3.1 はじめに
本節では、[1] の 7.3 節 3. にある、front 同士の衝突点 における , の差分評価である (7.55), (7.56) (p137)、
および帰納法による (7.60) (p138) の評価について考える。
[1] では、(7.55) は (7.33), (7.34) から得られる、
とだけ書いており、また (7.56) は (7.31)(7.34) から
得られると書いて、その下に 10 行程の説明があるが、
特にこの (7.56) の方は簡単ではないと感じたので、
本節でその詳細な証明を与えておく。
なお、特に の場合の (7.56) の説明用に、
p137 に と の front が で
衝突して () の front が発生するような図が
書いてあり本節でもそのような状況を考えるが、少し記号を変える。
左からの -特性族の front の方はそのままとするが、
右からの -特性族の front は と書くことにして、
の場合も同じ記号のまま議論できるようにする。
生成する front は () とするが、
この添字の は「-特性族」を意味はせず
単純に左から順番に番号を振ったもので、
accurate method の場合の膨張波を分解する前の Riemann 問題の解の波は
(
) と書くことにする。
この場合、 は、この
の
うち、膨張波を分解 front に分離して作成した front の集まり (の速度を微小に変更したかもしれないもの) となる。
この場合、Lemma 7.2 (i),(ii) の評価は、 ではなく、
に対して成り立つものであることに注意する。
以下、, の評価を、順に衝突点での近似解の作り方に関する場合分けで
示すことにするが、そのそれぞれに以下のように名前をつけておくことにする。
- [A-1]: accurate method で の場合
(異なる特性族の流入 front の衝突)
- [A-2]: accurate method で の場合
(同じ特性族の流入 front の衝突)
- [S-1]: simplified method で物理 front の衝突で の場合
- [S-2]: simplified method で物理 front の衝突で の場合
- [S-3]: simplified method で非物理 front の衝突の場合
()
なお、等式形の (7.55), (7.56) を示すことは難しく (成り立たないかもしれない)、
かつそれは必要はなく、実際に必要で示すべきは不等式形の
であることに注意する。
ここで、 は、ある定数 に対し
,
すなわち を意味し、つまり も必要であるが、
は のみを意味するので、
(7.55), (7.56) を示すためには、正確には下からの評価も必要であるが、
実際には下からの評価は必要ないし、簡単に示すこともできない。
実際、[1] のこの部分に関する原論文である [2] にも 等式形の (7.55), (7.56) ではなく、不等式形の (7.55'), (7.56') の形で
書いてある。
本稿も、(7.55), (7.56) ではなく、(7.55'), (7.56') を示すことを考える。
竹野茂治@新潟工科大学
2020-06-03