2 置換積分に帰着できる場合

$\cos nx$, $\sin nx$ の積分は
\begin{displaymath}
\int f(ax+b) dx = \frac{1}{a} F(ax+b)+C
\hspace{1zw}(F'(u)=f(u) \mbox{ のとき})\end{displaymath} (1)

を用いれば容易に求められ
\begin{displaymath}
\int\cos nx dx = \frac{1}{n} \sin nx +C,\hspace{1zw}
\int\sin nx dx = -\frac{1}{n} \cos nx +C,\hspace{1zw}\end{displaymath} (2)

となるが、 積は直接積分はできないので1$\cos^n x$$\sin^n x$ の積分は容易ではない。 例えば $\sin^2 x$ の積分でも半角の公式
\begin{displaymath}
\cos^2 x = \frac{1+\cos 2x}{2},\hspace{1zw}
\sin^2 x = \frac{1-\cos 2x}{2}\end{displaymath} (3)

を利用して、
\begin{displaymath}
\int\sin^2 x dx
= \int\left(\frac{1}{2}-\frac{1}{2} \cos 2x\right) dx
= \frac{x}{2}-\frac{1}{4}\sin 2x + C
\end{displaymath}

のように行わなければならず、一般に $\cos^m x\sin^n x$ の積分は、 何通りか知られているがいずれも容易ではない。

まず本節では、その積分を変形することでより容易な形に帰着させ、 置換積分で簡単にできる場合について具体的例を混じえて紹介する。 以下、

\begin{displaymath}
I(m,n)=\int\cos^m x\sin^n x dx
\end{displaymath}

と書くことにする。

$\cos^2x+\sin^2x=1$ を用いれば $I(m,n)$

\begin{displaymath}
I(k,1), I(k,0), I(1,k), I(0,k)\end{displaymath} (4)

の形の積分に帰着されることがわかる。例えば、$I(6,5)$
\begin{eqnarray*}I(6,5)
&=&
\int\cos^6x\sin^5x dx
=
\int\cos^6x\sin^4x\sin ...
...^4 x-\sin^6 x)\sin^5x dx
 &=&
I(0,5)-3I(0,7)+3I(0,9)-I(0,11)\end{eqnarray*}


といった具合である。

(4) の 4 通りの積分のうち、 $I(k,1)$, $I(1,k)$、および $k$ が奇数の場合の $I(k,0)$, $I(0,k)$ は、 いずれも置換積分によりそれほど難しくなく求めることができる。 そして $I(m,n)$$m$$n$ の少なくとも一方が奇数の場合は、 それをすべてこれらの形に帰着することができるので 置換積分で積分できることになる。

一般に、

\begin{displaymath}
I_1 = \int f(\cos x)\sin x dx
\end{displaymath}

の形の積分は $u=\cos x$ と置換すれば、
\begin{displaymath}
\frac{du}{dx} = (\cos x)' = -\sin x,\hspace{1zw}
\sin x dx = (-1) du
\end{displaymath}

であるので、これにより
\begin{displaymath}
I_1 = -\int f(u) du = -F(u)+C = -F(\cos x)+C\hspace{1zw}(F'(u)=f(u))\end{displaymath} (5)

と積分できる。同様に、
\begin{displaymath}
I_2 = \int f(\sin x)\cos x dx
\end{displaymath}

$u=\sin x$ と置換すれば、
\begin{displaymath}
\frac{du}{dx} = (\sin x)' = \cos x,\hspace{1zw}
\cos x dx = du
\end{displaymath}

であるので、これにより
\begin{displaymath}
I_2 = \int f(u) du = F(u)+C = F(\sin x)+C\end{displaymath} (6)

と求まる。

よって、$m$, $n$ の一方が奇数の場合は、 そちらの三角関数を一つだけ残せば後はその三角関数の偶数乗が残るが、 それは $\cos^2x+\sin^2x=1$ を用いて他方の三角関数に変換できるから、 結局上の $I_1$$I_2$ のいずれかの形に書き換えことができる。

例えば、$I(6,5)$ の場合は、

\begin{eqnarray*}I(6,5)
&=&
\int\cos^6 x\sin^5 x dx
=
\int\cos^6 x\sin^4 x\sin x dx
 &=&
\int\cos^6 x(1-\cos^2 x)^2\sin x dx\end{eqnarray*}


$I_1$ の形に変形できる。よって、$u=\cos x$ と置換すれば、
\begin{eqnarray*}I(6,5)
&=&
-\int u^6(1-u^2)^2 du
=
-\int (u^6-2u^8+u^{10})...
...1}{7} \cos^7 x+\frac{2}{9} \cos^9x-\frac{1}{11} \cos^{11} x +C\end{eqnarray*}


と積分できる。

よって残るのは、$I(m,n)$$m$$n$ の両方が偶数の場合であるが、 これは本節のような置換積分では計算ができず容易ではない。 次節以降でそのような積分を考えていくことにする。

なお、$m$, $n$ の両方が偶数の場合は (4) の形に帰着させると $k$ が偶数の場合の $I(k,0)$ の形の和か、 $I(0,k)$ の形の和になるので、 後はこの形のみを考えればよいことになるが、 さらに $I(0,k)$ は以下のようにして $I(k,0)$ に帰着できることがわかるので、 これらはすべて $k$ が偶数の場合の $I(k,0)$ を求めることに帰着することになる。

今、 $I(0,k)=I(0,k)(x)$ に対して、$x=\pi/2-t$ と置換すれば $dx=(-1) dt$ であり、

\begin{displaymath}
\sin x = \sin\left(\frac{\pi}{2} -t\right) = \cos t,\hspace{1zw}
\cos x = \cos\left(\frac{\pi}{2} -t\right) = \sin t\end{displaymath} (7)

なので、
\begin{displaymath}
I(0,k)=I(0,k)(x)
=\int\sin^k x dx = -\int\cos^k t dt = -I(k,0)(t)
\end{displaymath}

となる。よって $I(k,0)(t)$$t$ の式として求められれば $t=\pi/2-x$, 特に $\sin t=\cos x$, $\cos t=\sin x$ と戻して全体を $(-1)$ 倍すれば $I(0,k)(x)$ が求まることになる。 $\sin 2t$$\cos 3t$ などの式が現れた場合は $t=\pi/2-x$ によって $x$ の式に戻せばよい。

よって、以後は $I(k,0)$$J(k)$ と書くことにして、 主に $k$ が偶数の場合の $J(k)$ だけを考えることにするが、 場合によっては (4) に帰着させる前の $m$, $n$ が偶数の $I(m,n)$ についても言及することにする。

竹野茂治@新潟工科大学
2010年3月12日