1 はじめに

工学部の教科書では、ラプラス逆変換の存在、すなわちラプラス変換の 単射性については証明を省いていることが多い。 私も授業では単射であることは紹介するが証明はしなかった。 しかし、全く理由を説明しないと不安に思う学生もいるかもしれないし、 簡単な場合に限定してもよいから、なんらかの説明を紹介できれば、 と思った。

ラプラス変換の単射に関して調べてみると、 ネットで 1 件 ([2])、大学図書館で 1 冊 ([3])、 証明を載せているものを見つけられたが、他の本は証明は省略しているか、 フーリエ変換の知識と複素関数論の知識を利用してラプラス逆変換を ブロムウィッチ積分で表すというやり方をしている (例えば [4])。 しかしこの後者はかなり準備が必要で厄介である。 本稿では、単射性を [2], [3] の方向で 示したものを、少し解説や補足を混じえながら紹介する。

また、工学の本ではそもそもラプラス変換を、 区分的連続な関数で「指数型」と呼ばれるものを対象として 話を進めることが多いが、 積分の意味を再考して対象となる関数を広げることについても考察する。

そして、これも工学の本ではあまり証明していないが、 ラプラス変換の「収束点」についても紹介したいと思う。 なお、[2], [3], [4] には、 この収束点についてもちゃんと証明が書かれている ([4] では 「収束座標」と書かれている)。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-08-07