4 最初の命題の証明

ここまでの準備の元、命題 [*] を証明する。 なお、[*] 節最後に述べたように、 $\mu_j=0$, $\sigma_j=1$, $a_j>0$ として考える。

$x_1,\ldots,x_n$ は独立なので、$n$ 次元確率変数 $(x_1,\ldots,x_n)$ の 密度関数 $f(x_1,\ldots,x_n)$

$\displaystyle f(x_1,\ldots,x_n)
= f_0(x_1)\cdots f_0(x_n)
= \left(\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\right)^ne^{-(x_1^2+\cdots+x_2^2)/2}
$
となる。よって、 $y=a_1x_1+\cdots+a_nx_n+b=S_n$ の分布関数 $G(y)$ は、 $y=S_n\leq t$$x_n$ について書けば $x_n\leq (t-S_{n-1})/a_n$ と なるので、
\begin{eqnarray*}G(t)
&=&
\mathrm{Prob}\{y\leq t\}
\ =\
\mathrm{Prob}\{x_n...
...0(x_{n-1})dx_{n-1}
\int_{-\infty}^{(t-S_{n-1})/a_n} f_0(x_n)dx_n\end{eqnarray*}
となり、$y$ の密度関数 $g(y)=G'(y)$ は、
$\displaystyle g(t)$ $\textstyle =$ $\displaystyle G'(t)
\ =\
\int_{\mbox{\boldmath\scriptsize R}}f_0(x_1)dx_1\cdot...
...ze R}}f_0(x_{n-1})
f_0\left(\frac{t-S_{n-1}}{a_n}\right)\frac{1}{a_n}\,dx_{n-1}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \left(\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\right)^n\frac{1}{a_n}
\int_{\mbox{\bo...
...{\mbox{\boldmath\scriptsize R}}
e^{-T_{n-1}/2-(t-S_{n-1})^2/(2a_n^2)}\,dx_{n-1}$ (13)
となる。ここで $T_n=x_1^2+\cdots x_n^2$ とする。

この指数の部分は、$x_j$ にする 2 次式で、 $a_n^2=p^2$ と書くことにすれば、それを $x_{n-1}$ について整理すると、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{-\,\frac{T_{n-1}}{2}\,-\,\frac{(t-S_{n-1})^2}{2p^2}
\...
...^2}(t-S_{n-2})x_{n-1}+\frac{(t-S_{n-2})^2}{p^2}
+T_{n-2}\right\}\end{eqnarray*}
これに、補題 [*] を用いれば、
\begin{eqnarray*}a &=& \frac{p^2+a_{n-1}^2}{p^2},
\\
\frac{D}{4}
&=&
\frac{...
...=&
-\,\frac{1}{2}\,T_{n-2}-\,\frac{(t-S_{n-2})^2}{p^2+a_{n-1}^2}\end{eqnarray*}
より、$x_{n-1}$ での積分の結果は、
  $\displaystyle
\sqrt{\frac{2\pi}{a}}\,e^{D/(8a)}
=\sqrt{\frac{2\pi p^2}{p^2+a_{n-1}^2}}
\,e^{-\{T_{n-2}+(t-S_{n-2})^2/(p^2+a_{n-1}^2)\}/2}$ (14)
となる。これと、積分前の
$\displaystyle e^{-\{T_{n-1}+(t-S_{n-1})^2/p^2\}/2}
$
を比較すると、全体が $\sqrt{2\pi p^2/(p^2+a_{n-1}^2)}$ 倍され、 指数部分は $x_{n-1}$ の項が消え、代わりに $p^2$$a_{n-1}^2$ が 追加されることがわかる。

よって、([*]) を $x_{n-2}$ で積分すると、 その結果は

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\sqrt{\frac{2\pi p^2}{p^2+a_{n-1}^2}}
\sqrt{\frac{2\p...
...2}}
\,e^{-\{T_{n-3}+(t-S_{n-3})^2/(p^2+a_{n-1}^2+a_{n-2}^2)\}/2}\end{eqnarray*}
となる。

これを続けていけば、最後の $x_1$ での積分の結果 $g(t)$ は、 $\vec{a}=(a_1,\ldots,a_n)$ とすれば、$p^2=a_n^2$ より以下のようになる。

\begin{eqnarray*}g(t)
&=&
\left(\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\right)^n\frac{1}{a_n}
\...
...{\sqrt{2\pi}\vert\vec{a}\vert}\,e^{-(t-b)^2/(2\vert\vec{a}\vert)}\end{eqnarray*}
これは、$y$ の密度関数 $g(y)$ が 正規分布 $N(b,\vert\vec{a}\vert^2)=N(b,\sum a_j^2)$ の密度関数に等しいことを 意味し、 これで $\mu_j=0$, $\sigma_j=1$ の場合の命題 [*] が 示されたことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-07-29