想される。
よって
をさらに 2 つに分け、
とすると、この
の方が主要部となる。
なお、
自体にはあまり意味はなく、
から
のどこで分けても構わない。
では、
であるから、
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(14) |
となるので、
となる。
一方
の方は、
とすると、
となるが、
では
であるので、
となるから、
であることがわかる。
つまり、
の最も大きい項は
の
の項
だろうと予想される。
実際、部分積分により、
となり、よって
となることがわかる。
一方、(14) より
であるから、
よって
の第 1 近似は、
となる。
次に第 2 近似を考える。
(15) で
とすると、
再び部分積分により、

となるから、これと (14) より
となることがわかる。よって、
となる。これを繰り返せば、結局
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(16) |
であることがわかる。
よって後は
を求めればよいが、一般二項定理を用いれば、
となるので、
がわかる。ここで、二項係数は
となるので、
となり、(16) より結局
の漸近展開は、
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(17) |
であることがわかる。
次に、むしろ
の主要項である
の方を考える。
は、
のときに明らかに無限大に発散するが、
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(18) |
は、
より 0 に収束する。
よって、
であるから、
まずこの
の 0 への収束オーダーを考えてみる。
今、
とすると、
であるから、
となるが、
なので、
とすれば、
となり、さらに
とすると、
であるから、
となる。
よって、
の極限を考えてみよう。
今、上のように、
とすると、
となるから、(18) は
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(19) |
となる。
のとき
に注意すると、
(19) より
が言えるので、
の第 1 近似は
となる。
第 2 近似は、
の極限を考える。
(19) より、
![\begin{eqnarray*}\lefteqn{x\left(\sqrt{x}e^{-x}g_{+}(x)-\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\ri...
...ht)^{-1/2}-1\right\}du
-\int_{\sqrt{x}}^\infty e^{-u^2}du\right]\end{eqnarray*}](img176.gif)
と変形すると、

となる。また
の漸近展開式 (5) より、

であるから、
となることがわかる。
これは、より形式的に次のようにしても得られる。
一般二項定理
より、(19) から
であるから、

となる。
そしてこの計算を繰り返すことにより、
実は (20) の右辺の
を
にしたものが (20) の
左辺の漸近展開であることがわかる。
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(21) |
後はこの最後の積分を求めればよい。今、
とすると、部分積分により、

となるので、
となり、結局 (21) は
のようになる。
の漸近展開 (17) と
の漸近展開 (22) を比較すると、
明らかに (22) の各項は (17) の
すべての項より大きいので、
結局 (22) が
の漸近展開であることがわかる。
竹野茂治@新潟工科大学
2010年4月8日