4.2 相互作用がない場合

まず、相互作用がない場合、すなわち $D(\gamma,\delta)=0$ である場合を考えるが、 その前に $\varepsilon $$\gamma $, $\delta $ の式として表しておく。

今、

\begin{displaymath}
\varepsilon =\alpha(U_L,U_R),\hspace{1zw}
\gamma=\alpha(U_L,U_M),\hspace{1zw}
\delta=\alpha(U_M,U_R)
\end{displaymath}

なので、
\begin{displaymath}
U_M=T(\gamma;U_L),\hspace{1zw}U_R=T(\delta;U_M)
\end{displaymath}

となり、よって
\begin{displaymath}
\varepsilon =\alpha(U_L,T(\delta;T(\gamma;U_L)))=\beta(\gamma,\delta;U_L)
\end{displaymath}

と書ける。 しかも、 $U_L,U_M,U_R\in B_{\hat{\delta}_{3}}(\bar{U})$ であるから、 その途中の解はすべて $B_{\hat{\delta}_{1}}(\bar{U})$ に入っている。


補題 4.2

$\gamma_j$, $\delta_j$ がどちらも衝撃波でない場合は

\begin{displaymath}
\hat{U}_j(\delta_j;\hat{U}_j(\gamma_j;U_0))
=\hat{U}_j(\delta_j+\gamma_j;U_0)
\end{displaymath} (4.33)

となる。


証明

$V(\xi)=\hat{U}_j(\xi;U_0)$ とすると、これが衝撃波ではない、 つまり膨張波か接触不連続の場合は

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{l}
\displaystyle \frac{d V(\xi)}{d \xi}=r_j(V(\xi)), [.5zh]
V(0)=U_0
\end{array}\right. \end{displaymath} (4.34)

を満たす。今、
\begin{displaymath}
\hat{V}(\xi)=\hat{U}_j(\xi+\gamma_j;U_0)
\hspace{1zw}(\mbox{$\xi$ は $0$ と $\delta_j$ の間})
\end{displaymath} (4.35)

とすると、
\begin{eqnarray*}\hat{V}'(\xi)
&=&
\hat{U}_j'(\xi+\gamma_j;U_0)
=
r_j(\hat...
...j(\hat{V}(\xi)),
\\
\hat{V}(0)
&=&
\hat{U}_j(\gamma_j;U_0)
\end{eqnarray*}


を満たすので、微分方程式 (4.5) の解の一意性により、
\begin{displaymath}
\hat{V}(\xi)=\hat{U}_j(\xi;\hat{U}_j(\gamma_j;U_0))
\end{displaymath} (4.36)

となる。 よって、(4.6), (4.7) より (4.4) が得られる。



補題 4.3

$\gamma $, $\delta $ に近づく波が含まれない場合、 すなわち 0 でない $\gamma_i$$\delta_j$ は、 すべて $i<j$ か、または $i=j$ でかついずれも衝撃波ではない場合は

\begin{displaymath}
\varepsilon = \gamma+\delta
\end{displaymath}

となる。


証明

この場合、$\gamma $, $\delta $

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{l}
\gamma= {}^T\!(\gamma_1,\ldots,\g...
...s,0,\delta_k,\delta_{k+1},\ldots,\delta_N)
\end{array}\right. \end{displaymath}

の形であり、$U_L$ から $U_M$, $U_M$ から $U_R$ の途中の状態を
\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{l}
U_1=\hat{U}_1(\gamma_1;U_L),
\ld...
...dots,
U_N=\hat{U}_N(\delta_N;U_{N-1})=U_R
\end{array}\right. \end{displaymath}

とすると、 例えば $\delta_k=0$ の場合は、 $\tilde{U}_k=U_M$ であり 左から $(k+1)$ 番目の状態を $U_k=U_M$ として $U_L$ から $U_R$ までそのまま
\begin{displaymath}
\varepsilon = {}^T\!(\gamma_1,\ldots,\gamma_{k-1},\gamma_k,
\delta_{k+1},\ldots,\delta_N)
\end{displaymath}

という波でつながる。$\gamma_k=0$ の場合も $U_k=U_M$ で、左から $(k+1)$ 番目の状態が $\tilde{U}_k$
\begin{displaymath}
\varepsilon = {}^T\!(\gamma_1,\ldots,\gamma_{k-1},
\delta_k,\delta_{k+1},\ldots,\delta_N)
\end{displaymath}

という波で $U_L$ から $U_R$ までつながる。

$\gamma_k$$\delta_k$ が 0 でない場合も、 仮定によりその両方が衝撃波ではないので、 補題 4.2 により、

\begin{displaymath}
\tilde{U}_k
=\hat{U}_k(\delta_k;U_M)
=\hat{U}_k(\delta_k;...
...}_k(\gamma_k;U_{k-1}))
=\hat{U}_k(\gamma_k+\delta_k;U_{k-1})
\end{displaymath}

となり、よって $U_{k-1}$$\tilde{U}_k$$k$ 番目の波で $\gamma _k+\delta _k$ としてつなげることができ、
\begin{displaymath}
\varepsilon = {}^T\!(\gamma_1,\ldots,\gamma_{k-1},
\gamma_k+\delta_k,\delta_{k+1},\ldots,\delta_N)
\end{displaymath}

となる。
図 4.3: $\gamma _k+\delta _k$
\includegraphics[height=0.2\textheight]{inter_3.eps}

よって、いずれの場合も $\varepsilon =\gamma+\delta$ が成り立つ。


この補題 4.3 は、 近づかない波には相互作用が起こらず、そのまま平行移動して並べれば それでつながるということを意味している。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月18日