B. 曲率半径の性質の証明

この節では補遺として、3 節の最後に述べた、 以下の命題を証明を記す。


命題 1

平面曲線 $L$ 上の点 $P$ での曲率半径が $R$ ($>0$) であるとき、 $0<\rho<R$ である $\rho$ を半径に持つ円 $C$ が 点 $P$ で ($L$ の凹んでいる側に) 接しているとすると、 $L$$C$ との交点は、$P$ の十分小さい近傍には $P$ 以外には存在しない。


証明

背理法で示す。

もし、$L$$C$ の交点が、 $P$ のいくらでも近くに存在するとすると、 その交点からなる $P$ に収束する点列 $P_{n}$ ( $n=1,2,3,\ldots$) を取ることができる。 ただし、そのような交点のうち、

そこで曲線 $L$ と円 $C$ が接していなくて、 かつ $P$ に向かう方向に見て曲線 $L$ が円 $C$ 内に入っていくような点
は除くことにする。 円に入ったところの交点の次の交点は、 円から出る交点か円に接する交点のどちらかであるから、 そのような排除の前に $P$ に収束する交点列が存在すれば、 そのような排除を行っても $P$ に近づく交点は無限に存在することになるから、 $\{P_n\}_n$ はこのようにして取った点列であるとする。

$C$ の中心を $Q$ とすると、$CQ=\rho<R$ であるが、 $P_n$ での $L$ の法線を考えると、 $P_n$ が円と接している場合は、それはこの円の直径になるから $P$ の法線との交点は $Q$ となる。 $P_n$ が円と接していない場合は、 $P_n$$L$ がそこから $C$ を出ていくような点であるから、 $P_n$ での $L$ の法線は $P_n$ を通る直径よりも $P$ に向かって傾いていて、 よって、$P_n$ での法線と $P$ での法線との交点は半径 $PQ$ 上にある。

これにより、$P_n$ での法線と $P$ での法線との交点は、 すべて半径 $PQ$ 上にあることになり、 その $n\rightarrow\infty$ の極限点も $PQ$ 上にあることになるから、 その点と $P$ との距離 $r$$r\leq \rho$ となる。 しかし、この距離 $r$ が、3 節で見たように $P$ での曲率半径であるから、 $r=R>\rho$ でなくてはならず、これは不合理となる。

ゆえに、$P$ の近くに限りなく $L$$C$ との交点が存在することはなく、 交点が $P$ しかないような $P$ の近傍を取ることができる。


竹野茂治@新潟工科大学
2009年3月3日