3 不偏分散、標本分散の平均

本節では、不偏分散、標本分散の平均 (確率変数としての平均) を計算する。 そのために、平方和 $S$ の平均をまず求める。

(2) により、

\begin{displaymath}
E[S] = nE[\overline{X^2}-\overline{X}^2]
\end{displaymath}

となるが、 $\overline{X}^2$
\begin{displaymath}
\overline{X}^2
= \left(\frac{1}{n}\sum_{i=1}^nX_i\right)^2
...
...c{1}{n^2}\left(\sum_{i=1}^nX_i^2 + \sum_{i\neq j}X_iX_j\right)
\end{displaymath}

と展開すれば、$X_i$ は互いに独立なので $i\neq j$ のとき $E[X_iX_j]=E[X_i]E[X_j]$ であり、 よって、今後 $E[X_i^k]=\xi_k$ と書くことにすれば、
\begin{eqnarray*}E[S]
&=&
n\cdot\frac{1}{n}\sum_{i=1}^nE[X_i^2]
-n\cdot\frac...
..._2 - \frac{1}{n}\cdot \Perm{n}{2}\xi_1^2
=
(n-1)(\xi_2-\xi_1^2)\end{eqnarray*}


となる。ここで、$\Perm{n}{k}$$n$ 個から $k$ 個を取って並べる順列の数で、
\begin{displaymath}
\Perm{n}{k} = n(n-1)(n-2)\cdots (n-k+1)
\end{displaymath}

である。一方、$X_i$ の分散 $\sigma^2$ は、
\begin{displaymath}
\sigma^2
= V[X_i]
= E[(X_i-\mu)^2]
= E[X_i^2]-E[X_i]^2
\end{displaymath}

より、
\begin{displaymath}
\sigma^2 = \xi_2-\xi_1^2\end{displaymath} (5)

となるので、結局、$S$ の平均は、
\begin{displaymath}
E[S] = (n-1)\sigma^2
\end{displaymath}

であることがわかり、よって不偏分散、標本分散の平均は、
\begin{displaymath}
E[V_1] = \frac{1}{n-1}E[S] = \sigma^2,
\hspace{1zw}
E[V_1] = \frac{1}{n}E[S] = \frac{n-1}{n}\sigma^2\end{displaymath} (6)

となる。

竹野茂治@新潟工科大学
2013年7月4日