3.2 $V$ の評価: accurate method の場合

まずは (7.55') から考える。 $V(\tau+)$$V(\tau-)$ とは、 この $\sigma_k$, $\sigma'_i$, $\sigma'_j$ 以外の front は共通なので、
  $\displaystyle
V(\tau +)-V(\tau -)
=\sum_k \vert\sigma_k\vert - \vert\sigma'_i\vert - \vert\sigma''_j\vert$ (1)
となることがわかる。 この評価を、$\sigma'_i$, $\sigma''_j$ の状況で場合分けして考える。 まずは、[A-1]、すなわち $\sigma'_i$, $\sigma''_j$ が物理 front (膨張 front, 衝撃 front, 接触不連続 front) で、 $i>j$ で、$\sigma_k$ がその Riemann 問題の解から accurate method (p129-130) で作られた場合を考える。 この場合、当然

$\displaystyle \sum_k \vert\sigma_k\vert = \sum_{k=1}^n \vert\bar{\sigma}_k\vert
$

であり、要請 (P) により $\bar{\sigma}_i$ $\bar{\sigma}_j$$\sigma_k$ でも分解されていない。 Lemma 7.2 (i) より (1) の右辺は、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\sum_k \vert\sigma_k\vert - \vert\sigma'_i\vert - \ver...
...t\bar{\sigma}_k\vert}
\ &\leq &
C\vert\sigma'_i\sigma''_j\vert\end{eqnarray*}

となって (7.55) が成り立つことがわかる。

次に、[A-2]、すなわち accurate method で $i=j$ の場合は、 Lemma 7.2 (ii) より

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\sum_k \vert\sigma_k\vert - \vert\sigma'_i\vert - \ver...
...t\bar{\sigma}_k\vert}
\ &\leq &
C\vert\sigma'_j\sigma''_j\vert\end{eqnarray*}

となり、やはり (7.55') が成り立つことがわかる。 なお、front の大きさ $\sigma$ は十分小さい状況を考えているので、 Lemma 7.2 (ii) の $\vert\sigma\vert+\vert\sigma'\vert$ の部分は $O(1)$ と 見ることができる。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-06-03