3 誤差関数の漸近展開
漸近展開の対象となる関数は、それなりに厄介な関数である場合が多く、
またテイラー展開のように決まった方法もあまりないので、
個別に特別な方法で求めていくことが多いようである。
本節ではまずそのような例の 1 つとして誤差関数
の漸近展開を
考えてみることにする。
は、次の式で定義される関数である。
の不定積分を簡単な関数で表すことはできないので、
を積分を使わずに書くことはできない。
しかし、
は微分が
と簡単な式で書けるので、
の場合はロピタルの定理を用いて
漸近展開を得ることができる。
よく知られているように、
であるから、
となる。これは、 が第 1 近似であることを示している。
第 2 近似は
|
(4) |
となる を見つければよいのであるが、
(4) の分子を荒く評価すると、
であるから、
であることがわかる。
よって
の極限を考えてみると、
これは の不定形なので、ロピタルの定理により、
となってしまうので、実際には
であり、
この分母では少し大きい。よって、
としてみると、
であるから、 とすれば (4) が成り立つことが
ロピタルの定理によりわかる。
すなわち第 2 近似は、
|
(5) |
となる。同様に第 3 近似は
|
(6) |
となる を見つければよいが、
なので
とすれば
となるから とすればよい。よって第 3 近似は、
となる。以下、同様に第 近似は
の形となる。この を求める。この場合は、
|
(7) |
となるわけであるが、
であるから、(7) が成り立つには、
(8) のかっこ内の から までの
項がすべて消える必要がある。よって、
が成り立つ必要があり、ここから
となることがわかる。ここで、 は、
を表す記号で、さらに であるとする。
なお、この は、以下のように通常の階乗を用いて表すこともできる。
結局、
の漸近展開は
となることがわかった。
なお、(9) の右辺は無限和の形で書いているが、
|
(10) |
であるから、この級数は無限級数としては発散級数であり、
よってこの右辺はあくまで定義 1 の意味での和であることに注意する。
この (10) が成り立つことは、
次の項との絶対値の比を考えればわかる。
その比は
であるが、これはどのような に対しても、
あるところからは 1 を越えて大きくなる。
(10) の左辺はそのような数を
順にかけて作られる数列であるから、
よって (10) が成り立つことになる。
竹野茂治@新潟工科大学
2010年4月8日