2 特殊化

(1), (2) の公式は、 いずれも $a$, $b$ に関して「斉次」すなわちすべての項が $a$, $b$ に関して同じ次数なので、片方を 1 にした形に帰着できる。 まず本節ではその変形を行う。

(1) の両辺を $b^n$ で割り、$a/b=x$ とすると、

\begin{eqnarray*}左辺
&=&
\frac{(a+b)^n}{b^n}
\ =\
\left(\frac{a+b}{b}\right)...
... &=&
{}_{n}C_{0}x^n + {}_{n}C_{1}x^{n-1}
+ \cdots + {}_{n}C_{n}\end{eqnarray*}
となるので、(1) は
  $\displaystyle
(x+1)^n = \sum_{k=0}^n{}_{n}C_{k}x^{n-k}
= {}_{n}C_{0}x^n + {}_{n}C_{1}x^{n-1} +
+ \cdots + {}_{n}C_{n}$ (3)
となり、これは (1) で $a=x$, $b=1$ とした式に等しい。

逆に、(3) で $x=a/b$ として、 両辺を $b^n$ 倍すれば (1) が再現されることになるので、 (1) と (3) とは実質的に同値になる。

これは、(2) でも事情は同じで、 $b^2$, $b^3$, $b^3$ でそれぞれの両辺を割って $a/b=x$ とすれば、 $a=x$, $b=1$ としたのと同じ式

  $\displaystyle
\left\{\begin{array}{ll}
x^2-1 &= (x-1)(x+1)\\
x^3-1 &= (x-1)(x^2+x+1)\\
x^3+1 &= (x+1)(x^2-x+1)
\end{array}\right.$ (4)
が得られるが、ここで $x=a/b$ として両辺を それぞれ $b^2$, $b^3$, $b^3$ 倍すれば元の (2) が 再現できるので (2) と (4) は 同値となる。

よって以後は、(1), (2) の代わりに (3), (4) の方で考える。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-05-12