84.3.7 特別なファイル名 (special-filenames)

特別な意味を持つファイル名として、次のものがあります: '', '-', '+', '++'

空のファイル名 '' は、同じ plot コマンド上で、直前の入力ファイルを再び 使用することを gnuplot に指示します。よって、同じ入力ファイルの 2 つの データ列を描画するには以下のようにします:


     plot 'filename' using 1:2, '' using 1:3

この filename は、この後の plot コマンドでも '' で再利用できますが、 その場合に save すると、コメントとしてその名前を記録するのみです。

'+' と '++' という特別なファイル名は、using 指定の全体と描画スタイル にインライン関数を使えるようにするための仕組みです。通常、関数描画はサ ンプル点毎に単一の y (または z) の値しか持てません。しかし疑似ファイル '+' はそれがあたかも実際の入力ファイルであるように、using 指定による 1 列目の値を標本点として扱い、さらに追加の列の値を指定することも可能で す。標本点は、デフォルトでは set xrange で設定した範囲全体に渡り、 set samples で制御する標本化に従って取られます。


     plot '+' using ($1):(sin($1)):(sin($1)**2) with filledcurves

'+' の直前に、独立な標本範囲を指定することもできます。通常の関数描画の と同様、独立変数に名前を割り当てることもできます。plot の最初の要素に 与える場合、標本範囲にはそれを明示するキーワード sample を前置する必 要があります (以下も参照: plot sampling (84.9))。


     plot sample [beta=0:2*pi] '+' using (sin(beta)):(cos(beta)) with lines

さらに、+ の範囲指定には、標本増分を与えることもできます。


     plot $MYDATA, [t=-3:25:1] '+' using (t):(f(t))

疑似ファイル '++' は、u 方向は set samples で制御される点の数、v 方 向は set isosamples で制御される点の数の、標準的な [u,v] 座標の格子 を生成する 2 列のデータを返します。よって、'++' の描画の前に、urange と vrange を設定する必要がありますが、x と y の範囲は自動的に設定され るか、または明示的に urange, vrange とは違う値に設定できます。'++' の サンプリングでの u, v の使用は、version 5.0 からの変更です。 例:


     splot '++' using 1:2:(sin($1)*sin($2)) with pm3d
     plot '++' using 1:2:(sin($1)*sin($2)) with image

'-' という特別なファイル名は、データがインラインであることを指示し ます。すなわち、データをコマンドの後に続けて指定します。このときはデ ータのみがコマンドに続き得ます。よって、plot コマンドに対するフィル ター、タイトル、ラインスタイルといったオプションは、plot のコマンド ラインの方に書かないといけません。これは、unix シェルスクリプトにおけ る < < (ヒアドキュメント)、あるいは VMS DCL における $DECK と同様です。 そのデータは、それらがファイルから読み込まれたかのように、1 行につき 1 つずつのデータ点が入力されます。そしてデータの終りは、1 列目の始めに 文字 "e" を置くことで指示します。

'-' は、データとコマンドを一緒に持つことが有用である場合のためにあり ます。例えば、別々のアプリケーションから gnuplot にその両方がパイプ 入力される場合です。例えば、デモファイルの中にはこの機能を使うものがあ るでしょう。indexevery のような plot のオプションが与えられ ていると、それらは使われることのないデータの入力を要求してきます。ごく 単純な場合を除くすべての場合で、'-' からデータを読み込むよりも、最初 にデータブロックを定義してそれを読み込む方が多分簡単です。以下参照:datablocks (19)

もし、replot コマンドで '-' を使うなら、あなたは 1 度以上データを入力する必要があるでしょう。以下参照: replot (91), refresh (90)。繰り返しま すが、データブロックを使う方がいいです。

空のファイル名 ('') は、直前のファイル名が再び使われることを指示しま す。これは、


     plot 'ある/とても/長い/ファイル名' using 1:2, '' using 1:3, '' using 1:4

のようなときに便利です。(もし同じ plot コマンド上で、'-''' の 両方を使用すると、上の例にあるように、インラインデータの 2 つの集合を 与える必要があります。)

popen 関数を持っているシステム上では、データファイルは、'< ' で始まるフ ァイル名によって、シェルコマンドからパイプ入力することができます。例え ば


     pop(x) = 103*exp(-x/10)
     plot "< awk '{print $1-1965, $2}' population.dat", pop(x)

は、最初の人口の例と同じ情報を描画します。ただし、x 座標は 1965 年か らの経過年を表すようになります。この例を実行するときは、上のデータフ ァイルのコメント行をすべて削除しなければなりませんが、または上のコマ ンドの最初の部分を次のように変えることもできます (コンマに続く部分):


     plot "< awk '$0 !~ /^#/ {print $1-1965, $2}' population.dat"

このアプローチは最も柔軟性がありますが、using キーワードを用いた単純 なフィルタリングで行うことも可能です。

fdopen() 関数を持つシステムでは、データを、ファイルかパイプに結びつけ られた任意のファイルデスクリプタから読み込むことができます。n 番のフ ァイルデスクリプタから読み込むには、'< &n' としてください。これにより、 1 回の POSIX shell からの呼び出しの中で、複数のデータファイルからのパ イプ入力が容易に行えるようになります:


     $ gnuplot -p -e "plot '<&3', '<&4'" 3<data-3 4<data-4
     $ ./gnuplot 5< <(myprogram -with -options)
     gnuplot> plot '<&5'

竹野茂治@新潟工科大学
2017年10月31日