6.2 解消すべき問題点とおおまかな方法

まず、[1] では、front の速度の変更を次の条件を満たすために 行っているようである。
図 1: (a) !(T1), (b) !(T2)
\includegraphics[height=0.2\textheight]{fig_bressan_t1t2}
なお、以下では、(T1) の否定を !(T1) のように書くことにする。

このうち、Remark 7.1 (p133) では !(T1) の解消のみを 説明しているようであり、 (T2) については Remark 7.2 (p142) の (FT1) で追加の要請として 書いているようにも読める。 しかし、(7.56) (正しくは (7.56')) は、 そもそも (T1) かつ (T2) でないと成立しないので、 (T2) は明示されてはいないが、(T1) と同時に暗黙に仮定している のかもしれない。

front 速度の変更については、$\varepsilon$-近似の 定義 7.1 (p125) により、 衝撃 front と接触不連続 front については、 wave 速度と front 速度とは $\varepsilon$ 以下のずれは許されていて、 膨張 front については、右の定数状態の特性速度とは $\varepsilon$ 以下の ずれが許されるが、非物理 front の速度は $\hat{\lambda}$ に固定されていて 変更することは許されていない。 つまり、以下が要請される。

そして、(7.56') の評価を可能にするためには、以下も必要になる。

この (T4) を達成するためには、 簡単に考えれば、 か、または変更はしても (T4) を満たすように変更すればよい。 しかし、(T5) と (T1), (T2) は両立しない。

例えば、3-膨張 front と 2-膨張 front と 1-膨張 front が 1 点で 衝突する場合 (図 2 (a)) は、 (T1) を達成するためには (T5) を破っていずれかの 膨張 front の速度を変更しなければいけないし、 これをすべて接触不連続で置き換えることもできるから、 接触不連続 front の速度も変更しないといけない場合があることになる。

図 2: (a) (T5) が達成できない例
\includegraphics[height=0.2\textheight]{fig_bressan_t5}
同様に、非物理 front と 1-膨張 front の衝突が、 同じ時刻に 2 箇所で起きてしまえば (図 2 (b)) は、 非物理 front の速度は変更できないので、 (T2) を達成するためには膨張 front の速度を変更せざるを得ない。

つまり、少なくとも局所的には、(T5) を守りつつ (T1), (T2) を 達成することはできない。

となると、(T1), (T2) のためには、膨張 front と接触不連続 front の速度の 変更は許しつつ、(T4) を実現させないといけないことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-06-03