[1] では、二項分布 ( は自然数、) に従う 確率変数 に対し、 その平均 、標準偏差 () に 対して と を固定したときに、 その のときの確率関数 と の積の 極限が、標準正規分布の密度関数 に収束すること、すなわち
を、スターリングの公式を用いて説明した。 しかし、 は本来 の整数の値のみを取る変数であるが、 と を固定した場合には一般には は整数にはならず、 厳密にはその議論に修正が必要である。それは 5 節で行う。また、(1) は各点収束の意味での ド・モアブル=ラプラスの中心極限定理であるが、 分布関数の意味での中心極限定理は、任意の実数 に対して、
が成り立つことである。(3) の右辺は、 標準正規分布の分布関数なので、 よって二項分布のある意味での標準化 ( ) の分布関数の 極限が、 標準正規分布の分布関数に収束することを意味している。この式は、形式的にはほぼ各点収束の極限の式 (1) を、 の範囲で両辺積分した形になっているのであるが、 その積分は無限幅での広義積分なので、 その積分と に関する極限との順序交換ができるという保証を与えなければ その厳密な証明にはならない。 のような有限な範囲での積分した形、 すなわち
例えば、 は
積分範囲が有限であれば、関数が一様収束すれば積分の極限と 極限の積分は一致するが、積分範囲が無限である広義積分では それでは不十分である。
本稿では、それを保証するために以下のルベーグ収束定理を用いる。
が各 に対して
に収束し、 に無関係な があって、 となるとき、 も も 上可積分で、
本来ルベーグ収束定理は、
正でない値を取る関数にも適用できるのであるが、
本稿では正の関数だけ考えれば十分であるので、この形で紹介しておく。
また、上の
の例の場合は、
(6) は満たしているが、
(7) を満たすような を
取ることができないため、(8) が
成り立たない。
よって、分布関数の収束性を示すためには、 (7) を満たすような の 存在を示すことが必要となる。 それは 6 節で考える。
竹野茂治@新潟工科大学