4 チェビシェフの不等式の分散への適用

本節では、チェビシェフの不等式を利用して、 不偏分散と標本分散の母分散への一致性を、 不偏分散の極限を考えることに帰着させる。

まず、$V_1$ に対してチェビシェフの不等式を適用すると、 (6) より、

\begin{displaymath}
P(\vert V_1-\sigma^2\vert>k)\leq\frac{1}{k^2}V[V_1]
\end{displaymath}

が言えるので、よって、もし
\begin{displaymath}
\lim_{n\rightarrow\infty}V[V_1]=0\end{displaymath} (7)

であれば、$V_1$$\sigma^2$ に対する一致性が言えることになる。

また、$V_2$ に対しては、 (6) より、チェビシェフの不等式は

\begin{displaymath}
P\left(\left\vert V_2-\frac{n-1}{n}\sigma^2\right\vert>k\right)
\leq\frac{1}{k^2}V[V_2]\end{displaymath} (8)

となるが、 $\vert V_2-\sigma^2\vert>\hat{k}$ ($\hat{k}$ は任意の正数) のとき、
\begin{displaymath}
\left\vert V_2-\frac{n-1}{n}\sigma^2\right\vert
\geq \vert V...
...\frac{n-1}{n}\sigma^2\right\vert
>\hat{k} - \frac{\sigma^2}{n}
\end{displaymath}

であり、また、
\begin{displaymath}
V[V_2]
= V\left[\frac{n-1}{n}V_1\right]
= \left(\frac{n-1}{n}\right)^2V[V_1]
\end{displaymath}

なので、(8) より、
\begin{displaymath}
P(\vert V_2-\sigma^2\vert>\hat{k})
\leq P\left(\left\vert V_...
...frac{\sigma^2}{n}\right)^2}
\left(\frac{n-1}{n}\right)^2V[V_1]
\end{displaymath}

となることがわかる。 よって、この場合も、(7) が言えれば、
\begin{displaymath}
\lim_{n\rightarrow\infty}P(\vert V_2-\sigma^2\vert>\hat{k})=0
\end{displaymath}

が言えることになるので、 結局 $V_1$, $V_2$$\sigma^2$ に対する一致性は、 (7) を示せばよいことになる。

なお、(7) を示すために、 今後 $E[X_i^k]=\xi_k$ は、$k=1,2,3,4$ に対して「有限である」 と仮定する。

竹野茂治@新潟工科大学
2013年7月4日