3 p,q の大小

(3) の証明を行う前に、 (3) は $p\leq q$ の場合、すなわち $0<p\leq 1/2$ の場合 のみ証明すれば良いことを先に示しておく。 なおその場合、厳密に言えば、(3) だけでなく、 等号を除いたバージョン
  $\displaystyle
\lim_{n\rightarrow \infty}{\mathrm{Prob}\left\{\frac{x-\mu_n}{\s...
...\begin{array}{c}n\\ k\end{array}\right)p^kq^{n-k}}
= \int_{-\infty}^t f_0(u)du$ (9)
も必要になる。

もし、$0<p\leq 1/2$ の場合に (3), (9) が成り立てば、 $1/2<p<1$ の場合は、$q=1-p<1/2$ なので、 $j=n-k$ とすれば

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\mathrm{Prob}\left\{\frac{x-\mu_n}{\sigma_n}\leq t\rig...
...t\sigma_n}\left(\begin{array}{c}n\\ j\end{array}\right)q^jp^{n-j}\end{eqnarray*}
となる。ここで $\tilde{\mu}_n = n-\mu_n = nq$ とした。 ここから $\tilde{x}\sim B(n,q)$ とすると、
$\displaystyle \mathrm{Prob}\left\{\frac{x-\mu_n}{\sigma_n}\leq t\right\}
= 1-\mathrm{Prob}\left\{\frac{\tilde{x}-\tilde{\mu}_n}{\sigma_n}<-t\right\}
$
がいえることになり、$0<q<1/2$ なので、(9) により その極限は
$\displaystyle \lim_{n\rightarrow \infty}{\mathrm{Prob}\left\{\frac{x-\mu_n}{\sigma_n}\leq t\right\}}
=
1-\int_{-\infty}^{-t}f_0(u)du
$
となるが、$f_0(u)$ は偶関数なので、
$\displaystyle 1-\int_{-\infty}^{-t}f_0(u)du
= 1-\int_{t}^{\infty}f_0(u)du
= \int_{-\infty}^{t}f_0(u)du
$
となって、これで $1/2<p<1$ の場合にも (3) が 成り立つことになる。

よって、以後は $0<p\leq 1/2$ として任意の $t$ に対して (3), (9) が成り立つことを示す。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-09-09