この の満たすべき性質、および (1) の 積分の意味については、いくつかの考え方がある。 工学の本では、区分的に連続な関数を対象とすることが多いようである。
が 上 区分的に連続 であるとは、 が高々可算個の点
を除いて連続で、
を満たすこと。
上区分的に連続な関数全体の集合を と書くことにする。1. の集積点を持たない、というのは有限な極限を持つ部分列を持たない、 という意味であるが、本によっては、有限区間との共通部分は 常に有限列になる、と書いていて、それでも同じ意味になる。
の関数に対しては、(1) の積分は 通常「広義リーマン積分」の範疇で考えるわけであるが、 そう考えるなら、実は の条件をさらに緩くすることもできる。 または最初から「ルベーグ積分」と考え、 その方向で広い関数の範囲で考察することもできる。
これらの関係を簡単に説明する。
有限区間 上の有界な関数 が リーマン可積分 であるとは、 上でリーマン和の細分によらない極限として定義される リーマン積分 (通常の定積分) が存在することを言う。このリーマン可積分性は次と同値であることが知られている。
有限区間 上の有界な関数 がリーマン可積分であるための 必要十分条件は、 の不連続点のルベーグ測度が 0 になること。 言いかえれば、 がほとんどすべての点で連続となること、となる。なお、ここでいう「ほとんどすべての点」とは「ルベーグ測度が 0 となる 集合を除いて」ということを意味するルベーグ積分論特有の表現であり、 「ルベーグ測度が 0」の意味は本稿では詳しくは説明できないが、 「合計の長さが 0」のようなイメージで、可算無限集合もルベーグ測度は 0 であり、それより多くの点を持つ集合の可能性もある。
次は広義リーマン積分。
一方、有界ではない関数に対しても、 2., 3. の 広義リーマン積分を考えれば、ラプラス変換を考える関数の範囲を もっと広げることができる。 そのために、「区分的局所リーマン可積分」な関数という概念を導入する。
が 上 区分的局所リーマン可積分 であるとは、 有限個の点
があり、
であることと定める。 を の 除外集合 と呼ぶ。
上区分的局所リーマン可積分関数全体の集合を と書く。この「区分的局所リーマン可積分」という用語は、 広く使われているものでなく、本稿だけの造語であることに 注意 (同じことを指す適当な用語がない)。
この定義では、各 での片側極限の存在は仮定しないし、 での連続性も仮定していない。よって、 の元は、 各不連続点でなんらかの値を定めておけば、 で の元となる。
なお、この定義 4 では広義リーマン積分の存在は仮定して いないが、その広義リーマン積分の存在を追加したものを 「区分的広義リーマン可積分」と呼ぶことにする。
例えば、
一方、 を考えると、これもいずれも には 含まれ、そして に対しては なら、 に対しては すべての が なら は いずれも に含まれる。 すなわち、 のラプラス変換 (1) が 存在することになる。
通常、区間の内点 (有限な ) で無限大になる関数に対する積分は、 広義リーマン積分よりもルベーグ積分で扱うことが多い。 次はその「ルベーグ積分」に関する定義から。
上の関数 が ルベーグ可積分 であるとは、 がルベーグ可測関数であり、かつ
となること。このとき、有限値のルベーグ積分
が存在する。 また、 上のルベーグ可測関数全体の集合を 、 ルベーグ可積分関数全体の集合を とする。「ルベーグ可測関数」の定義を本稿で説明するのは無理だが、 ほぼすべての関数がルベーグ可測関数であると考えてよい1。
ルベーグ可測関数については、(6) の左辺の ルベーグ積分を常に考えることができ (値は無限大の場合もある)、 それが有限値であることが、有限値のルベーグ積分 (7) が 存在するための条件となる。
ルベーグ積分とリーマン積分、広義リーマン積分の間の関係は、
同様に、
は、広義リーマン積分としては、つまり、 であるが、 となる。
竹野茂治@新潟工科大学